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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様
第27話 小さな勇者と大きな鎧
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「レオは何を選びましたの?」
「これがいいかな」
わたしのコート・ドレスの手直しにはちょっと時間がかかりそうなのでその間にレオが身に着ける物を見繕わないといけないのですけど……。
「ほ、本当にこれ?」
「うん。カッコいいよね!」
「え、ええ。まぁ、そうでしょうけど……」
キラキラとしたきれいなお目目でレオが指差す先にあるのは白銀に輝く、美しい甲冑。
プレートアーマーよね?
騎士が制式装備として、身に着ける全身を覆う鎧だわ。
この甲冑は鉄板を薄くして、軽量化を実現したタイプで表面を筋加工して、凸凹にすることで強度も増しているのだったかしら?
ただ、軽いといっても長時間、戦い続けるのには向いていない重さだと思いますし……。
「どうしたの、リーナ?」
「え? 何でもないですわ」
甲冑とレオを見比べ、サイズ感の違いに頭が痛いわ。
「もしかして、高いからダメかな」
「ち、違いますわ。お金のことは心配しないで」
現品限りで価格は金貨五枚。
確かに高いのではないかしら?
こういう道具のお値段は良く知らないのですけど。
店頭のこのお品しかないのも不安要素ですし、こういった甲冑は本来、身体に合わせて、オーダーメイドで作るものですわ。
「本当にこれでいいのかしら?」
「うん」
大口を開けて、満面の笑顔で返事をするレオを見ていると逆に罪悪感が襲ってきますわ。
もしかしたら、無駄な買い物をしてしまったのではなくって?
それから、すぐにレオは甲冑を身に着けて、現れたのですけれど……。
「歩きにくいや」
「そ、そう」
動きがぎこちなさすぎて、見ているこちらが心配でハラハラしてきます。
レオは着ているのではなく、着られていると言った方がいいのかしら?
「分かった。使えそうもないところは外せば、いいんだ」
「はい?」
そういうや否やレオは甲冑の部品をあちこち、外し始めました。
それ、金属製だと思うのですけど?
力業で無理矢理、プレートアーマーを自分に合った形へと変えていくレオを見ていると固定観念に駆られてはいけないのだと改めて、思いますわ。
「こんな感じかな」
「スッキリとしましたのね?」
「うん」
ヘルムは鬱陶しかったのか、全て取り払われて、残った部分は胸当て、腕甲、足甲だけ。
肩当てや腰当ては自由に動かしにくいとのことで外されたみたい。
「気に入ったかしら?」
「うん。鎧を着たら、父さんみたいになれた感じがして、嬉しいんだ」
「そう。レオはお父様が大好きなのね?」
「リーナは嫌いなの?」
「え? う、う~ん。好きでも嫌いでもないかしら。会ったことすら、ないんですもの」
「……そうなんだ」
ちょっと湿っぽい話になったせいか、互いに掛ける言葉を見つけるのが難しくて、妙な沈黙……。
「おいおい。お二人さんよ。何、しけた顔してるのさ」
一切、空気を読まない明るい口調で話しかけてくるネズミ君の気遣いが妙に心に沁みますわ。
「姫さん。俺もこれ、貰っちゃっていいんですかね?」
「ええ。あなたは島の貴重な魔法使いなのでしょう? それだけの価値を見せていただければ、それで十分ですわ」
「へいへい。なるべくなら、楽したいんですけどねえ」
ネズミ君は魔法使いなこともあって、身体能力に自信がないでしょうから、合わせやすくて、効果が期待出来る腕甲を選んだみたい。
レオの甲冑もネズミ君の腕甲も適した魔石を填めれば、もっと良くなるはずですわ。
「わたしのドレスを受け取ったら、次は武器ね♪」
「「おー!」」
「これがいいかな」
わたしのコート・ドレスの手直しにはちょっと時間がかかりそうなのでその間にレオが身に着ける物を見繕わないといけないのですけど……。
「ほ、本当にこれ?」
「うん。カッコいいよね!」
「え、ええ。まぁ、そうでしょうけど……」
キラキラとしたきれいなお目目でレオが指差す先にあるのは白銀に輝く、美しい甲冑。
プレートアーマーよね?
騎士が制式装備として、身に着ける全身を覆う鎧だわ。
この甲冑は鉄板を薄くして、軽量化を実現したタイプで表面を筋加工して、凸凹にすることで強度も増しているのだったかしら?
ただ、軽いといっても長時間、戦い続けるのには向いていない重さだと思いますし……。
「どうしたの、リーナ?」
「え? 何でもないですわ」
甲冑とレオを見比べ、サイズ感の違いに頭が痛いわ。
「もしかして、高いからダメかな」
「ち、違いますわ。お金のことは心配しないで」
現品限りで価格は金貨五枚。
確かに高いのではないかしら?
こういう道具のお値段は良く知らないのですけど。
店頭のこのお品しかないのも不安要素ですし、こういった甲冑は本来、身体に合わせて、オーダーメイドで作るものですわ。
「本当にこれでいいのかしら?」
「うん」
大口を開けて、満面の笑顔で返事をするレオを見ていると逆に罪悪感が襲ってきますわ。
もしかしたら、無駄な買い物をしてしまったのではなくって?
それから、すぐにレオは甲冑を身に着けて、現れたのですけれど……。
「歩きにくいや」
「そ、そう」
動きがぎこちなさすぎて、見ているこちらが心配でハラハラしてきます。
レオは着ているのではなく、着られていると言った方がいいのかしら?
「分かった。使えそうもないところは外せば、いいんだ」
「はい?」
そういうや否やレオは甲冑の部品をあちこち、外し始めました。
それ、金属製だと思うのですけど?
力業で無理矢理、プレートアーマーを自分に合った形へと変えていくレオを見ていると固定観念に駆られてはいけないのだと改めて、思いますわ。
「こんな感じかな」
「スッキリとしましたのね?」
「うん」
ヘルムは鬱陶しかったのか、全て取り払われて、残った部分は胸当て、腕甲、足甲だけ。
肩当てや腰当ては自由に動かしにくいとのことで外されたみたい。
「気に入ったかしら?」
「うん。鎧を着たら、父さんみたいになれた感じがして、嬉しいんだ」
「そう。レオはお父様が大好きなのね?」
「リーナは嫌いなの?」
「え? う、う~ん。好きでも嫌いでもないかしら。会ったことすら、ないんですもの」
「……そうなんだ」
ちょっと湿っぽい話になったせいか、互いに掛ける言葉を見つけるのが難しくて、妙な沈黙……。
「おいおい。お二人さんよ。何、しけた顔してるのさ」
一切、空気を読まない明るい口調で話しかけてくるネズミ君の気遣いが妙に心に沁みますわ。
「姫さん。俺もこれ、貰っちゃっていいんですかね?」
「ええ。あなたは島の貴重な魔法使いなのでしょう? それだけの価値を見せていただければ、それで十分ですわ」
「へいへい。なるべくなら、楽したいんですけどねえ」
ネズミ君は魔法使いなこともあって、身体能力に自信がないでしょうから、合わせやすくて、効果が期待出来る腕甲を選んだみたい。
レオの甲冑もネズミ君の腕甲も適した魔石を填めれば、もっと良くなるはずですわ。
「わたしのドレスを受け取ったら、次は武器ね♪」
「「おー!」」
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