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高等部 一年目 皐月 新入生歓迎会
028 新入生歓迎会 10
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理事長の憂鬱
**鳳堂学園理事長視点**
今日は高等部の祭り、新入生歓迎会だ。
私──鳳堂学園理事長・天野朔夜は、いつもなら主催者側の本部席でのんびり監視カメラの映像を眺めて表彰式出て終わりなのだが、今年は可愛い甥っ子のすばるが参加するので近くで様子を見守ることにした。
私は監視員として怪人二十面相のコスプレをしている。
怪人二十面相のコスプレは監視員だけで10人程扮装しているが、人気があるキャラクターなせいか、探偵と怪盗チームでも扮装している者が多い。
因みに私は「当たり」だ。
すばるに依頼して欲しくて後を着いて回っているのだが、一向に気付いて貰えない。
まあ、まだ始まったばかり。
時期じゃないしな。
すばるは一番難易度の高いスポーツゾーンを一人でクリアすると校舎へと向かった。
捜査員を躱しつつ、謎解きもしつつ進むすばる。
数年前まで食も細く、か細かったすばる。
今は健康になったが、αとしては小柄で愛らしい見た目だ。
悪い虫が纏わり付かないようにしなければ!
S組は選りすぐりのαとβしかいないからクラスメイト達と切磋琢磨しながら才能を伸ばせるだろう。
しかし、帰国して早々に髪を染めてアフロになった時は驚いたが、編入してすぐに丸坊主になってしまったのには更に驚かされた。
変な眼鏡も止めて、毎日楽しそうにしている様なので良いのだが、理事長室になかなか遊びに来てくれなくて淋しい。
切ない気持ちを抱え、すばるの後を追う。
今度はミニシアターのステージで暗唱をするようだ。
すばるの暗唱を聞く為に客席へ向かう。
客席には私と同じ「怪人」の腕章をつけた監視員が二人いた。
一人はすばるの担任の城山、もう一人は扇で顔を隠しているので誰なのか判らない。
私は入り口近くの目立たない場所ですばるの暗唱を聞いた。
幼少期より音楽の英才教育を叩き込まれたすばるの美声に聞き惚れる。
ステージ中央でスタンプカードを受け取るすばるに惜しみない拍手を送る。
何となく、城山の方に視線を向けた時、私は「女神」を見た!
女神は、すばるに惜しみない拍手を送っていた。
我が学園にこんな美しい人がいたなんて!
しかし、何処かで会ったことがあるような既視感を覚える。
城山が顧問を務める演劇部は脚本、役者、衣装、メイク、舞台装置など、どれもプロの劇団や歌劇団に勝るとも劣らない技術と実力を兼ね備えている。
おそらく「女神」は城山率いる演劇部の技術の結晶に違いない。
「そろそろ撮影するぞ。」
「了解」
城山の言葉に肯き、女神は腕章を外して席を立った。
私は二人の後を追った。
ロビーに出た二人は背景スクリーンの方へ移動した。
二人が打ち合わせをしているうちに何十人ものギャラリーが何処からともなく集まって来た。
女神が城山の指示でポーズをとる度にチャイナドレスのスリットから覗く脚線美に性的欲求が刺激される。
女神を自分だけのものにしたい!
女神を組み敷いて啼かせたい!!
性別もバース性も関係無く「欲しい」、そう思ったのは二度目だ。
一度目は去年、理事長に就任後、高等部の入学式で黒峯君を初めて見た時だった。
すばるが小さい頃から、黒峯君がいかに素晴らしくカッコ良いかとか、可愛いとかいう話をしょっちゅう聞かされて辟易していたし、可愛いうちのすばるの心を鷲掴みにしている彼に嫉妬して嫌っていたのに、一目見て惹かれた。
一回りも年が離れているし、すばるの想い人だから気持ちに蓋をしなければ、と彼への激情を押し殺して接して来たんだ。
女神の撮影会を見守っていると、すばるのお気に入りの神月君がやって来て女神に声をかけた。
人見知りが激しい神月君が、躊躇無く声をかけるのは珍しい。
もしかして知り合いか?
「!!」
ほんの僅かの会話、ほんの数十秒の僅かな時間、女神は慈愛のこもった眼差しを神月君に向けていた。
黒峯君?
女神の慈愛の眼差しは、私が女神──黒峯君に抱いていた愚かな劣情を更に刺激した。
すばるの為に諦められるのか?
唯一無二の人を
────────
理事長が勝手に闇堕ちヤンデレ化しそうです・・・
**鳳堂学園理事長視点**
今日は高等部の祭り、新入生歓迎会だ。
私──鳳堂学園理事長・天野朔夜は、いつもなら主催者側の本部席でのんびり監視カメラの映像を眺めて表彰式出て終わりなのだが、今年は可愛い甥っ子のすばるが参加するので近くで様子を見守ることにした。
私は監視員として怪人二十面相のコスプレをしている。
怪人二十面相のコスプレは監視員だけで10人程扮装しているが、人気があるキャラクターなせいか、探偵と怪盗チームでも扮装している者が多い。
因みに私は「当たり」だ。
すばるに依頼して欲しくて後を着いて回っているのだが、一向に気付いて貰えない。
まあ、まだ始まったばかり。
時期じゃないしな。
すばるは一番難易度の高いスポーツゾーンを一人でクリアすると校舎へと向かった。
捜査員を躱しつつ、謎解きもしつつ進むすばる。
数年前まで食も細く、か細かったすばる。
今は健康になったが、αとしては小柄で愛らしい見た目だ。
悪い虫が纏わり付かないようにしなければ!
S組は選りすぐりのαとβしかいないからクラスメイト達と切磋琢磨しながら才能を伸ばせるだろう。
しかし、帰国して早々に髪を染めてアフロになった時は驚いたが、編入してすぐに丸坊主になってしまったのには更に驚かされた。
変な眼鏡も止めて、毎日楽しそうにしている様なので良いのだが、理事長室になかなか遊びに来てくれなくて淋しい。
切ない気持ちを抱え、すばるの後を追う。
今度はミニシアターのステージで暗唱をするようだ。
すばるの暗唱を聞く為に客席へ向かう。
客席には私と同じ「怪人」の腕章をつけた監視員が二人いた。
一人はすばるの担任の城山、もう一人は扇で顔を隠しているので誰なのか判らない。
私は入り口近くの目立たない場所ですばるの暗唱を聞いた。
幼少期より音楽の英才教育を叩き込まれたすばるの美声に聞き惚れる。
ステージ中央でスタンプカードを受け取るすばるに惜しみない拍手を送る。
何となく、城山の方に視線を向けた時、私は「女神」を見た!
女神は、すばるに惜しみない拍手を送っていた。
我が学園にこんな美しい人がいたなんて!
しかし、何処かで会ったことがあるような既視感を覚える。
城山が顧問を務める演劇部は脚本、役者、衣装、メイク、舞台装置など、どれもプロの劇団や歌劇団に勝るとも劣らない技術と実力を兼ね備えている。
おそらく「女神」は城山率いる演劇部の技術の結晶に違いない。
「そろそろ撮影するぞ。」
「了解」
城山の言葉に肯き、女神は腕章を外して席を立った。
私は二人の後を追った。
ロビーに出た二人は背景スクリーンの方へ移動した。
二人が打ち合わせをしているうちに何十人ものギャラリーが何処からともなく集まって来た。
女神が城山の指示でポーズをとる度にチャイナドレスのスリットから覗く脚線美に性的欲求が刺激される。
女神を自分だけのものにしたい!
女神を組み敷いて啼かせたい!!
性別もバース性も関係無く「欲しい」、そう思ったのは二度目だ。
一度目は去年、理事長に就任後、高等部の入学式で黒峯君を初めて見た時だった。
すばるが小さい頃から、黒峯君がいかに素晴らしくカッコ良いかとか、可愛いとかいう話をしょっちゅう聞かされて辟易していたし、可愛いうちのすばるの心を鷲掴みにしている彼に嫉妬して嫌っていたのに、一目見て惹かれた。
一回りも年が離れているし、すばるの想い人だから気持ちに蓋をしなければ、と彼への激情を押し殺して接して来たんだ。
女神の撮影会を見守っていると、すばるのお気に入りの神月君がやって来て女神に声をかけた。
人見知りが激しい神月君が、躊躇無く声をかけるのは珍しい。
もしかして知り合いか?
「!!」
ほんの僅かの会話、ほんの数十秒の僅かな時間、女神は慈愛のこもった眼差しを神月君に向けていた。
黒峯君?
女神の慈愛の眼差しは、私が女神──黒峯君に抱いていた愚かな劣情を更に刺激した。
すばるの為に諦められるのか?
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