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18 呼び出し。そしてーー

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「……ま、まさかティナまで俺のことが好きなのかな?」

 部屋に戻った俺はまさかの事実に頭を抱えた。

「いやいや。そもそもサーラが俺のことを好きと言うのも想像でしかないんだし、そう考えるのは早計ーー」
「じゃないわよ」
「わっ? ね、姉さん?」

 空いた窓から流れ込む風が深紅の髪を優しく撫でる。

「ど、どうしたのこんな時間に。な、何か用事?」

 日が暮れた部屋にこっそりと忍び込んでくるなんて、これはまさかーー

(エッチなこと? 姉さんはエッチなことをする気なの?)

「駄目だよ姉さん、俺達血は繋がってなくてもかぞーー」
「剣聖様達からの呼び出しよ。すぐに来るようにですって」
「……ああ、うん」
「弟君? 過去に見たことがないほどに残念そうな顔してるけど、どうかしたの?」
「え? ううん。なんでもない。何でもないよ? そ、それよりもさ、その、気のせいじゃないと言うのは……」
「ティナやサーラが弟君を好きなのなんて見てたら直ぐに気付くことでしょ」
「そ、そうなの? ……え? じゃあこの旅って完全に無駄じゃない?」

 それどころか二人を意味のない危険に晒しているだけだ。

「直ぐに二人に本当のことを教えてくるよ」
「あら、それはダメよ」
「ぐえっ!?」

 走り出そうとした俺の首根っこを背後から姉さんの手が掴む。

「あっ、ごめんなさい」
「ど、どうしてダメなのさ?」
「聖王妃様や剣聖様達のお言葉を忘れたの? サーラとティナには武者修行が、そして私達には魔族の討伐という任務があるでしょ。王子であることを告げるのは国に戻るまで待った方がいいと思うわよ」
「なんで?」
「いい? 二人は弟君と結ばれたい一心で旅に出たのよ? 既に任務として成立して旅を途中で止めるわけにはいかない以上、モチベーションを奪うような事実は伏せておくべきだと思わない?」
「……それは、まぁ、……確かに」

 俺としたことが、オッパイの柔らかさとかそんなことばかりに気を取られて、肝心の二人のことを考えてなかった。

(情けない。子作りがどうとか以前に二人は俺にとって大切な人なのに)

「目が覚めたよ姉さん。師匠達が呼んでるでしょ? 行こう」
「これ、弟君の装備ね」
「ありがと」

 ティナ達が準備してくれた物も一級品ではあるものの、やっぱり父さんたちが俺の為に作ってくれた数々の装備には劣る。

「大丈夫? 疲れてない?」
「知ってるでしょ。俺に睡眠は必要ないんだよ」

 聖王の血を引く者は基本的に休息のための睡眠を必要としない。だから聖王国にいたころは朝や昼にティナたちと遊んで夜に師匠達に鍛えてもらうというライフスタイルを送っていた。

「そう、初めての旅だから少し心配だったけど、その様子だと大丈夫そうね」
「姉さん、あの……」
「何かしら?」
「いや、今はドレス姿なんだね」

 道中も姉さんとはひっそりと会っていたけれどもその時は旅に適したロープ姿だった。

「アロス様、これ好きでしょ?」
「え? す、好きだけど」

 突然の様呼びに思わずドキッとしてしまう。

「良かった。それじゃあ行きましょうか。剣聖様達が待ってるわ」
「あっ、ま、まってよ姉さん!」

 窓から飛び出して、屋根伝いに移動する姉さんの後を慌てて追いかける。するとすぐに目的地へと辿り着いた。

「へぇ、師匠達、ここに宿を取ってるんだね」

 火王国の首都である火街でも一、ニを争う高級宿。治安を考慮して俺達もそこそこ良い宿を借りてはいるが、この宿には外観からしてまるで敵わない。

(あっ、カジノとかもあるんだ。王子であることを明かしたらティナとサーラを連れてくるのもいいかも)

 サーラはよく分からないけど、お金持ちのくせに人に奢られるのが大好きなティナはきっと喜んでくれるだろう。

 前を歩いていた姉さんが足を止める。

「この部屋よ」
「失礼します。師匠、お待たせしました。……師匠?」

 広々とした部屋に師匠達の姿はなく、明かりのついてない部屋に最初こそ何かの訓練かと気を引き締めたけど、どうやら本当に誰もいないようだ。

「姉さん? 師匠達まだ来てないようだけど……」

(何かあったのかな)

 なんて考えてると、ドレスがパサッと床に落ちた。

「…………へっ? ね、姉さん!?」

 窓から入る月の光が一糸纏わぬルル姉さんのあられもない姿を浮かび上がらせる。

「ごめんなさい。修行の話は本当だけど、剣聖様にお願いして明日からにしてもらったの」
「な、なんでそんなこと?」

(うぉおおおおお!! これはエッチな展開なの? エッチな展開なの?)

「言ったじゃない。大きな街についたらしようって。……弟君はまだ私のことをお姉ちゃんとしてしか見れない?」

 妖艶な視線が誘うように俺を見つめ、きめ細やかな手が起伏に富んだ白い肌を妖しく這いまわる。

 カァー、と頭に昇った血が俺から思考力を奪っていった。

「ね、姉さん」
「今はルルって呼んで」

 柔らかな肢体がそっと抱きついてくれば、この世のモノとは思えない甘美な香りに鼻腔を擽られた。ーー瞬間、俺の中でアリアさんとのディープな接吻以降、ずっとモヤモヤしていた衝動が弾け飛んだ。

「ルル! ルル!!」
「あっ!? アロス様」

 目の前の美女を床に押し倒せば、女は恥ずかしそうに、それでいて何処か嬉しそうに俺を見上げた。そしてーー。

 
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