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あれから数分待ったところで唐突に隣にいたホリーが『もしかして、さっきのって……』と呟いたかと思うと、彼は首を傾けた私に目を向けるなりこんな事を話し始めた。

『……オリヴィアは知ってると思うけど、僕らは自分達が睡眠に入る際に必ず自身の属性の部下にあたる精霊に自分の仕事内容を彼らの頭の中に叩き込む。その時に、全員が全員にその知識を叩き込むのは面倒臭いからその知識を叩き込む対象の精霊を一人に絞って知識を与えるってことをすることが稀にあるんだ。そしてさっきの精霊は恐らくだけどネスにとってのその唯一の対象だ』

彼はそこまで言い終えると一度その場から立ち上がり、眠るネスの隣に立つとそっと彼の額に触れてこう続けた。

『多分だけどさっきあの精霊がネスの中に入ったのは恐らくネスに与えられた力をネスに返す為。……成る程ね、通りで目覚めない訳だ』

私はそこで大袈裟に溜息を吐くホリーについ先程の彼の発言に対して「……通りでってどういうこと?」と呟く。

すると彼は少し考える素振りをした後にこう教えてくれた。

『まああれだ、さっきの精霊はネスからネス自身の持つ力の半分を与えられていて、ネスを起こすにはさっきの精霊からネスに貰った力をネス自身に返して貰わないとネスは何をしようが目覚めないっていう仕組みになってるんだ』

ここで私は内心で『なら最初からホリーがさっきの精霊を呼ぶなりなんなりしてネスに力を返すようにいえば良かったのでは……?』と思ったが、彼は私の顔を見るなりこう言ってきた。

『多分無理だよ?』

思わず自身の考えがバレた事に対して肩を揺らす私と、そんな私を見て『さっきのオリヴィアの顔は凄く分かりやすかったな~』と笑うホリー。

彼は「……無理ってどうして?」と聞いた私に対して人差し指を立てながらこう告げた。

『だって僕自身ネスが彼に力を与えてたのを知らなかったし、基本的に精霊は自身の属する属性の上位精霊のいうことしか聞かないものだよ。だからネスが精霊に力を与えてたことを知ってたとしても、ネスの力を半分持っている精霊には力では勝てても一度逃げられたりしたら流石の僕でも彼を探すことは不可能になる』

「ふーん」

私は目の前でドヤ顔をしながら笑う彼に呆れながらもその言葉に納得しつつ、そっとその場から立ち上がってネスの顔を覗き込む。

その際に私がネスの顔を覗き込んだと同時にネスの体の中からさっき彼の体内に入って行った精霊が出て来た。

精霊は私の目を見るなりこう告げた。

『……終わった』

そして、精霊がその言葉を言い終えるなりネスが小さく身体を捩ったかと思うと彼はゆっくりと目を覚ました。

『……』

ぼけーっとした表情で周りを見渡すネスと、そんな彼を見ながら泣きそうな顔をしながら彼を見るホリー。

次の瞬間、ネスが少しだけその場で身体を起こしたと同時にホリーが『ネス……っ!』と言いながらネスに首元に腕を回す。

しかし、抱き着かれた当の本人はホリーの事など気にせずにこちらを見たかと思うと少しだけ驚いた表情をした後に確かめるように私の名を呼んだ。

『……オリヴィア?』

私はこてりと首を傾けた彼に「ええ、オリヴィアよ。おはよう」と言う。

すると、ネスはふわりと微笑みながら『おはよう』と返事を一つしてそのままホリーを自身から引っぺがしてその場から立ち上がる。

ただ、この際ネス本人から引っぺがされても尚、彼の腰に腕を回しながら『ネスー!おはよう!!僕の名前も呼んでもいいんだよ!!!』と叫ぶホリー。

私はそれに対して内心でドン引きながら口元を引き攣らせると、鬱陶しそうな顔をしながら又もやホリーを腰から引き剥がそうとするネスに「頑張って」とだけ告げる。

ていうか、ネスも起きたことだし私は帰っていいよね?

私は一度ホリーに目を向けて「私は帰っても大丈夫?」と聞くと、彼からの『いいよ!じゃあ僕らも直ぐにそっちに行くね!!』と言ってきた彼に頷く。

「それじゃあ、また後でね」

『……うん』

『また後で!!』

私は一度その場で大きく深呼吸をすると頭の中で『起きたい』と念じると瞼の裏に感じたのは明るい光で、私は恐る恐る目を開く。

すると、目を開けるなり視界に入ったのは安堵の表情を浮かべるリリノアとウィングや精霊達で、私は口々に「お帰りなさいませ」や『よくやった』や『おかえりー!!』と言ってくれる彼等に「ありがとう、ただいま」と返すと大きく伸びを一つした。
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