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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様

第0話 お姫様と小さな勇者

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 ヘルヘイム。
 全ての失われた生命が向かうところであり、亡者の国とも呼ばれる極北の地。

 彼の地を治める女王ヘルは生き血を啜る妖女であり、血も涙もない氷のような魔女であると民衆の間では信じられていた。
 悪い子を叱るのにヘルヘイムのヘルのところに送ると言う言葉が生まれたほどである。

 古い伝承によれば、かつてヘルヘイムはニブルヘイムと呼ばれていた。
 ニブルヘイムは亡者ではなく、生きた者が住む地だった。
 誇り高き巨人の一族。
 流された悪役令嬢と貶められたうら若き乙女。
 異なる世界から、落ちてきた異邦人エトランゼ

 何者でも受け入れる常世にして、常世の地。
 そんなニブルヘイムを治めるのが神々の王オーディンの孫である少女の姿をした女神であり、彼女の女王就任を祝ってヘルヘイムへと名を改めたのだという。

 女神が女王となるにあたって、現世から選ばれた一人の勇者の活躍があったと言われている。
 女王を危機から、救い出した勇敢な戦いの様子は『小さな勇者』として、伝説になった。

 しかし、実は人の世で語られている伝承は全てを語っていない。
 ヘルヘイムの女王の真実の姿はまるで違う。
 『小さな勇者』の物語には続きがあったのだ。

 これは『小さな勇者』と恋に落ちた『お姫様』(と本人が言っているだけ)が、愛しい勇者を旦那様にしようと悪戦苦闘する物語である。
 南の島で夢のスローライフ?
 できらぁ! と言ったかどうかは定かではない。
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