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あれから直ぐに庭に行って木鋏を胸に抱きながら走って態と転けて見たのだけれど、お父様が邪魔をしてしまった。

私はお父様の使う浮遊魔法により宙を浮きながら、こちらを見て「一体どういうつもりなんだ」というお父様にこう告げた。

「お父様こそ今更一体どう言うつもりなのですか?」

「質問に質問で返すな。お前は何故死のうとしているんだ」

「それを話したところでお父様に理解は出来ませんわ。それよりも今までのように私のことなんて無視していればいいんですよ」

「……」

すると、そんな私の言葉に静かに黙り込んだお父様。

私はそんなにお父様に対して「早く魔法を解いて下ろしてください」と告げる。

でも、お父様はそんな私の言葉を無視してそのまま執務室へと足を向けたかと思うと私を宙に浮かせたまま執務を始めてしまったでは無いか。

「お父様、一体どういうつもりですの?私は早く地面に下ろしてくれと言っていますの」

「今のお前を地面に下ろすと何をするか分からない。そこで大人しくしていろ」

お父様はそう言いながら書類から目を離さず私にそれだけ言うと黙り込んでしまった。

本当に、本当に今更なんなの?

今まであれだけ存在しないもののように扱っておきながら、今更「何をするか分からないからそこで大人しくして」なんて。

私は宙に浮きながらその場で胡座をかき膝に肘を付いて恨めしそうな目をしながらお父様を睨み付ける。

その時、お父様はほんの少しだけこちらに目を向けたかと思うと黙り込んだままお父様を睨み付ける私にこう問いかけてきた。

「……お前は何故あんなことをする」

何故あんなことしているのか。

そんなのお父様に告げた所でどうせ貴方は私の話を聞いたところで何の興味もないんでしょう?

小さな頃にパーティーに参加してそこで私が虐められて泥塗れになった時にお父様から「何があった?」と聞かれはしたものの理由を言うと「そうか」の一言で終わり。

私が池で魚を眺めていた時に何やら急いでいたメイドがぶつかってきて池に落ちて死にかけた時も「なんでそうなった」とだけ聞いてきて、理由を言えば「そうか」の一言で涙ぐむ私を一瞥して終わり。

お父様は昔から「何があった?」や「どうした?」とは聞いてくれるものの、こちらがその理由を話したところで「そうか」の一言でいつも終わりなのだ。

それに私の記憶の中にある大好きだった漫画の中での悪役令嬢こと私が断罪された際に私がお父様に泣きながら縋ったところお父様が告げたのは「そうか、ならばもうお前はシェルハート家の人間では無い。荷物を纏めて出て行け」の一言。

私は深い青色をしたお父様の瞳を真っ直ぐに見詰めながら微笑みこう告げた。
 
「何時間も嬲られ息絶えるような殺され方をしたくはないんです。それだったら自殺の方がまだ死に方としてはマシですわ」

途端に弾かれたようにこちらを見て「誰がお前にそんなにことをすると言った」というお父様。

私はそんなお父様からの問い掛けにこう告げた。

「誰からも聞いていませんわ。これは未来のお話です」

「……予知夢を見たのか」

「えぇ、だから早く下ろしてください」

「……何故お前は自死を選ぶ」

「ふふっ、そんなことを聞いてどうするんですか。お父様も私の殺される未来に大いに関係してますし、なんだったら私の殺害に手を貸しているんですよ?」

「まさか、そんな……」

有り得ないという表情を目の前で浮かべるお父様。

でも、私はあの漫画が大好きだったから知っている。

漫画のとあるシーンの中で王子がこの屋敷来た際に暗い部屋の中でお父様が「あれは好きなようにして下さい」と言っている場面があったのだもの。

貴方は娘を売るんですよお父様。

私は片手で自身の顔を覆いながら何かを言うお父様を見詰めニコリと笑みを浮かべた。

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