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第15話 最果てに至った怪物

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「はっ!!」
 青い斬撃が飛ぶ。高所から放たれたそれは、しかし何も捕らえずにただ床を切り裂く。爪痕のように床に亀裂が走る。見ればそれは最早数え切れないほどの量になり、ある種の模様のように床を彩っていた。
「くっ!!!」
 続けて再び放たれる青い斬撃。しかし、それは途中で軌跡をねじ曲げられる。斬撃に斬撃が絡みつく。伸びた刀身がひねられ、そのまま柄までをも持っていこうとする。
 それを強引にいなして踏みとどまる。紅葉は踏みとどまる。
 この位置から絶対に出てはならないのだから。
 紅葉は肩で息をしていた。
 紅葉は再び斬撃を放つ。幾度も幾度も蕨平に向けて。しかし、蕨平はそれに綺麗に『見えない斬撃』を絡ませる。とうとう紅葉の体が天井から刀ごと引きずり下ろされ、紅葉は床に降り立つ。
 そこに、すかさず蕨平は斬りかかる。しかし、
「ふむ。また誘われましたか」
 蕨平の斬撃は紅葉を切り裂かない。紅葉はそれをギリギリでかわし再び天井に戻った。舞うように跳び上がり、逆さに天井に立つ。そこへ、
「くそっ.....!」
 蕨平の斬撃が紅葉の立つ周囲の天井を切り裂き、天井が崩れ落ちた。紅葉はなんとか、その横の天井に飛び移る。
 見れば、周囲は何度かのそういった天井の崩落の後があった。このエレベーター前のエントランスには計4本の柱が立っている。そことその周りの天井を起点にした斬撃によりすでに三カ所の崩落の跡があった。
「はぁはぁ......」
 紅葉は息を整えた。蕨平はそれをやや不満そうに、だが満足げに見上げていた。
 蕨平は紅葉を斬らなかった。紅葉に『見えない斬撃』は飛んでこなかった。
「邪魔な柱です。これさえ無ければもっと上手く戦えるものを」
 紅葉は言葉を漏らした。
 戦闘開始から早5分。紅葉は蕨平の斬撃を受けてはいなかった。
 紅葉は天井からひたすら斬撃を伸ばして攻撃をしていた。蕨平は当然のようにそれをいなすが、紅葉本人を斬ることはなかった。
 天井を崩して紅葉を下に下ろした時には斬りつけたが、それも紅葉はなんとかかわしていた。
 紅葉は蕨平になんとか対抗していた。たった一人でこの化け物に。
「アタシはどうもあなたを侮り過ぎていたようだ。あなたの剣、受ける剣ですね。上手い具合に作られた隙に見事に乗らされている。あなたに剣が届かない。見事です」
 蕨平は下に落ちた紅葉に何度か斬撃を飛ばしていた。しかし、紅葉が作る刀の位置や体の姿勢などで紅葉が意図的に生み出す隙に上手く引き込まれ、結果として紅葉に攻撃をかわされていた。
 この、相手の剣を引き込むことこそが紅葉の剣術の真価だった。
 蕨平は満足げに笑っていた。
「そして、お嬢さん。あなた気付いている。アタシの剣の正体に。見事です、実に」
 そう言いながら、蕨平はその剣で再び天井を落とす。4回目の崩落。壁と柱をブロックに分けたなら9ブロックになるわけだがその4つが落ちた。残りは5ブロック。
 紅葉は必死に飛ぶ。
「また誘われた」
 そこに蕨平は斬撃を飛ばすが、また紅葉の『誘う剣』に乗ってしまい届くことはなかった。紅葉はなんとか次の天井に降り立った。そして、蕨平を睨んだ。
 紅葉は今のところなんとか蕨平の攻撃を受けずに済んでいる。しかし、紅葉の攻撃も蕨平に届いてはいなかった。
 なぜか蕨平の攻撃が紅葉に届くことはないが、同様に紅葉の攻撃が蕨平に届くこともない。紅葉は天井から、なぜか発生している安全地帯から刀身を伸ばして攻撃しているが、蕨平はそれを当然のようにかわす。そしてあまつさえ刀身を絡ませ引きずり下ろそうとする余裕さえある。
 恐らく蕨平はまだ本気ではないのだ。
 紅葉とて怪異狩として剣の道を修めた人間だ。その剣術は極限の領域にあるが、紅葉程度の極限に簡単に引っかかる蕨平ではない。少なくとも、紅葉がこれまで戦いで抱いた蕨平の強さはそういうものだった。
 実力差は歴然。
 ここまで状況を作ってもなお。
「はぁっ!!!」
 紅葉はそれでも蕨平に斬撃を伸ばす。やはり当たらない。蕨平は未来予知じみた読みと有り得ない体裁きで容易くかわす。そして、紅葉の刀身に自分の刀身を合わせ、こすりつけることで紅葉の体を持っていこうとする。
 紅葉はなんとか踏みとどまる。
 そして斬る。それでも斬る。それでも斬り続ける。
「はぁぁぁああっ!!!」
 幾十も幾百も紅葉は蕨平に攻撃を続ける。
 紅葉の目に実力差による絶望はない。ただ、渾身の眼力で蕨平を睨み、その動きを見て、自分の最高の刀を振るい続ける。
 どれだけ届かなくとも、どれだけいなし刀を合わせられようとも。紅葉は斬り続ける。
 傍目には勝機があるようには見えない。
 しかし、紅葉はまるで刀を振るうことだけを行う生物のように一心不乱だ。
 蕨平に届かなくとも、その動きは紅葉が行える最高のものだった。それを止めどなく、一切の乱れなく行い続けている。
 紅葉の刀が降り注ぐ様はまるで美しく降り注ぐ雨のようだった。
「ははは! あはははははははは!」
 蕨平は笑った。そして、紅葉の攻撃のわずかな隙を突き、紅葉が逆さに立つ天井を落とす
「くっ!!!!!」
 紅葉は落ちそうになるのを必死に堪え、隣の天井に移動する。これで5回目の崩落。残りは4ブロックしかない。それが紅葉のタイムリミットだ。あと4階天井が落ちれば、紅葉は地上で戦うしかなくなる。そうなれば、蕨平は斬り放題。紅葉に勝ち目はない。
 先に落としてしまえば良いものを落とさないのは紅葉の攻撃が怒濤であるだけではないだろう。やはり、
「遊んでいるんですね」
「いえいえ、さすがにここまで来れば『遊んでいる』というほどではないですよ。ただ、お嬢さんがあまりに上手く動かれるので付き合いたいという思いがあるだけです」
「それを遊んでいるって言うんですよ」
 蕨平がその気になれば勝負は一瞬で終わるのだ。
 紅葉は次の瞬間にも負けてしまう。どれだけ紅葉が極限の集中力で極限の動きをしても、蕨平の実力には届かない。
 しかし、それでもなお、
「良いですね。これだけの差を見せられても、お嬢さん。あなた、まだアタシに勝つのを諦めていない。いや、勝てると思っている。そういう目だ」
 紅葉は黙してただ蕨平を睨む。
「あなたの剣は素晴らしい。まるで迷わず一番良い剣を振るう。そして、あなたはアタシの剣のからくりに気付いている。これに気付いたのはあなたで二人目です」
 そう言って、蕨平は紅葉の居る天井を落とす。紅葉は必死で次の天井に移る。これで残り3ブロック。
 紅葉は変わらず天井に立つ。やはり、そこには蕨平の剣は届かない。
 紅葉は再び雨のように斬撃を伸ばす。しかし、蕨平はそれをすべていなした。
「その通りです。アタシの剣はあなたの立つ天井には届かない。そこはアタシが斬れないからだ・・・・・・・・・・・・・・
 蕨平は一層楽しそうにいつも浮かべている薄ら笑いを深くした。楽しくて仕方が無いというように。
「千石橋での戦いの時、お前は宙に居る陽毬さんと明日壁さんを斬れなかった。最初それが何故だか分からなかった。空中には斬撃を飛ばせないのかと思いました」
 紅葉は刀を構えながら、ゆっくりと蕨平の剣の種明かしを始めた。
「でも、その後。街灯に近づいた瞬間に明日壁さんは斬られた。それも、その時はなぜだか分かりませんでした。でも間違いなく、その状況こそがお前の能力の正体だと確信した」
 蕨平は紅葉の種明かしを静聴している。それこそを待っていたというように。
「私も頭は良くないですからね。だから、それから考えた。あの現象がなにを意味するのか。考えに考えた。そして、ここに来る前に仮説を立てました。それはどうやら当たっていた。そして、お前は楽しそうに自分で口にしました。これで確定です」
 蕨平が今し方言った『そこはアタシが斬れないからだ』という言葉。それこそが、蕨平の能力の正体。それこそが紅葉が天井で攻撃を受けなかった理由。
「お前の斬撃はお前が実際に斬れるところにしか発生しない。お前が未来に発生させる斬撃を現在に発生させる能力。斬撃に限定した因果律の逆転。それがお前という怪異の正体です」
 それが、紅葉が見切った『刀鬼・蕨平諏訪守綱善』という怪異の能力だった。
 すなわち、蕨平が自分の体で行き斬れる場所。蕨平が未来で発生させる斬撃、それを現在に発生させる能力ということだ。
 地続きの地上は言うに及ばず、物陰、柱などが伝った空中、蕨平が行って斬れる場所ならばどこにでも斬撃を発生させる。それも同時にいくつでも発生させることが出来る。そして、その切れ味は極みに達しており、鋼鉄は言うに及ばずあらゆるものを切断する。
 だから、千石橋では蕨平がどうやっても届かない高所に居る陽毬と怪異狩に攻撃出来なかった。だから今、蕨平がどうやっても届かない天井に居る紅葉には攻撃が来なかった。
 そして、千石橋で街灯に近づいた怪異狩は斬られた。紅葉の周りの天井は柱と壁を起点として落とされた。
 未来に発生する斬撃を因果を逆転させて現在に発生させる。
 それがこの怪異の『飛ぶ斬撃』の正体だった。
「はははははははは!!!」
 紅葉の言葉を聞き、蕨平は大きな声で笑った。禍々しい笑いだった。
「大当たりですよお嬢さん。まさしくその通り。アタシの剣はアタシが振るうであろう未来の剣を前借りする。アタシが斬れると思った場所を斬る剣」
 蕨平は笑い続ける。自分の剣を看破した紅葉を賞賛するように紅葉の存在が楽しくて仕方が無いというように。
「ちょっとした昔話をしましょう。アタシの剣の話しです。アタシは生まれてこの方剣のことばかりを考えてきた。もの心ついた時から剣を振るった。アタシは剣の才には恵まれていた方ではなかったんですがね。とにかく、剣を振ることだけは好きだった。特にその中でも剣を抜くことがとにかく好きだった。だから、抜き続けた。物心ついたときから朝昼晩。なんなら夜が明けるまでアタシは剣を抜き続けた。その速さを追い続けた。毎日毎日毎日。それ以外のことは考えなかった。飯を食っては剣を抜き、糞尿を済ませては剣を抜き、寝て起きては剣を抜き。才とか実力とかまるで気にせず抜いて抜いて抜き続けた。アタシはとても楽しかった。それだけで毎日が満たされていた。アタシは剣を抜くことが楽しくて好きで好きで仕方が無かった。だから、毎日毎日抜き続けた。それ以外のことなんてどうでも良かった」
 紅葉はそんな話しには付き合わず、また雨あられと剣を振るう。しかし、全て蕨平は弾き、そして剣を絡ませ紅葉を引き下ろそうとする。紅葉はすんでで堪える。蕨平はそんなやりとりをしながら話し続ける。
「そんな生活を40年ほど続けたころだった。アタシはいつものように剣を抜こうとした。しかし、どうしたことか。アタシが剣を抜いてもいないのに、目の前の藁束が斬れたんです。さすがのアタシも仰天しました。そして、それから次々。藁束が抜く前に斬れた。剣が届くはずのないものまで斬れた。そして、ようやく分かったんですよ。アタシの剣は抜く前に抜かれていると。アタシが抜かずとも『斬ったという行い』だけが現れるようになったのだと。そして、その日からアタシは人間でなくなった。アタシは剣を抜く怪異になった。これが、アタシという怪物の生まれたいきさつです」
 紅葉の剣が蕨平のこめかみスレスレを通り抜ける。しかし、蕨平は涼しい顔で笑っている。
「ですが、これこそが同時にアタシという剣士の死だったんですよ、お嬢さん」
 紅葉は応えず剣を振るう。
「だってそうでしょう。人でなくなった。斬られても死ななくなった。しばらくしたら蘇る。そんなもの楽しくもなんともない」
 蕨平は紅葉の刀身にぴったりと自分の斬撃を正面から合わせてはじき返した。人間業ではなかった。
「アタシはひたすら剣を抜き続けましたがね。やはり、人斬りだ。斬り合いをしてなんぼだ。そして、斬り合いは『命』のやりとりをしてなんぼだ。その『命』がなくなるなんて。なんてつまらないんでしょうか。死なないなんて面白くもなんともない」
 蕨平は紅葉の立つ天井を落とした。紅葉は落ちるが、蕨平の剣をギリギリで受けて流し、なんとか天井に戻る。これで残り2ブロック。もう、残り時間は少ない。
「だから、アタシは魔払いの呪具を求めて発生する現象になった。アタシはね。人間に戻りたいんですよお嬢さん。人間に戻って、『命』を取り戻して、そして最高の斬り合いがしたい。それこそが、アタシという怪異の目的です!!」
 蕨平の斬撃が紅葉の刀をひときわ強く跳ね返した。
「くっ......!」
 紅葉は刀を構え直して刀身を見る。もうボロボロだった。あと何合斬り合えるのか。これだけ刀を合わせ続ければ当然のことだった。刀の定めだ。
 紅葉はしかし、笑った。
「さぁ、どうしますかお嬢さん。時間は待ってはくれませんよ。あなたが立てる天井ももうあと2つ。それまでにあなたはアタシを斬らなくてはならない。勝てると思いますか?」
 蕨平はからから笑いながら言う。圧倒的余裕だ。しかし、
「ええ、思いますよ。蕨平諏訪守綱善」
 紅葉は不敵に笑いながら応えた。
「だって、タイムリミットがあるのは私だけじゃない。お前も同じなのだから」
 そして、その言葉に蕨平は漏らしていた余裕綽々の笑いを止めた。笑顔のまま固まった。
 タイムリミット。それは、蕨平の出現限界のことではない。
「私はお前を千石橋で見たときから分かっていました。怪異としての特性。大きなカテゴリーのひとつにお前を入れていた。お前は千石橋で発生したときその服に前の晩付いた返り血が残ったままだった。お前は『発生期間中に状態が継続される怪異』。発生期間中に起きた変化はその終わりまで保たれる。そして、お前はどうやら能力以外はただの『剣聖』。つまり、その本体自体に特殊能力は無い。肉体も、その身に着けているものも何の変哲もない当たり前のもの」
 紅葉は睨んだ。蕨平を。その腰にある一度も姿を現していない刀を。
「そこで私は思いました。お前が剣士であるならばお前も逃れられないだろうと。ましてやお前の能力は『斬った結果を発現させる能力』。お前がどれだけの剣の達人でお前がどれだけ刀を振るうのが上手かろうと。お前の刀がどれだけの業物であろうと決して逃れられるはずはないと。私たち剣士の宿命から」
 蕨平は応えない。固まった笑顔のまま紅葉の言葉を聞いている。
「『蕨平諏訪守綱善』お前の刀は一体後何回、お前の斬撃に耐えられるんですか?」
 紅葉は言った。
 それはまさしく、紅葉の手に今握られている刀が雄弁に語っている事実。
 蕨平は達人の中の達人だ。恐らくその剣も業物の中の業物。
 しかし、どれだけ上手く刀を振っても、どれだけの強度を持った刀だったとしても決してその強度の限界が無くなるわけではない。
 蕨平は発生期間中にその状態が継続される怪異なのは間違い無かった。
 つまり、その刀の状態も維持される。
 蕨平は発生した二日前の晩から数え切れないほど刀を抜いている。蕨平の能力は『斬撃を飛ばす』能力ではなく、『未来で斬ったという事実を現在に発生させる能力』。
 すなわち、その刀で斬っているのは間違いない。
 つまり、斬った分だけ刀にダメージが残るのも間違いないのだ。
 そして、紅葉の言葉を聞き蕨平は、
「ははは......」
 今まで浮かべていた薄ら笑いを消し、そして本当に愉快そうに歯を見せて、この上ないほど酷薄に笑ったのだった。
「お嬢さん。やはりあなたは極上だ」
 蕨平は深く腰を落とし、今までと明らかに違う構えを取った。
「あなたの言うとおり。アタシの剣は結果だけ発現させているとはいえ、斬ったという事実は間違いない。アタシの剣もどんどん摩耗していく。この事実に気付いたのはあなたが初めてだ。まぁ、今までここまでになる前に事が終わってたってのもあるんですがね」
 紅葉は身構えた。なにか今までと違う尋常でないものが来ると分かった。試しに斬撃を浴びせるが蕨平には当たらない。まるで瞬間移動したようにその体勢のままその横に移動する。紅葉には分かった。あれは異常なまでに極められたすり足での高速移動だと。
「132。あとアタシが斬れる回数です。今からあなたの周りを131で粉々にして、最後の一刀であなたを斬ります」
 それはすなわち、このフロア一帯を斬撃で満たすと言うこと。そして、地上に降り、逃れられない紅葉に正真正銘完璧な斬撃を見舞うということ。つまりは、死の宣告に他ならなかった。
「本当はゆっくり相手をしたかったんですがね。もう、楽しくて仕方が無い。だから、アタシの全力の剣であなたを斬ります」
 蕨平は今までと同じような薄ら笑いに戻っている。紅葉は刀を構える。この死の宣告を前にして紅葉の目から光は失われていなかった。まだ、紅葉は勝利を諦めていない。蕨平はそれを見て笑みを深くした。
「行きますよ」
 蕨平の構えが、そこから受ける印象が一瞬で変わる。紅葉は感じた。それは人間の姿ではない。まるで路傍の石のようだと。
「刃忌《じんき》・仇牡丹《あだぼたん》」
 その瞬間起こったのは剣の嵐というのは適当ではなかった。それはまるでそよ風のように優しく、氷のように透き通った、美しいとしか言いようのない現象だった。紅葉は相手が人殺しの怪異なのに、なにより自分の敵なのに、その現象に息を飲んだ。
 フロアは斬撃で満たされた。紅葉の立つ天井、柱、それらが静かに崩落する。紅葉も同時に落ちる。紅葉は懐から符術の札を取り出して蕨平を迎え撃つ。
 そこに、
「殺《と》った」
 蕨平はその刀で放てる最後の一刀を浴びせた。
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