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第二部 名も無き島の大迷宮
第71話 姫と小さな勇者の平穏な日常
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お風呂でレオとはしゃぎすぎて、寝不足気味で疲れていたところにピーちゃんの衝撃の告白だった。
今日一日はどうなってしまうのだろうと不安になったくらい……。
ただ、レオの作ってくれたランチのパスタが美味しかったから、そんなものはどこかに飛んでいってしまいましたけど!
これも怪我の功名だったりするのよね。
うっかり、発動させた氷魔法のせいで精霊力がやや狂ってしまった。
それで島の一部の気候に変化が起きたから、本来は作れなかった農作物も収穫できるようになったのだ。
お陰で地産地消の名物パスタが誕生したのだから、悪いことばかりではないけども。
「具が野菜だけのパスタは微妙なのかと思っていたのだけど、違うわね」
「ソースはミートソースだからね」
悔しいけど、料理でレオに勝てる気がしない。
一度、手伝ってもらいながら、同じ手順でパスタを作ったのに出来上がりが違ったのだ。
薄味だったり、甘かったりと味が安定しないし、見た目が個性的だったのでお世辞にも人に勧められる物ではなかった。
君はそれでも嫌な顔一つせずに全部、食べてくれる。
そればかりか、「美味しいよ」と笑顔で言ってくれるのだ。
端からわたしに勝ち目なんて、ない。
何を作っても君は美味しいって、言ってくれるんですもの。
どうせなら、もっとちゃんとした物を作って、美味しいって言ってもらいたいのに……。
でも、そんな平穏で幸せな時を過ごせたのはそこまで。
お舅様達が迷宮の探索から、帰ってきたのだ。
「ねぇ、レオ君はどう思うの?」
寝る時だけではなく、お風呂も一緒に入るのが習慣になった。
考えてみるとわたしが先に入って、彼が出るのを待っているよりも合理的だし、時間も有意義に使える。
髪を梳かして、手入れをしてもらうのはお風呂から出て、すぐの方がいい。
「え? 面白そうだよね」
お風呂上りはレオにタオルドライしてもらってから、彼の風の魔法で乾かしてもらうこの時間がわたしの至福の時でもある。
レオは雷と炎の魔法は上手なのに水や風はかなり、酷いのだ。
攻撃魔法の初級レベルですら、水滴とそよ風くらいしか出せないのだから、実用には程遠いと思う。
でも、それは戦いにおいての話であって、彼のそよ風は髪を乾かすのに最適なのだ。
わたしの髪は長い。
今は腰の辺りで揃えているけど、切る前は地面に届くくらい長かったのだ。
当然、自分一人で手入れをするとなると大変。
ヘルヘイムではメニヤがいたし、侍女がしてくれたので問題なかったけど……。
一人でやろうとしたら、もつれてこんがらがってしまい、切らざるを得なかった。
見かねたレオが「僕がやろうか?」と申し出てくれたのだ。
ただ、完全に身を任せないといけないので恥ずかしかったりもする。
レオも同じなのか、どうしても口数が少なくなってしまうのは困る。
困るのだけど、本当に丁寧に髪を梳いてくれるから、身を全て、任せるのが心地良いのだ。
「君らしい答えで安心したわ。でも、五十階から下に行けないわよ?」
「うん。それも大丈夫じゃないかな。ピーちゃんのお陰で通れるようになったと思うんだ」
「そうなの?」
「多分ね」
そのピーちゃんはふわふわの小さな布団のような生地の上でまだ、お寝んね中なのよね。
黄金鳥にしてもきれいすぎるし、頭もいいし、不思議な子だとは思っていたけど、まさか正体が聖獣だなんて……。
今は魔力枯渇状態と見て、間違いないと思う。
黄金鳥のような小鳥の姿は仮の姿であって、真の姿がアレだとしたら、変態に全ての魔力を使ってしまったのだろう。
「出来たよ」
「ありがとう、レオ君」
さすがに慣れてきちゃった?
最初のうちはビックリしていたのに今では普通に受け入れてくれるのだから。
ある意味、慣れとは怖いともいえるかしら?
髪を乾かし終わったら、お礼と同時にレオに抱き着いて、そのまま寝る。
これがわたしとレオの日課になっている。
迷宮に潜ったら、この一時が失われる。
そう考えると憂鬱になってくるけど、レオの温もりを感じているとそんな気持ちが和らぐのだ。
ずっとこうしていたいくらい。
「いいでしょ?」
「何の話?」
「内緒」
それでも何となく、察してくれるのよね。
君はそっと優しく、抱き締めてくれるんですもの。
抱き合ったまま、寝るのはいけない気がするのだけど、抗えないわ。
今日一日はどうなってしまうのだろうと不安になったくらい……。
ただ、レオの作ってくれたランチのパスタが美味しかったから、そんなものはどこかに飛んでいってしまいましたけど!
これも怪我の功名だったりするのよね。
うっかり、発動させた氷魔法のせいで精霊力がやや狂ってしまった。
それで島の一部の気候に変化が起きたから、本来は作れなかった農作物も収穫できるようになったのだ。
お陰で地産地消の名物パスタが誕生したのだから、悪いことばかりではないけども。
「具が野菜だけのパスタは微妙なのかと思っていたのだけど、違うわね」
「ソースはミートソースだからね」
悔しいけど、料理でレオに勝てる気がしない。
一度、手伝ってもらいながら、同じ手順でパスタを作ったのに出来上がりが違ったのだ。
薄味だったり、甘かったりと味が安定しないし、見た目が個性的だったのでお世辞にも人に勧められる物ではなかった。
君はそれでも嫌な顔一つせずに全部、食べてくれる。
そればかりか、「美味しいよ」と笑顔で言ってくれるのだ。
端からわたしに勝ち目なんて、ない。
何を作っても君は美味しいって、言ってくれるんですもの。
どうせなら、もっとちゃんとした物を作って、美味しいって言ってもらいたいのに……。
でも、そんな平穏で幸せな時を過ごせたのはそこまで。
お舅様達が迷宮の探索から、帰ってきたのだ。
「ねぇ、レオ君はどう思うの?」
寝る時だけではなく、お風呂も一緒に入るのが習慣になった。
考えてみるとわたしが先に入って、彼が出るのを待っているよりも合理的だし、時間も有意義に使える。
髪を梳かして、手入れをしてもらうのはお風呂から出て、すぐの方がいい。
「え? 面白そうだよね」
お風呂上りはレオにタオルドライしてもらってから、彼の風の魔法で乾かしてもらうこの時間がわたしの至福の時でもある。
レオは雷と炎の魔法は上手なのに水や風はかなり、酷いのだ。
攻撃魔法の初級レベルですら、水滴とそよ風くらいしか出せないのだから、実用には程遠いと思う。
でも、それは戦いにおいての話であって、彼のそよ風は髪を乾かすのに最適なのだ。
わたしの髪は長い。
今は腰の辺りで揃えているけど、切る前は地面に届くくらい長かったのだ。
当然、自分一人で手入れをするとなると大変。
ヘルヘイムではメニヤがいたし、侍女がしてくれたので問題なかったけど……。
一人でやろうとしたら、もつれてこんがらがってしまい、切らざるを得なかった。
見かねたレオが「僕がやろうか?」と申し出てくれたのだ。
ただ、完全に身を任せないといけないので恥ずかしかったりもする。
レオも同じなのか、どうしても口数が少なくなってしまうのは困る。
困るのだけど、本当に丁寧に髪を梳いてくれるから、身を全て、任せるのが心地良いのだ。
「君らしい答えで安心したわ。でも、五十階から下に行けないわよ?」
「うん。それも大丈夫じゃないかな。ピーちゃんのお陰で通れるようになったと思うんだ」
「そうなの?」
「多分ね」
そのピーちゃんはふわふわの小さな布団のような生地の上でまだ、お寝んね中なのよね。
黄金鳥にしてもきれいすぎるし、頭もいいし、不思議な子だとは思っていたけど、まさか正体が聖獣だなんて……。
今は魔力枯渇状態と見て、間違いないと思う。
黄金鳥のような小鳥の姿は仮の姿であって、真の姿がアレだとしたら、変態に全ての魔力を使ってしまったのだろう。
「出来たよ」
「ありがとう、レオ君」
さすがに慣れてきちゃった?
最初のうちはビックリしていたのに今では普通に受け入れてくれるのだから。
ある意味、慣れとは怖いともいえるかしら?
髪を乾かし終わったら、お礼と同時にレオに抱き着いて、そのまま寝る。
これがわたしとレオの日課になっている。
迷宮に潜ったら、この一時が失われる。
そう考えると憂鬱になってくるけど、レオの温もりを感じているとそんな気持ちが和らぐのだ。
ずっとこうしていたいくらい。
「いいでしょ?」
「何の話?」
「内緒」
それでも何となく、察してくれるのよね。
君はそっと優しく、抱き締めてくれるんですもの。
抱き合ったまま、寝るのはいけない気がするのだけど、抗えないわ。
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