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26 部屋割り

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 ベッドに仕掛けられていた触媒を破壊し、自由を取り戻したゼニーヌとフローナの治療でポポトさんともう一人の護衛であるロドさんは一命を取り留めた。

「ねぇ、リーナ。別々の部屋で本当に良かったの?」

 窓からすっかり日の落ちた世界を眺めていると、ベッドに寝転んだピピナが思い出したように聞いてきた。

「心配ではありますが、ラーズにも護衛としての意地があるのでしょう」

 魔術紋を見られる可能性を気にしている場合ではないので、全員同じ部屋で寝ることを提案したのだが、一度操られたポポトと私が同じ部屋にいることを危惧したラーズによって、結局当初の部屋割りで夜を明かすことになった。

「私は賛成よ。こうなった以上、ラーズ達とは少し距離を置きしょう」
「それってラーズやゼニーヌも操られてる可能性があるってこと?」
「ええ。近くに教会がない以上、私達に悪魔憑きとそうでない者を判別することは困難よ。ラーズが呪術にかかってないとは断言できないわ」

 悪魔憑きとは呪術に掛かった者を指す言葉で、呪術は弱いものであれば魔術師でも解呪可能ではあるが、強力なものになると神父、あるいは聖女に悪魔祓いしてもらう必要があった。

「ほんっと悪魔ってやることがうざいよね。もっと分かりやすく掛かってこいって感じ」
「悪魔は精神生命体、肉体という領土を持たない存在だからどうしてもやり方が精神攻撃になりがちなのよ」
「悪魔が直接暴れることもあるじゃん」
「それは爵位持ちの悪魔ね。長く生きて肉体という領土を得て、物理的な攻撃手段を手に入れた上位存在……ってこれくらい貴方も知っているでしょう」
「そうだけどさぁ。……あ~本当、魔女や下級悪魔の相手って面倒。どうせ戦うならまだ分かりやすい爵位持ちの方がいいよ」

 爵位持ちの悪魔は非常に強力で、もっとも弱いとされる男爵級でも討伐にAランクの冒険者が最低四人以上必要とされている。

「ピピナ、あなたの実力は知っていますが、爵位持ちを侮ってはいけませんよ」
「はいは~い。っていうかさぁ……やることなくて暇だぁ~」

 ピピナの両足がベッドの上でジタバタと暴れる。

 大人しく寝ていなさい。

 そう言いたいところではあるが、私もまるで寝れる気がしなかった。

「私は本を読むから邪魔しないでね」
「え~? フローナだけ狡い。……ねぇねぇ。本当にエッチなことしちゃわない?」

 そう言ってピピナは服を捲って小さな膨らみを露出して見せた。同性、それも長年一緒にいる彼女が脱いだところで私達が何か感じるわけもなく、フローナは冷め切った半目を一度ピピナに向けると魔術書に視線を落とした。私も剣の手入れをしようとしたのだがーー

 今隣の部屋から誰か出てきた?

 襲撃に備えて研ぎ澄ました感覚が廊下の微かな変化を捉えた。

「ついて行こっか?」
「その前に着衣の乱れを直しなさい」

 胸を露出したままベッドから降りようとするピピナにそういうと、私は部屋のドアを僅かに開けて外を確認する。そこに居たのはーー
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