曙花町男娼夜鷹坂

み馬

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〘119〙枕席にて

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 夜鷹坂の客間が賑わうころ、控えの間へやってきたハルチカは、御簾の向こう側でしのび泣くモモコの声に気をとられ、時報を聞き逃した。廊下を歩いてくるアカラギは、ハルチカを壺の間へと呼びだす。

「初見の客だ。しっかり相手をしろ。」

「……はいよ。」

 前回の過失を認めたハルチカは、学習の機会をあたえられ、見ず知らずの男と枕席に侍る。思いのほか若い男で瓜実顔うりざねがおをしていたが、男娼との性行為は素人につき、不慣れな手つきで肌を愛撫あいぶされた。ハルチカは(アカラギに指摘されたとおり)濡れることに集中した。男娼の体液は、潤滑剤の代わりとなるため、ハルチカが「あん、あん」悦がってみせると、男は興奮して勃起した。

「ハァハァ……、お客様、どんな体位がよろしいですか、」

「そんなことより……、本当にれてもいいんだな?」

「ふふっ、もちろんですとも。それじゃあ……、はい、どうぞ。」

 ハルチカは上向いて寝そべり、開口部がよく見えるよう、パカッと股をひらいた。「おおっ!」と歓喜の声をあげる若い男は、無遠慮な勢いで欲望の肉塊かたまりをグチュッと挿入すると、魅惑の自己充足に没頭した。腰つきはイマイチだが、ハルチカはあえぎ声を洩らし、上級男娼を演じきった。廊下にいて、受け身の息づかいを聞き取るアカラギは、枕席での具合をよしとして、ハルチカの適性を改めた。

 見送りをすませて三階にもどったアカラギは、泣きやまないモモコを放っておき、まずはハルチカの事後処理に向かった。

「……にいさん、」

「おまえ、じぶんでやったのか?」

「……う、うん。おれは平気だから、モモさんのところに行ってあげて、」

 ハルチカは、指を使って客人の精液を掻きだしていた。アカラギは、すぐさま股をのぞき込み、きちんと排出できているか確認した。クチュッと、中指だけ挿入されたハルチカは、思わず「あㇵん!」と、淫らな反応を示した。

「に、哥さん? 残りがあるなら、じんぶんでやっておくから……、早くモモさんを……、」

「爪を当てたな。出血している。」

「え?」

「粘膜の直腸部分に知覚神経はないが、肛門部の皮膚が少し切れている。……見ろ。」

 アカラギはハルチカの体内から中指を引き抜くと、目の高さまで持ちあげた。血液まじりの体液が付着している。余計な真似をして内部を傷つけてしまったハルチカは、ついに恐怖のお仕置き部屋へ呼びだされることになる。

「軽度だが、感染症予防のため、性行為をさせるわけにはいかない。完治するまで、おまえを壺の間に案内できなくなった。」

 アカラギの到着を待たず、勝手な真似をしたハルチカは、ものすごく後悔した。モモコを泣かせた原因は、おそらく目の前の人物である。告白してふられたのではないかと思うハルチカは、今、アカラギが寄り添うべき相手は、傷ついたモモコだと考えた(じぶんの尻穴けつを傷モノにしてまで……)。

「哥さん、た、助けて……、」

 タカムラに報告されては、体罰に処される。ハルチカは顔面蒼白となるが、アカラギは無情にも「あきらめろ。」と首を横にふる。ハルチカは、仲間を放っておけないヒョウエの気持ちに共感したが、モモコのためにできることはなにもなかった。不埒なじぶんこそ、浅ましくて泣きたくなるが、布団にうずくまり、あにの顔を見ないようにした。どんなふうにアカラギを頼ればいいのか、ハルチカは迷っていた。無条件で甘えたくなる感情が身に沁みた。

 アカラギは小さく溜め息を吐き、廊下を移動すると、いつまでも泣いて仕事にならないモモコに「いいかげんにしてくれ。」と声をかけ、しかたなく御簾越しに励ました。


✓つづく
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