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〘133〙春夏冬中
しおりを挟む例えるならば、箪笥のなかに整頓された哥の着物のにおい、例えるならば、非のうちどころがない男に愛される子ども、例えるならば、永遠の、ほんの一瞬を過ぎゆく幸福の光……、夜の枕席で、アカラギと性交渉におよぶハルチカは、闇のなかで拾った燐寸に火を灯して、その眼を見るため、男の口唇を見るため、うっとりと顔をながめた。熱い欲望のしるしが体内に挿入されると、夢のようなまぼろしは、流れ星となって夜空に散りばめられた。
「あァぁッ! ミ、ミハルさん……ッ、好き……、大好き……、つァッ!? やぁァッ……! す……ご……、そんな……這入ってきたら、おれ、頭がおかしくなっちゃうよぉ……ッ!」
ことばで否定しても、絶対領域にアカラギの男根を導いてしまうハルチカは、尖端で最奥を突かれるたび、淫らな声を洩らした。誰にも破れない精神的な領域に達することができるアカラギは、絶妙な腰つきで刺激と快楽をあたえつづけ、ハルチカを昇天させた。
「ゼェハァ、ゼェハァ……! ミハルさぁん……! やめ……ないでぇ……ッ!!」
淫乱と化すハルチカは、アカラギが腰を引き抜くと、離れていく躰に腕をのばしておねだりした。「ほしい……、ミハルさんが、もっとほしい! 行かないで!」
「ハルチカ、深呼吸しろ。」
「もう一回……! お、お願い……、もう一回だけ、ミハルさんがほしい……!」
「おちつけ。まずは休憩しろ。そのあとで呉れてやる。」
アカラギはハルチカの胸に手のひらを置き、呼吸を見まもった。確かな感触が肌のうえに載っている。「フゥ、フゥッ」と、短く息を吐きながら、なんとか平静さを取りもどすハルチカは、たったいちどの肛交で連続絶頂した。アダシノに五回目の挿入(と中出し)を要求されたとき、ぜったい無理だと拒絶反応を示した躰も、アカラギのまえでは底ナシ状態である。あと一回どころか、何十回でもイケると思ったハルチカは、急激に恥ずかしくなった。妙におとなしくなったと思えば、「うわヮッ!」と奇声をあげるため、アカラギは不安定な情緒に寄り添うしかない。素肌に着物を羽織り、裸身のハルチカを抱き寄せた。
「そんなに錯乱してどうする。本気で俺がほしいのか、本当は忌避したいのか、わからないやつだな。」
「おれの本気……、わかってもらえるまで、云ってもいいの……?」
「恨みごとなら勘弁しろよ。」
「狡い、逃げた!」
頬を膨らませて拗ねるハルチカだが、アカラギの腕のなかは心地よく、眠りについてしまいそうになる。もっと話がしたいハルチカだが、布団のうえに躰を引きもどされた。
「お望みどおり呉れてやる。」
「哥さ……、待って……!」
「待たない。こんどは、おまえから載ってこいよ。」
「え? わァッ!?」
アカラギに百閉を強要されてうれしく思ういっぽう、もう少し会話の時間がほしかったハルチカは、「う、嘘、うそ……、あァぁ……!」と喚きながら腰を落とした。二回目の性交に発展して、ようやくタカムラの指示とは関係なしに、アカラギと肌を合わせる状況に意識がおよんだ。それは、夜鷹坂にきて初めての経験だった。
「に、哥さぁん……!」
アカラギの胴体にまたがって肉体をつなげるハルチカは、承認欲求が強くなりすぎていた。自己矛盾という悪循環から抜けだす方法は、他者に依存せず、経験を積んで己を支える基礎となる土台を築き、自信をもつことである。
「あぁ、そっか……、ミハルさんは、おれの……、ハァハァ……、おれのために……、うッ、うあァぁッ!!」
自重がかかる腰を下から突きあげられたハルチカは、三回目の絶頂を遂げた。
✓つづく
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