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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様

第61話 イソローは砂糖の代わりに嘘を吐いた

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ネズ・イソロー視点

 それにしてもきつい性格した姫さんだ。
 レオのヤツはよくあの姫さんと一緒にいて、平気だな?
 それとも何だ。
 あのきつい性格が好きな男の前だとデレデレなのか?

 いや、デレデレだよな……。
 隠そうともせずに人前でもいちゃついているしな。

「それでさ。ロー。僕の話を聞いてるかい?」
「あ、おお。聞いてるさあ」

 要は惚気のろけ話だろう?
 昼食の時の姫さんの発言にレオがあいまいなことを言ったから、どうやら御機嫌斜めになったらしい。
 乙女心は複雑って、ところなんだろう。

「それでさ。僕はどうすればいいのか、分かんないんだ」
「それで俺っちに聞きにきたのか?」
「うん。リーナに聞いたら、少しは考えなさいって言われたんだ」

 お前、純粋過ぎるだろう。
 直球で聞いたんだろうな……。
 本人に直接、聞いて怒られなかっただけ、ましだろうよ。

 姫さんは怒ったというより、やや呆れて言ったんだな。
 愛されているな、コイツめ。

「何をしたら、リーナは喜んでくれるかな?」
「そりゃ、お前。簡単だよ」
「ローには分かるの? さすが、ローだね」
「あたぼうよ」

 いや、乙女心とか分からんが……。
 俺は嫁さんどころか、恋人すらいないんだぜ?
 だが、俺には分かる。
 そう、この本を持っている俺には!

「パ・シェル・ブーク百貨店で俺っちが買ったのは装備だけじゃあ、ないんだぜえ。これを見な」
「何だい、これ?」

 ろくな娯楽もあったもんじゃない島での退屈な夜の生活に彩りを与えるスーパーアイテム。
 しかし、レオのヤツは全く、動揺もしねえ。

「これで男女の営みってもんがバッチリな訳よお」
「ええ? 本当?」

 レオのヤツにあからさまに疑惑の目を向けられたんだが、どういうことだってばよ。
 きれいなお姉さんのあんな姿やこんな姿であんなのなんだぞ?

「僕とリーナはたまにこんな格好で寝てるよ」
「ぬぁにー。姫さんもかー?」
「うん。リーナもたまに何も着てないよ」
「ヤっちまったなあ」
「何を?」

 コイツら、俺の知らないところであんなことやこんなことまでしていたのかよ。
 あの姫さんが……想像するだけでも怒られそうだから、やめとくか。
 冗談で言ったら、レオにも凄い目で睨まれたのを忘れてたわ。

 いや、でも待てよ。
 レオのヤツも姫さんも純粋培養された何も知らないお子様だったはずだ。
 未だに赤ちゃんが何で出来るのかも知らないし、本当に黄金鳥が連れてきてくれると信じている純粋さだ。

「ああ。レオ。お前はまだ、子供だから平気さあ」
「リーナもそれを言うんだ。自分は大人だから、ってさ。僕はそんなに子供じゃないよ」
「いやいや。お前さ。アレ、出ないだろ?」
「アレって?」
「だから、来てないんだろ? 出ないんだろ?」
「だから、何がだよ?」

 首を捻っても分からないから、誰も教えてないんだな……。
 姫さんは大人と言っているから、一応それは教えられているのに性教育はされていないのか。
 ああいう立場だと閨の教えとか、あるって聞いたんだが余程、純粋で培養されたんだろうな。
 仕方ねえ、俺が一肌脱ぐとするか。

 レオに男が大人になるのがどういうことかを説明するのはえらく、骨が折れた。
 セベクさんも男やもめだから、教えなかったんだろう。
 ただ、どうやったら、子供が出来るのかまで説明したが分かっているようには見えない。

 知識もないし、全くの無自覚であいつ、まだ大人になっていないのに未遂までヤっているんだからな。
 姫さんと裸で抱き合って、あたっていた時点で有罪だ! 有罪!

 そこで俺の中の悪戯心に火が付いた。
 決して、悔しかったからではないぞ。

「それでな、レオ。これを見てみろ」
「これ、やったら、リーナに怒られたよ?」
「何だと!? 勿論、服の上からだよな?」
「直にやったよ」

 くっそー、コイツめ。
 既に生のおっぱいを揉んでやがった。
 あの姫さんの柔らかそうなのを生でか、悔しくないぞ。
 悔しくなんかない!

「そりゃ、照れ隠しだぞお。嫌よ嫌よも好きのうちなんだよお」
「そうなんだ? 分かった」
「ああ、そうだあ。それでな、これだ。これ。これをしたら、喜ぶぞお」
「へえ。分かった。舐めれば、いいんだね。ありがとう、ロー!」
「え? おい、待てよ、レオ! はええ。もういない……」

 いや、まさか大丈夫だよな。
 いくら、アイツでもまさか、そんなことはしないだろう。
 俺は忘れていた。
 レオのヤツが馬鹿がつくほどに超純粋だってことを……。
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