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第一章
幕間 親子の会話
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「そういえば…」
王都から領地への帰り道の馬車の中、お母さんが何か思い出したかの様に話を振ってくる。
「な~に、お母さん?」
「ティア殿下と―」
その名を聞くとドクンと心臓が大きく跳ねた。
「あらっ、あらあら…」
「…なに?」
母さんが僕を何か面白い物でも見たかの表情で僕をガン見してくる。
「やっぱり、その顔は…」
「…だからなにっ?」
「ふ~ん、そういう事か」
だから何がって感じなんだけど…そんな事を思っていると馬車が止まり―
「襲撃だぁー!」
「賊だぁー!」
「陣形を整えよ!」
そんな声が辺りに響き渡る。金属音や悲鳴のようなものも聞こえてくる。なんだか怖い。
そんななかお母さんに仕える女性の一人が僕達が乗る馬車へと慌てて駆け寄ってきて「テレサ様!賊の襲撃です!」と、伝えに来た。
「もぅ~ せっかくいいトコだったのに…。仕方ないか。最近運動不足かなと思っていたのでちょうどいいわね。 私も出るわっ!」
「お母さん!?」
「大丈夫よ。ランスは大人しくここに居てね?すぐに終わらせてくるから…」
僕の頭を撫でると剣を片手にお母さんは馬車の外へと飛び出した。
♢
「貴女達は私が戻るまでランスが乗るこの馬車をお願いね?」
「「「「「はっ!我が命に換えましても」」」」」
馬車のすぐ傍からそんなお母さんの声と王家から派遣されてきた騎士団の人達の声が聞こえてきた。その直後…
「聞けぇー!そなたら、我らが公爵家と知っての狼藉か?」
初めて聞くお母さんの大きな声にビックリしてしまった。お母さんはいつも優しく声をかけてくれるからだ。
「勿論知ってる。あんた…テレサ・ド・デネブだろ?」
聞いた事がない女性の声が聞こえてきた。悪い人の声だろうか?
「そこにあんたの息子がいるだろう?」
僕の事っ!?
「なるほど。どこからか息子の事を嗅ぎつけてきたのね?私の大切な息子を狙って来るとは誰かに依頼でもされたのかしら?」
「依頼なんてされてない。ただ私達は男が欲しいだけだ。それに小さい頃から仕込めば好みの男に育てられるだろうし、男を独占出来るだろう?」
仕込むって何だろう?
「…そうなのね…。そういうくだらない事の為に私のランスを奪おうとしたのね?」
「くだらないだとっ!」
「ええ。くだらないわね。何か間違ってて? ところで…私がなんて呼ばれてるかは調べて来なかったの?」
「あん? 何言って…」
「黒い閃光」
お母さんがそう言ったのが聞こえた。お母さんって黒い閃光って呼ばれてるのか。そしてそれっきり、お母さんと話をしていた女性の声はしなくなった。たぶんお母さんが悪者をやっつけたんだと思った。
そしてあんなに金属音や人の声で騒がしかった馬車の外が次第に静かになっていき、その後お母さんを誉める言葉が次々と耳に入ってくる。
「流石テレサ様」
「お疲れ様でした」
「黒い閃光は健在だな」
「一瞬で3人も仕留めてらしたしな」
「返り血を一滴も浴びていらっしゃらない」
「凄すぎる…」
そして戻ってきたお母さんに、
「さっきお母さんが悪者と話しているのが聞こえたんだけど、仕込むって何?」
「忘れなさい!」
「でも…」
「いいから!それはよくない言葉なの。ランスなら分かるわね?」
それは初めて見るお母さんの表情だった。まるで他の事は言わせないという迫力ある表情。
そんなお母さんに言える事は…
「…は、はい」
『はい』しかなかったのだった。
王都から領地への帰り道の馬車の中、お母さんが何か思い出したかの様に話を振ってくる。
「な~に、お母さん?」
「ティア殿下と―」
その名を聞くとドクンと心臓が大きく跳ねた。
「あらっ、あらあら…」
「…なに?」
母さんが僕を何か面白い物でも見たかの表情で僕をガン見してくる。
「やっぱり、その顔は…」
「…だからなにっ?」
「ふ~ん、そういう事か」
だから何がって感じなんだけど…そんな事を思っていると馬車が止まり―
「襲撃だぁー!」
「賊だぁー!」
「陣形を整えよ!」
そんな声が辺りに響き渡る。金属音や悲鳴のようなものも聞こえてくる。なんだか怖い。
そんななかお母さんに仕える女性の一人が僕達が乗る馬車へと慌てて駆け寄ってきて「テレサ様!賊の襲撃です!」と、伝えに来た。
「もぅ~ せっかくいいトコだったのに…。仕方ないか。最近運動不足かなと思っていたのでちょうどいいわね。 私も出るわっ!」
「お母さん!?」
「大丈夫よ。ランスは大人しくここに居てね?すぐに終わらせてくるから…」
僕の頭を撫でると剣を片手にお母さんは馬車の外へと飛び出した。
♢
「貴女達は私が戻るまでランスが乗るこの馬車をお願いね?」
「「「「「はっ!我が命に換えましても」」」」」
馬車のすぐ傍からそんなお母さんの声と王家から派遣されてきた騎士団の人達の声が聞こえてきた。その直後…
「聞けぇー!そなたら、我らが公爵家と知っての狼藉か?」
初めて聞くお母さんの大きな声にビックリしてしまった。お母さんはいつも優しく声をかけてくれるからだ。
「勿論知ってる。あんた…テレサ・ド・デネブだろ?」
聞いた事がない女性の声が聞こえてきた。悪い人の声だろうか?
「そこにあんたの息子がいるだろう?」
僕の事っ!?
「なるほど。どこからか息子の事を嗅ぎつけてきたのね?私の大切な息子を狙って来るとは誰かに依頼でもされたのかしら?」
「依頼なんてされてない。ただ私達は男が欲しいだけだ。それに小さい頃から仕込めば好みの男に育てられるだろうし、男を独占出来るだろう?」
仕込むって何だろう?
「…そうなのね…。そういうくだらない事の為に私のランスを奪おうとしたのね?」
「くだらないだとっ!」
「ええ。くだらないわね。何か間違ってて? ところで…私がなんて呼ばれてるかは調べて来なかったの?」
「あん? 何言って…」
「黒い閃光」
お母さんがそう言ったのが聞こえた。お母さんって黒い閃光って呼ばれてるのか。そしてそれっきり、お母さんと話をしていた女性の声はしなくなった。たぶんお母さんが悪者をやっつけたんだと思った。
そしてあんなに金属音や人の声で騒がしかった馬車の外が次第に静かになっていき、その後お母さんを誉める言葉が次々と耳に入ってくる。
「流石テレサ様」
「お疲れ様でした」
「黒い閃光は健在だな」
「一瞬で3人も仕留めてらしたしな」
「返り血を一滴も浴びていらっしゃらない」
「凄すぎる…」
そして戻ってきたお母さんに、
「さっきお母さんが悪者と話しているのが聞こえたんだけど、仕込むって何?」
「忘れなさい!」
「でも…」
「いいから!それはよくない言葉なの。ランスなら分かるわね?」
それは初めて見るお母さんの表情だった。まるで他の事は言わせないという迫力ある表情。
そんなお母さんに言える事は…
「…は、はい」
『はい』しかなかったのだった。
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