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第一部
レイニーとメルル
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「──それならウチがその子の奴隷契約の解除をさせてもらいまスッ♪ 」
「えっ…と…君は?」
「あっ!?ちょっと待ってっス!まずは領主様に挨拶させて下さいっス!」
あ、ああ。確かに。ティアはこの町の領主だし、先に挨拶しないと彼女からしたらマズイのか。腰まである長いブロンドの髪の女性はティアに対して片足を斜め後ろの内側に引くと、もう片方の膝を軽く曲げて、背筋を伸ばしたままお辞儀をする。いわゆるカーテシーって奴だ。
「領主ティア様。はじめまして。わたくしはドレインの孫のレイニー・シュバルツと申します。先日わたくしの祖父のドレインよりお話を聞いていらっしゃると思われますが、トヨカズ・ハヤブサ様の手足になり、この町で商売をしたいと思っていますので以後宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
ティアとの挨拶が終わると俺にも彼女はカーテシーをキめる。俺にはそんな所作はいらないからね?
「はじめましてハヤブサ様。ウチの事はレイニーと呼んで下さいっス!話し方はこれが素なのでどうかこれで勘弁して欲しいっス!」
「俺にはそんな大層なアレはいらないですよ?気にしないで下さい。逆に素の方がありがたいです」
「助かるッス!」
「それで…この子の奴隷契約の解除の件なんだけど」
「そうでした…それはさっき言った通りっスッ!ウチに任せて欲しいッス」
彼女はそう言うなり、奴隷の子に向けて指パッチン。パチンと音が鳴り響くと同時に奴隷の子の体が淡い緑色の光に包まれる。光に包まれたのは1秒か2秒くらいだ。
「これで奴隷契約は解除されたッス!」
奴隷契約が解除されたという事で俺は約束した通り男性にマヨネーズが入った小樽を渡した。たぶん男性はまたすぐに奴隷を間違いなく買うだろう。男性自身が奴隷はいつでも手に入るみたいな事を言ってたし、労働力としてこの男性には奴隷が必要みたいだしな…。だから…一言だけ添えさせてもらった。出来れば新しく契約した奴隷には鞭を使ったり、暴力を使わないで欲しいと。男性は少し戸惑った表情をみせたものの、必要な事以外ではそういう事はしないと了承はしてくれた。
『──立場場奴隷に舐められるわけにはいきませんし、中には力で抑え込まないと言う事を聞かない奴隷もいますからね…』
『…分かってるよ…この世界じゃあそれが普通なんだという事は…。それに…元いた世界でもそういうのはあったし、綺麗事ばかりじゃあないのも分かってるよ…』
『──とりあえず彼は大丈夫ですよ。マスターが女神様と関わりがあるという事を知っていますからね。さあ、マスター。湿っぽいのはなしです!マスターが救った子に声を掛けて上げてくださいな!』
『…そうだな。まあ、救ったなんて大層なもんじゃあないんだけどな…』
「えっ…と…名前から聞いてもいいかい?」
俺は犬耳の子の傍にしゃがみ込んでそう問いかけた。その際ビクっとしたのは暴力か鞭を振るわれると思ったんだろうな。
「約束するよ。俺は暴力を振るわないし、ここにいる女性二人も君にそんな事しない。それに君に万が一暴力を振るおうとする奴がいるなら俺が止めるからさぁ」
「…あの…ボクの名前…メルル」
「メルルだね。良い名前だね」
「…うん…ママがつけてくれた…」
「そっかぁ…」
『サチ…。メルルの両親の事は何か分かったりするか?』
『──すでに亡くなっていますね…。魔物に襲われた際にこの子を護る為に…』
『そっかぁ…この子も…大切な人達を亡くしてるんだな…』
『──マスター…』
「あのさぁ…メルルが良かったらなんだけど、俺と一緒に住まない?」
「…一緒に…?」
「そう。美味しいご飯もお腹いっぱい食べさせてあげられるし、君が何かやりたい事が見つかるまででもいい、俺にメルルの御世話をさせて欲しいんだ。俺がそうしたいからするだけだから恩とかそういうのも感じなくていいしね」
「じゃあ…お兄ちゃんと…住む…」
「…そっかぁ…良かったよ。そういうわけでティア。悪いんだけど…」
「はい。私は構いませんよ」
「ありがとう」
「いえ」
「ほならウチは先ずこの町に構える店の場所から探す事にするっス!店ができるまでは宿屋にいるので何かあればいつでも言って欲しいッス!」
「了解。ありがとうね。んで、ちょっと気になったんで聞くんだけど…それにしてもレイニーは来るのが早かったよね?どうやって来たの?もっと日にちがかかるとばかり思ってたから気になって」
「そんな事ッスか!それは知り合いの竜騎士の竜に乗せてもらってウチだけ急ぎ来たっス!」
空からかぁ…。しかも竜騎士とは…道理で早いわけだ…。今度俺も乗せてもらおうかな…。機会があればだけど。まあ、そんなわけでレイニーは早速店を建てる場所を探しに向かったんだ。
「じゃあ…俺達も屋敷に戻ろうか」
「そうですね」
「…うん」
「その前にメルルに回復魔法をかけないとな。【ハイヒール】!」
「傷が…」
「回復魔法まで使えるのですね。それにしても傷が全て消えてるなんて…」
「この間覚えたんだ。あっ…それから、ティア」
「は、はい、なんでしょう?」
「いつもありがとうね?こっちに来てから御世話になりっぱなしだし」
「気になさらないで下さい。それにトヨカズ様の御世話を申し出たのは私の方なんですよ?」
「だから…その…お礼というわけではないんだけど…」
「?」
「これ…さっき買っておいたから…良かったら使ってくれる?」
俺はそう言ってヘアアクセサリーをティアに手渡した。ティアがサミーちゃんに色々と言われてアタフタしている時に買っておいたんだよな。エスコートのスキルが発動していたからだろうな。普段の俺ならそんな風に気が利かないだろうしね。
「…へっ…あ、あにょう…あ、ありがとうございます…た、大切にしますね」
「うん。じゃあ…戻ろうか…」
「は、はい」
回復魔法をかけて傷はなくなっているのだが、心配なのでメルルを抱えて屋敷へと戻るとリーンとリカも依頼を終えて戻ってきていた。余談になるけどリーンとリカにもヘアアクセサリーをプレゼントしたらとても喜んでもらえた。エスコートのスキルも最初はどうなるかと思ったが、こういうのはいいかも知れない。キザな言葉は二度と言いたくないけどね…。
「えっ…と…君は?」
「あっ!?ちょっと待ってっス!まずは領主様に挨拶させて下さいっス!」
あ、ああ。確かに。ティアはこの町の領主だし、先に挨拶しないと彼女からしたらマズイのか。腰まである長いブロンドの髪の女性はティアに対して片足を斜め後ろの内側に引くと、もう片方の膝を軽く曲げて、背筋を伸ばしたままお辞儀をする。いわゆるカーテシーって奴だ。
「領主ティア様。はじめまして。わたくしはドレインの孫のレイニー・シュバルツと申します。先日わたくしの祖父のドレインよりお話を聞いていらっしゃると思われますが、トヨカズ・ハヤブサ様の手足になり、この町で商売をしたいと思っていますので以後宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」
ティアとの挨拶が終わると俺にも彼女はカーテシーをキめる。俺にはそんな所作はいらないからね?
「はじめましてハヤブサ様。ウチの事はレイニーと呼んで下さいっス!話し方はこれが素なのでどうかこれで勘弁して欲しいっス!」
「俺にはそんな大層なアレはいらないですよ?気にしないで下さい。逆に素の方がありがたいです」
「助かるッス!」
「それで…この子の奴隷契約の解除の件なんだけど」
「そうでした…それはさっき言った通りっスッ!ウチに任せて欲しいッス」
彼女はそう言うなり、奴隷の子に向けて指パッチン。パチンと音が鳴り響くと同時に奴隷の子の体が淡い緑色の光に包まれる。光に包まれたのは1秒か2秒くらいだ。
「これで奴隷契約は解除されたッス!」
奴隷契約が解除されたという事で俺は約束した通り男性にマヨネーズが入った小樽を渡した。たぶん男性はまたすぐに奴隷を間違いなく買うだろう。男性自身が奴隷はいつでも手に入るみたいな事を言ってたし、労働力としてこの男性には奴隷が必要みたいだしな…。だから…一言だけ添えさせてもらった。出来れば新しく契約した奴隷には鞭を使ったり、暴力を使わないで欲しいと。男性は少し戸惑った表情をみせたものの、必要な事以外ではそういう事はしないと了承はしてくれた。
『──立場場奴隷に舐められるわけにはいきませんし、中には力で抑え込まないと言う事を聞かない奴隷もいますからね…』
『…分かってるよ…この世界じゃあそれが普通なんだという事は…。それに…元いた世界でもそういうのはあったし、綺麗事ばかりじゃあないのも分かってるよ…』
『──とりあえず彼は大丈夫ですよ。マスターが女神様と関わりがあるという事を知っていますからね。さあ、マスター。湿っぽいのはなしです!マスターが救った子に声を掛けて上げてくださいな!』
『…そうだな。まあ、救ったなんて大層なもんじゃあないんだけどな…』
「えっ…と…名前から聞いてもいいかい?」
俺は犬耳の子の傍にしゃがみ込んでそう問いかけた。その際ビクっとしたのは暴力か鞭を振るわれると思ったんだろうな。
「約束するよ。俺は暴力を振るわないし、ここにいる女性二人も君にそんな事しない。それに君に万が一暴力を振るおうとする奴がいるなら俺が止めるからさぁ」
「…あの…ボクの名前…メルル」
「メルルだね。良い名前だね」
「…うん…ママがつけてくれた…」
「そっかぁ…」
『サチ…。メルルの両親の事は何か分かったりするか?』
『──すでに亡くなっていますね…。魔物に襲われた際にこの子を護る為に…』
『そっかぁ…この子も…大切な人達を亡くしてるんだな…』
『──マスター…』
「あのさぁ…メルルが良かったらなんだけど、俺と一緒に住まない?」
「…一緒に…?」
「そう。美味しいご飯もお腹いっぱい食べさせてあげられるし、君が何かやりたい事が見つかるまででもいい、俺にメルルの御世話をさせて欲しいんだ。俺がそうしたいからするだけだから恩とかそういうのも感じなくていいしね」
「じゃあ…お兄ちゃんと…住む…」
「…そっかぁ…良かったよ。そういうわけでティア。悪いんだけど…」
「はい。私は構いませんよ」
「ありがとう」
「いえ」
「ほならウチは先ずこの町に構える店の場所から探す事にするっス!店ができるまでは宿屋にいるので何かあればいつでも言って欲しいッス!」
「了解。ありがとうね。んで、ちょっと気になったんで聞くんだけど…それにしてもレイニーは来るのが早かったよね?どうやって来たの?もっと日にちがかかるとばかり思ってたから気になって」
「そんな事ッスか!それは知り合いの竜騎士の竜に乗せてもらってウチだけ急ぎ来たっス!」
空からかぁ…。しかも竜騎士とは…道理で早いわけだ…。今度俺も乗せてもらおうかな…。機会があればだけど。まあ、そんなわけでレイニーは早速店を建てる場所を探しに向かったんだ。
「じゃあ…俺達も屋敷に戻ろうか」
「そうですね」
「…うん」
「その前にメルルに回復魔法をかけないとな。【ハイヒール】!」
「傷が…」
「回復魔法まで使えるのですね。それにしても傷が全て消えてるなんて…」
「この間覚えたんだ。あっ…それから、ティア」
「は、はい、なんでしょう?」
「いつもありがとうね?こっちに来てから御世話になりっぱなしだし」
「気になさらないで下さい。それにトヨカズ様の御世話を申し出たのは私の方なんですよ?」
「だから…その…お礼というわけではないんだけど…」
「?」
「これ…さっき買っておいたから…良かったら使ってくれる?」
俺はそう言ってヘアアクセサリーをティアに手渡した。ティアがサミーちゃんに色々と言われてアタフタしている時に買っておいたんだよな。エスコートのスキルが発動していたからだろうな。普段の俺ならそんな風に気が利かないだろうしね。
「…へっ…あ、あにょう…あ、ありがとうございます…た、大切にしますね」
「うん。じゃあ…戻ろうか…」
「は、はい」
回復魔法をかけて傷はなくなっているのだが、心配なのでメルルを抱えて屋敷へと戻るとリーンとリカも依頼を終えて戻ってきていた。余談になるけどリーンとリカにもヘアアクセサリーをプレゼントしたらとても喜んでもらえた。エスコートのスキルも最初はどうなるかと思ったが、こういうのはいいかも知れない。キザな言葉は二度と言いたくないけどね…。
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