上 下
48 / 50
高等部 一年目 皐月 新入生歓迎会

039 後夜祭 1

しおりを挟む

**颯視点**

先に着替え終わった京夜がケン兄とデートの待ち合わせ場所の確認をしている側で、オレはケン兄のお下がりのTシャツと学園指定のジャージの上下に着替えた。
ジャージは京夜のお下がりなのでネーム刺繍は京夜のイニシャルが入っている。
京夜も同じジャージ姿で、手を繋いで後夜祭の会場の校庭に向かった。

「颯、京夜」
寄宿舎から校庭を繋ぐ遊歩道の先でケン兄と合流した。
ケン兄は校庭を囲むフェンスの出入り口の脇で、両腕をα二人に取られた状態で立っていた。

「天野と理事長だな・・・」
「どういう状態?」
数メートル離れた位置で立ち止まり、京夜と顔を見合わせた。
すばると理事長先生はケン兄を挟んで険悪なムードだ。
「颯っち!」
オレ達に気付いたすばるの表情が明るくなった。
「叔父さん、颯っち達と俺と健太はダブルデートだから!」
「何巫山戯た事を言ってるんですか? 黒峯君は私と二人きりでデートするに決まってます。」

ケン兄って昔っからαにモテてたけど、すばるだけじゃなく理事長先生まで引っかけちゃったのかな?

「健太、颯っち達と俺とデートするよな?」
「黒峯君、私を選びますよね?」
ケン兄は口元を歪めて嗤った。
「すばる、理事長、」
「健太!」
「黒峯君!」
「俺は颯と京夜と三人だけでデートするから、お前等二人でデートしろよ、な?」
ニコニコと嗤うケン兄、相当、激おこだな・・・
「出来るよな? 叔父甥で仲良くデート?」
すばると理事長は真っ青になってコクコクと肯いた。
二人共、これ以上はヤバいと察したようだ。

二人の手から離れたケン兄は満面の笑顔でオレに抱き付いた。
「颯~」
「ケン兄~」
ケン兄の項に鼻を寄せて、クンクンと匂いを補給する。
ケン兄のフェロモンの匂いは心が落ち着く。

オレはケン兄と京夜と腕を組んで先ずはトルネードポテトの屋台に並んだ。
すばると理事長は静かにオレ達の後を着いて来た。
二人は涙目でケン兄を見つめている。
「ケン兄、いいの? 本当はすばるとデートしたかったんじゃないの?」
二人に聞こえないように囁くと
「なんで俺がすばると?」
ケン兄がキョトンとした顔になった。
「ん? だってすばるとゼリー半分こしたんだよな?」
「・・・・・・」
「ケン兄は仲良くしたい相手とは食べ物分け合うじゃん。」
「えっと、颯は何で分かったんだ? 俺がゼリー半分やったのがすばるだって。」
「練習試合の日さ、S組で断髪式があって、すばるの丁髷の断髪式に参加した時にさ、ケン兄の匂いがすばるからしたんだ。だから半分この相手かな?って思ったんだけど、違った?」
「・・・正解」
ケン兄はため息をつきつつ、オレの頭を撫でた。
「天野に急に懐いたのは健太が原因かよw」
京夜はくくっと笑いながら
「で、どっちの天野と付き合うんだ?」
とケン兄に訊いた。
「・・・付き合う?」
ケン兄がじっと二人を観察するように見つめた。
そしてため息を一つついた。
「無いな~」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話

ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに… 結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?

エロ家庭教師 数学は置いといて、特別なことを教えてア・ゲ・ル

天災
BL
 まずは、君に色々教えようか。

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~

雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。 元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。 書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。 自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。 基本思いつきなんでよくわかんなくなります。 ストーリー繋がんなくなったりするかもです。 1話1話短いです。 18禁要素出す気ないです。書けないです。 出てもキスくらいかなぁ *改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

その学園にご用心

マグロ
BL
これは日本に舞い降りたとてつもない美貌を持った主人公が次々と人を魅了して行くお話。 総受けです。 処女作です。 私の妄想と理想が詰め込まれたフィクションです。 変な部分もあると思いますが生暖かい目で見守ってくれるとありがたいです。 王道と非王道が入り混じってます。 シリアスほとんどありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

処理中です...