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あれからベッタリと私から離れる様子のないニアと、そんなニアを心底心配そうに見詰めるレイネルとグラオス。
私はそっと自身の肩に頭を乗せながら満足そうな顔をする彼女に苦笑を向けながら、コンコンというノックの音と共に部屋に入って来たジェラートとイグリスへと目を向ける。
すると、部屋に入って来るなりイグリスは私を見るなりこんな事を口にした。
「なんだなんだ、ティリア嬢ちゃん。グラオス坊ちゃん達に疑われてるのかい?」
ケラケラと心底面白いと言った風にお腹を叩きながら笑うイグリスと、そんなイグリスの発言を聞くなり勢いよくこちらに目を向けてくるその場にいるシルヴィー様とニアを除く全員。
そして、イグリスはそんなグラオス達を気にすることなく「で、なんだ。坊ちゃん達はそこにあるスープを俺が作ったって疑ってるのか?でも、残念だがそこにあるスープの作り方を教えることは勿論、そのスープを作る手伝いも俺は何一つしちゃいないぜ!」と腕を組みながら言い放った。
そうすれば間を開ける無く腕を組み、足を組み直しながら「証拠は?」とイグリスを睨み付けるグラオス。
昔から疑り深いのは私自身理解しているが、自分が疑われる側に回るなんて……。
ふぅと軽く溜息を吐けば「大丈夫ですか?」と首を傾けるニアと、溜め息を吐いた私の様子を見て「本当に坊ちゃんは困ったやつだ」と笑うイグリス。
彼は目の前で鋭い瞳をしているグラオスとレイネルを気にすることなく、隣にいるジェラードに目を向けてこう問掛ける。
「ジェラード。お前は一体どう思う?」
何故そこでジェラードが出てくるのだろう?
私は小さく首を傾け、ジェラードを見詰める。
すると、彼はほんの少しだけ間を開けてこう言った。
「……嘘ではないかも知れないと思っています」
「……その理由は?」
「……仕草や動作がティリアにそっくりだからとしか」
じっと交わる彼の赤い瞳と私の緑の瞳。
彼は暫くじっと私の瞳を見据えてから、小さく頷いたかと思うと豪快にも机にあったスープのお皿を一気に飲み干した。
「……ジェラード」
ポツリ、小さく彼の名前を呼べばほんの少しだけ微笑みながら「はい」と返事を返してくれる彼。
私はそんな彼に対して口元を片手で抑えると、再び泣き出しそうになるのを我慢して「ありがとう」と一言告げて微笑んだ。
私はそっと自身の肩に頭を乗せながら満足そうな顔をする彼女に苦笑を向けながら、コンコンというノックの音と共に部屋に入って来たジェラートとイグリスへと目を向ける。
すると、部屋に入って来るなりイグリスは私を見るなりこんな事を口にした。
「なんだなんだ、ティリア嬢ちゃん。グラオス坊ちゃん達に疑われてるのかい?」
ケラケラと心底面白いと言った風にお腹を叩きながら笑うイグリスと、そんなイグリスの発言を聞くなり勢いよくこちらに目を向けてくるその場にいるシルヴィー様とニアを除く全員。
そして、イグリスはそんなグラオス達を気にすることなく「で、なんだ。坊ちゃん達はそこにあるスープを俺が作ったって疑ってるのか?でも、残念だがそこにあるスープの作り方を教えることは勿論、そのスープを作る手伝いも俺は何一つしちゃいないぜ!」と腕を組みながら言い放った。
そうすれば間を開ける無く腕を組み、足を組み直しながら「証拠は?」とイグリスを睨み付けるグラオス。
昔から疑り深いのは私自身理解しているが、自分が疑われる側に回るなんて……。
ふぅと軽く溜息を吐けば「大丈夫ですか?」と首を傾けるニアと、溜め息を吐いた私の様子を見て「本当に坊ちゃんは困ったやつだ」と笑うイグリス。
彼は目の前で鋭い瞳をしているグラオスとレイネルを気にすることなく、隣にいるジェラードに目を向けてこう問掛ける。
「ジェラード。お前は一体どう思う?」
何故そこでジェラードが出てくるのだろう?
私は小さく首を傾け、ジェラードを見詰める。
すると、彼はほんの少しだけ間を開けてこう言った。
「……嘘ではないかも知れないと思っています」
「……その理由は?」
「……仕草や動作がティリアにそっくりだからとしか」
じっと交わる彼の赤い瞳と私の緑の瞳。
彼は暫くじっと私の瞳を見据えてから、小さく頷いたかと思うと豪快にも机にあったスープのお皿を一気に飲み干した。
「……ジェラード」
ポツリ、小さく彼の名前を呼べばほんの少しだけ微笑みながら「はい」と返事を返してくれる彼。
私はそんな彼に対して口元を片手で抑えると、再び泣き出しそうになるのを我慢して「ありがとう」と一言告げて微笑んだ。
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