119 / 200
〘119〙枕席にて
しおりを挟む夜鷹坂の客間が賑わうころ、控えの間へやってきたハルチカは、御簾の向こう側でしのび泣くモモコの声に気をとられ、時報を聞き逃した。廊下を歩いてくるアカラギは、ハルチカを壺の間へと呼びだす。
「初見の客だ。しっかり相手をしろ。」
「……はいよ。」
前回の過失を認めたハルチカは、学習の機会をあたえられ、見ず知らずの男と枕席に侍る。思いのほか若い男で瓜実顔をしていたが、男娼との性行為は素人につき、不慣れな手つきで肌を愛撫された。ハルチカは(アカラギに指摘されたとおり)濡れることに集中した。男娼の体液は、潤滑剤の代わりとなるため、ハルチカが「あん、あん」悦がってみせると、男は興奮して勃起した。
「ハァハァ……、お客様、どんな体位がよろしいですか、」
「そんなことより……、本当に挿れてもいいんだな?」
「ふふっ、もちろんですとも。それじゃあ……、はい、どうぞ。」
ハルチカは上向いて寝そべり、開口部がよく見えるよう、パカッと股をひらいた。「おおっ!」と歓喜の声をあげる若い男は、無遠慮な勢いで欲望の肉塊をグチュッと挿入すると、魅惑の自己充足に没頭した。腰つきはイマイチだが、ハルチカはあえぎ声を洩らし、上級男娼を演じきった。廊下にいて、受け身の息づかいを聞き取るアカラギは、枕席での具合をよしとして、ハルチカの適性を改めた。
見送りをすませて三階にもどったアカラギは、泣きやまないモモコを放っておき、まずはハルチカの事後処理に向かった。
「……哥さん、」
「おまえ、じぶんでやったのか?」
「……う、うん。おれは平気だから、モモさんのところに行ってあげて、」
ハルチカは、指を使って客人の精液を掻きだしていた。アカラギは、すぐさま股をのぞき込み、きちんと排出できているか確認した。クチュッと、中指だけ挿入されたハルチカは、思わず「あㇵん!」と、淫らな反応を示した。
「に、哥さん? 残りがあるなら、じんぶんでやっておくから……、早くモモさんを……、」
「爪を当てたな。出血している。」
「え?」
「粘膜の直腸部分に知覚神経はないが、肛門部の皮膚が少し切れている。……見ろ。」
アカラギはハルチカの体内から中指を引き抜くと、目の高さまで持ちあげた。血液まじりの体液が付着している。余計な真似をして内部を傷つけてしまったハルチカは、ついに恐怖のお仕置き部屋へ呼びだされることになる。
「軽度だが、感染症予防のため、性行為をさせるわけにはいかない。完治するまで、おまえを壺の間に案内できなくなった。」
アカラギの到着を待たず、勝手な真似をしたハルチカは、ものすごく後悔した。モモコを泣かせた原因は、おそらく目の前の人物である。告白してふられたのではないかと思うハルチカは、今、アカラギが寄り添うべき相手は、傷ついたモモコだと考えた(じぶんの尻穴を傷モノにしてまで……)。
「哥さん、た、助けて……、」
タカムラに報告されては、体罰に処される。ハルチカは顔面蒼白となるが、アカラギは無情にも「あきらめろ。」と首を横にふる。ハルチカは、仲間を放っておけないヒョウエの気持ちに共感したが、モモコのためにできることはなにもなかった。不埒なじぶんこそ、浅ましくて泣きたくなるが、布団にうずくまり、哥の顔を見ないようにした。どんなふうにアカラギを頼ればいいのか、ハルチカは迷っていた。無条件で甘えたくなる感情が身に沁みた。
アカラギは小さく溜め息を吐き、廊下を移動すると、いつまでも泣いて仕事にならないモモコに「いいかげんにしてくれ。」と声をかけ、しかたなく御簾越しに励ました。
✓つづく
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる