【Ｒ１８】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

高等部 一年目 卯月

006 食い物の恨み

「コイツは颯のデザート勝手に食ってたヤツ。」
京夜がノートパソコンの中のモジャ男を指差した。
「あんまり記憶にない。」
「お前、いじめっ子の奴らガン無視だったもんな～」
「仲良くない奴らは覚える必要ないよね？　面倒くさいし。」
「颯くんってば、恐ろしい子！」
「山野さんのことは好きだから！」
「俺も颯くん大好き、両思いだな！」
パンッと山野さんとハイタッチ。
山野さんはベータで異性愛者なので触さわるのは全然平気だ。

「コイツは髪型変わったし、染めてるし、十年近く会ってないから覚えて無くてもいいけどよ、他の奴らのことはちゃんと覚えてるのか？」
「バ会長と副会長とチャラ男会計とどっちがどっちでしょーの双子！
幼稚舎卒園してからは意地悪されなくなったけど、中等部に入ってからはウザ絡み増えた。やたら触ろうとしたり、匂いを嗅ごうとしたり、生徒会に入れって五月蝿うるさかったり。それを防ぐ為にケン兄が生徒会に入ってさ、ホント迷惑な奴らだよな。」
オレは京夜に抱き付いた。
京夜の項に顔を寄せて匂いをスンスンと嗅いだ。
「颯、明日マジで健太から離れるなよ？」
「おう」


＊＊＊＊＊

翌日の放課後、オレはケン兄の腕に自分の腕を絡めて生徒会室の戸を開けた。
そしてすぐ閉めた。
「ケン兄、不審者がいるから帰るぞ！」
「転校生？」
「デザートドロボウだっ！」
モジャ男の正体を知った後で徐々に思い出した幼稚舎時代の記憶。
いつも一口食った後で横から奪い取って、ニヤニヤ気持ち悪い笑顔でオレのデザートを食ってた金髪碧眼の似非エセ王子。

フツフツと湧き上がる当時の怒りと悲しみ。
食い物デザートの恨み
絶対に許さない！！

オレがそう怒りを噛みしめていると、ガラリと戸が空いて、モジャ男が目の前に・・・
「颯っち！　俺の運命ゴフォッッ」
身の危険を感じて直ぐにモジャ男に蹴りを入れた。
呆気なく床に倒れて身悶えしているモジャ男を踏み越え、オレ達は生徒会室の中に入った。
「地獄に堕ちろ！」
ケン兄がオレの意をくんでモジャ男を廊下の方へ足で蹴飛ばし、戸を閉めた。