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あれからまた数分が経ったところで唐突に自身の部屋の扉がノックされたのに気付いた私は慌ててウィングに本を本棚に直すように目配らせをすると、彼が本棚に本を直したのを確認してから扉の向こうへとこう声を掛けた。

「どうぞ」

すると、扉の向こうから姿を現したのはニコニコと笑顔を浮かべるアルバート王子とそんな笑顔の彼の後ろで憎々しげに彼を睨み付けるレイモンド。

私は射殺さんばかりの目でアルバート王子を睨み付けるレイモンドに苦笑を浮かべながら、再び私の目の前までやってくると椅子に座ったアルバート王子と立ったまま彼を睨み付けるレイモンドに対してこう告げた。

「レイモンド、貴方も座ったらどう?」

そうすればチラリとこちらに目を向けたかと思うと、大人しくアルバート王子の隣に腰掛けた彼。

私は目の前でクッキーに手を伸ばしたアルバート王子と不機嫌そうに腕を組んでいるレイモンドを見て、内心で『面倒臭いなぁ』なんて考えながら二人にバレないように小さく溜息を吐く。

その時、ふと私が二人に対して目を向けた際に唐突に又しても自身の部屋の扉がノックされたかと思うと扉の向こうからこんな声が掛かって来た。

「失礼致します、アルバート様。お付の方からそろそろ戻ってくるようにとのことです」

すると、アルバート王子は残念そうに椅子から立ち上がると扉の向こうに対して「分かった」と答えたかと思うと、こちらに向き直りながら同じく席を立った私の右手を取った。

そして、私の手の甲に軽く触れるだけのキスをすると「また近々会いに来るね」と告げるとレイモンドに対して「君にもまた会いに来るよ」とそのまま部屋から出て行った。

私は彼の行動に呆然としながらも私の真横まで飛んでくるなり自身の服の裾でゴシゴシと私の手の甲を拭うホリーの行動に対して、軽く彼をこつくとそのままこちらを向いたレイモンドに対して首を傾ける。

「……どうかしたの?」

「……いえ、別に。あの人が帰るならば僕も部屋に戻ります」

「……えぇ。分かったわ」

明らかに何か言いたいことがあるであろうにレイモンドはそのまま私の返事を聞くなり無言で扉の方に歩いて行くと、一度だけこちらを振り返って私と目が合うなり軽く頭を下げてそのまま部屋を出て行った。

そして、彼が去るなり閉じた扉を見ながら私は小さくこう呟く。

「一体なんなのよ……?」

確かに彼は何かを言いたそうだった様な尋ねたそうだった様な……。

けど、それを口に出すのを戸惑っているような気がした。

しかし、私がそこまで考えたところでポンッと私の肩を叩いて私の思考を現実に戻したのはホリー。

彼はニコニコと笑いながら最初に会った頃からずっと言っていることを口にする。

『彼が言いたいことは何か知らないけど、まずはなんでもいいからネスを起こしてよ!』

「はいはい、分かったわよ」

私はまたしても小さく溜息を吐くと、そのネスを起こすにはどうすればいいのかとホリーへと尋ねる。

「で、そのネスの起こし方は?そもそもどこにいるのよ?」

『うーんとね、オリヴィアの周りに闇魔法使える人っている?』

「闇魔法、ねぇ……」

私は顎に手を添えるとこの屋敷にそんな魔法が使える人物がいるかを考える。

そしてふと、私はとある人物のことを思い出した。

「いたわ、メイドのリリノアが確か闇魔法をほんの少しだけど使えたはずよ」

『よし、ならその人に頼んでほんの少しでもいいから闇魔法を使って貰って。そしたら後は僕がオリヴィアをネスの所に一時的に飛ばすから!』

「……危険、はないのよね?」

『さぁ?試した事ないから分かんないや!』

私は自身の周りをクルクルと浮遊しながら笑うホリーに苛立ちを感じながら、その背後で溜息を吐くウィングに目を向ける。

「危険性はないのよね?」

『……恐らく、な』

「ならいいわ」

私とウィングは顔を見合わせてお互いに肩をガクリと落とすと、リリノアを探す為に部屋から出たのだった。

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