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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様
第1話 やって来ました南の島
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わたしと彼の出会いは運命でした。
仕組まれたように彼が選ばれたのは事実。
でも、最終的に選んだのはわたし。
わたしが選んだの。
わたしのことをわたしとして、捉えてくれるのはこの世界できっと、彼だけなの。
曇りの無い真っ直ぐな瞳がわたしに道を示してくれる……。
そう判断したわたしの勘は間違ってないはず。
だから、わたしは後悔なんてしない。
彼にとって、わたしは一番ではないかもしれません。
でも、わたしにとって、彼は一番なの。
彼の為なら、何も怖くないわ。
全てを失っても何を犠牲にしても怖くなんてないの。
例え、この世界を滅ぼしても……。
彼がいてくれたら、それだけでいいの。
そんなことを考えていると彼に知られたら、嫌われてしまうのかしら?
世界中の誰に嫌われても彼にだけは嫌われたくない。
だから、やって来ましたの、南の島!
『名も無き島』なんて、呼ばれているようですけど、とてもきれいな島ですわ。
燦々と降り注ぐ太陽。
打ち寄せる波と白い砂浜。
海は澄んで青々としていて、どこまでも広がっていて……。
南は素晴らしいですわ。
わたしの国も穏やかな気候になったとはいえ、こんなにもきれいな青空が望めることはまず、ありませんもの。
彼はここで育って、皆に愛されたから、あんなにも真っ直ぐになったのね。
「誰も近づいてきませんわね」
「わね~ね~」
「わふっ」
小さな黒い蜥蜴の姿になっているニーズヘッグ。
黒い仔犬の姿になっているガルム。
ニーズヘッグは『冥竜』。
ガルムは『地獄の番犬』。
魔物が恐れるのも仕方がないことなのかしら?
島の魔物は砂浜に降り立ったわたし達を遠巻きに眺めているだけです。
心なしか、震えているようにも見えますけど……。
「ね?」
フルフルと首を振る二人。
わたしから離れて、魔物の方に寄っていきましたが、彼らに怯えている様子は見られません。
あら? あらあら?
「えぇ? そんなまさか……」
わたしが一歩進むと遠巻きの魔物の群れが一歩下がりました。
わたしが一歩下がるとあちらが一歩進む。
これはわたしのせいということで確定ですわね。
おかしいですわ。
わたしのどこが怖いのかしら?
「お主、何者だ?」
深い緑色の鱗に覆われた大柄な体。
棘のような突起物が生え、鱗で守られた頑丈そうな尻尾。
そして、鰐のようなお顔。
左手には穂先が三又に分かれた独特の形状の槍を構え、あくまで警戒を解かない強気の姿勢を見せるこの御方は……
「あら? あなたが高名なセベク様かしら? 勇者レオニードのお父様でもあるのでしょう?」
「どうして、そのことを知っている? お主は一体……」
「ごきげんよう。初めまして、お舅様。わたしはリリアナ。レオ君の妻ですわ」
「つ、つま!?」
泡を食っているお舅様が我に返るのを待ち、誤解の無いように簡単な説明をしたところ、分かっていただけましたわ。
わたしがリリアナという本当の名前を名乗ることは滅多にない特別なことですもの。
レオにしか、教えてないのですけど、ここは譲歩しないといけませんわ。
わたしはレオのお嫁さんになるんですもの。
彼の大切な家族に認められないといけませんでしょう?
まずは心証を良くしておきませんと……ねぇ?
そして、招かれましたの。
彼のお家!
初めて入るレオのお家。
手狭ではあるものの温かみのある木のお家で素敵ですわ。
レオの素晴らしさについて、お舅様と話が合う気がします。
語り合っていると時が経つのを忘れるほどに楽しい時間でした。
段々とお舅様の目が死んだ魚のような目になっていき、ニーズヘッグとガルムが眠ってしまったのが解せませんけども。
でも、まだまだ、レオへの愛は語り尽くせないですわ!
仕組まれたように彼が選ばれたのは事実。
でも、最終的に選んだのはわたし。
わたしが選んだの。
わたしのことをわたしとして、捉えてくれるのはこの世界できっと、彼だけなの。
曇りの無い真っ直ぐな瞳がわたしに道を示してくれる……。
そう判断したわたしの勘は間違ってないはず。
だから、わたしは後悔なんてしない。
彼にとって、わたしは一番ではないかもしれません。
でも、わたしにとって、彼は一番なの。
彼の為なら、何も怖くないわ。
全てを失っても何を犠牲にしても怖くなんてないの。
例え、この世界を滅ぼしても……。
彼がいてくれたら、それだけでいいの。
そんなことを考えていると彼に知られたら、嫌われてしまうのかしら?
世界中の誰に嫌われても彼にだけは嫌われたくない。
だから、やって来ましたの、南の島!
『名も無き島』なんて、呼ばれているようですけど、とてもきれいな島ですわ。
燦々と降り注ぐ太陽。
打ち寄せる波と白い砂浜。
海は澄んで青々としていて、どこまでも広がっていて……。
南は素晴らしいですわ。
わたしの国も穏やかな気候になったとはいえ、こんなにもきれいな青空が望めることはまず、ありませんもの。
彼はここで育って、皆に愛されたから、あんなにも真っ直ぐになったのね。
「誰も近づいてきませんわね」
「わね~ね~」
「わふっ」
小さな黒い蜥蜴の姿になっているニーズヘッグ。
黒い仔犬の姿になっているガルム。
ニーズヘッグは『冥竜』。
ガルムは『地獄の番犬』。
魔物が恐れるのも仕方がないことなのかしら?
島の魔物は砂浜に降り立ったわたし達を遠巻きに眺めているだけです。
心なしか、震えているようにも見えますけど……。
「ね?」
フルフルと首を振る二人。
わたしから離れて、魔物の方に寄っていきましたが、彼らに怯えている様子は見られません。
あら? あらあら?
「えぇ? そんなまさか……」
わたしが一歩進むと遠巻きの魔物の群れが一歩下がりました。
わたしが一歩下がるとあちらが一歩進む。
これはわたしのせいということで確定ですわね。
おかしいですわ。
わたしのどこが怖いのかしら?
「お主、何者だ?」
深い緑色の鱗に覆われた大柄な体。
棘のような突起物が生え、鱗で守られた頑丈そうな尻尾。
そして、鰐のようなお顔。
左手には穂先が三又に分かれた独特の形状の槍を構え、あくまで警戒を解かない強気の姿勢を見せるこの御方は……
「あら? あなたが高名なセベク様かしら? 勇者レオニードのお父様でもあるのでしょう?」
「どうして、そのことを知っている? お主は一体……」
「ごきげんよう。初めまして、お舅様。わたしはリリアナ。レオ君の妻ですわ」
「つ、つま!?」
泡を食っているお舅様が我に返るのを待ち、誤解の無いように簡単な説明をしたところ、分かっていただけましたわ。
わたしがリリアナという本当の名前を名乗ることは滅多にない特別なことですもの。
レオにしか、教えてないのですけど、ここは譲歩しないといけませんわ。
わたしはレオのお嫁さんになるんですもの。
彼の大切な家族に認められないといけませんでしょう?
まずは心証を良くしておきませんと……ねぇ?
そして、招かれましたの。
彼のお家!
初めて入るレオのお家。
手狭ではあるものの温かみのある木のお家で素敵ですわ。
レオの素晴らしさについて、お舅様と話が合う気がします。
語り合っていると時が経つのを忘れるほどに楽しい時間でした。
段々とお舅様の目が死んだ魚のような目になっていき、ニーズヘッグとガルムが眠ってしまったのが解せませんけども。
でも、まだまだ、レオへの愛は語り尽くせないですわ!
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