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高等部 一年目 皐月 新入生歓迎会
039 後夜祭 1
しおりを挟む**颯視点**
先に着替え終わった京夜がケン兄とデートの待ち合わせ場所の確認をしている側で、オレはケン兄のお下がりのTシャツと学園指定のジャージの上下に着替えた。
ジャージは京夜のお下がりなのでネーム刺繍は京夜のイニシャルが入っている。
京夜も同じジャージ姿で、手を繋いで後夜祭の会場の校庭に向かった。
「颯、京夜」
寄宿舎から校庭を繋ぐ遊歩道の先でケン兄と合流した。
ケン兄は校庭を囲むフェンスの出入り口の脇で、両腕をα二人に取られた状態で立っていた。
「天野と理事長だな・・・」
「どういう状態?」
数メートル離れた位置で立ち止まり、京夜と顔を見合わせた。
すばると理事長先生はケン兄を挟んで険悪なムードだ。
「颯っち!」
オレ達に気付いたすばるの表情が明るくなった。
「叔父さん、颯っち達と俺と健太はダブルデートだから!」
「何巫山戯た事を言ってるんですか? 黒峯君は私と二人きりでデートするに決まってます。」
ケン兄って昔っからαにモテてたけど、すばるだけじゃなく理事長先生まで引っかけちゃったのかな?
「健太、颯っち達と俺とデートするよな?」
「黒峯君、私を選びますよね?」
ケン兄は口元を歪めて嗤った。
「すばる、理事長、」
「健太!」
「黒峯君!」
「俺は颯と京夜と三人だけでデートするから、お前等二人でデートしろよ、な?」
ニコニコと嗤うケン兄、相当、激おこだな・・・
「出来るよな? 叔父甥で仲良くデート?」
すばると理事長は真っ青になってコクコクと肯いた。
二人共、これ以上はヤバいと察したようだ。
二人の手から離れたケン兄は満面の笑顔でオレに抱き付いた。
「颯~」
「ケン兄~」
ケン兄の項に鼻を寄せて、クンクンと匂いを補給する。
ケン兄のフェロモンの匂いは心が落ち着く。
オレはケン兄と京夜と腕を組んで先ずはトルネードポテトの屋台に並んだ。
すばると理事長は静かにオレ達の後を着いて来た。
二人は涙目でケン兄を見つめている。
「ケン兄、いいの? 本当はすばるとデートしたかったんじゃないの?」
二人に聞こえないように囁くと
「なんで俺がすばると?」
ケン兄がキョトンとした顔になった。
「ん? だってすばるとゼリー半分こしたんだよな?」
「・・・・・・」
「ケン兄は仲良くしたい相手とは食べ物分け合うじゃん。」
「えっと、颯は何で分かったんだ? 俺がゼリー半分やったのがすばるだって。」
「練習試合の日さ、S組で断髪式があって、すばるの丁髷の断髪式に参加した時にさ、ケン兄の匂いがすばるからしたんだ。だから半分この相手かな?って思ったんだけど、違った?」
「・・・正解」
ケン兄はため息をつきつつ、オレの頭を撫でた。
「天野に急に懐いたのは健太が原因かよw」
京夜はくくっと笑いながら
「で、どっちの天野と付き合うんだ?」
とケン兄に訊いた。
「・・・付き合う?」
ケン兄がじっと二人を観察するように見つめた。
そしてため息を一つついた。
「無いな~」
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