曙花町男娼夜鷹坂

み馬

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〘76〙伸びしろ

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 週末の壺の間で、アカラギと性交中のハルチカは、「はァんッ」と息を洩らし、体内領域に挿入された異質な温もりに、素直にがった。

「んッ、……んッ、……あんッ、哥さ……ん……、あㇵんッ、すご……く……、い……いいッ! あァんッ!」

 右の乳頭を吸いながら左の乳首を指でつまんで刺激をあたえ、ゆさゆさと腰を動かすアカラギは、ハルチカの躰に、どこにも余計な力がはいっていないことを感じた。とほうもなく無防備だが、アカラギから受ける外的な刺激に従順な反応を示す姿は、淫らというより、なまめかしく、興奮の度合いが増していく。

「あッ!? あんッ、あんッ! 哥さん……、いきなり、そんなにきたら……、だ、だめぇ!」

 浅いところで快感にひたるハルチカだったが、アカラギの腰つきが激しくなると、がまんできずに精液を放出した。ハルチカ自身は無意識とはいえ、アカラギによる性器の挿入を拒む理由などないため、細胞レベルで受け身の体質を発揮して、深いところまでつながることができた。

「あッ、あッ! ひ、ひぁッ、……なに……これ……、あッ、あッ!? ……哥さん……ッ、哥さぁん……ッ!」

 最奥を突かれるハルチカは、極上の刺激と快楽を求めて、アカラギの腕に身をゆだねた。まったく無抵抗の状態となったハルチカを、存分にあえがせるアカラギは、優越感に支配されそうになる意識をふりはらい、性教育であることを重視した。

「おまえ、こんな奥まで客にも突かせているのか、」

「……え? な、なにか云った?」

「少しは自衛しろ。さすがに、これほどまでとは云ってない。」

「な、なんの話? あッ、あんッ!」

 アカラギの手応えは充分すぎるため、過度な肉体奉仕を危惧した。それどころではないハルチカは、なにを注意されたのかわからず、いつも以上に淫らな状態で、今にも昇天寸前となる。実際、アカラギほど深く内奥ないおうを突ける人物はいない。それは、玉茎の長さや太さといった外的な要因ではなく、相性の問題だった。ハルチカの神経細胞は、アカラギの熱量を感知すると、無条件で降伏モードに突入してしまう。多少の生理的な反発は起きても、精神面に余裕がみられなくても、肉体は敏感に反応した。

「……哥さん……の、好き……に……してぇ……! あぁァあぁーッ!!」

 腹底へ中出しされるハルチカは、いっそ、世界がこわれてしまえばいいと思った。他者の将来など考えない。アカラギとふたりで瓦礫がれきのうえに立つハルチカは、世界中で、いちばんのしあわせ者である。そうして、好きな男と、イチから未来を構築するのだ。そんな幻をみて「ふふふ……」と笑みを浮かべるハルチカは、目のまえのアカラギにしがみつき、けっして、離れたくないと願った。

 ハルチカの肉体改造は、当初の手ほどきで完了していたが、タカムラが示唆しさする欠点は、不安定になりやすい感情や、ハルチカの心の成長であり、アカラギとの親密な関係を継続することで、補修は可能だった。ハルチカの伸びしろは、まだ多方面に残されている。

「ハァハァッ、……んッ、くぅッ!」

 肉体の結合を解かれたハルチカは、横向きに背中を丸めて、腹部を両手で包みこんだ。異変に気づいたアカラギは「どうした?」といって、ふるえる肩に手を添えた。すると、ハルチカは、ニコッと笑って見せた。

「おなかのなかにある哥さんの精液を、一滴いってきもこぼしたくないなと思って……、」

 逆流を防ぐためのポーズらしい。心配して声をかけたアカラギは、「変態め。」と呆れ顔になる。汗ばむ躰を手ぬぐいで拭くと、つむぎ単衣の袖に腕をとおし、あざかな手つきで角帯を結んだ。


✓つづく
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