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〘13〙ヒョウエ
しおりを挟む夜鷹坂には、六人の男娼がいる。そのなかでも(ハルチカと仲良しになる)雹ヱというクセ毛で短髪の青年は楼主タカムラの子飼いだった。
「ダンナ、ダンナ! ちんこ、舐めさせてくれよ!」
「ヒョウか。なんだ急に、」
「おれが男娼になってしばらく経つってのに、枕席に呼んでくれないんだもん。こっちから来ちゃった。」
自室の長椅子で帳簿をながめていた楼主のところへ、十八歳のヒョウエがあらわれるなり、積極的な態度で性行為に発展する。
「なにかあったのか。」
「ん~? なにもないけど……。強いて云えば、客のちんこが不味かったから、口直し?」
「ふっ、云ってくれるな、雹ヱ。ならば呉れてやる。来い。」
使者の対応や出張(商談)の多いタカムラは、常に高級スーツを身につけていた。長い足を組んでいたが革製のベルトを外し、ズボンのまえをひらくと、ヒョウエが猫のようにすり寄ってきた。「ダンナのちんこ、久しぶりに見たな。やっぱ、でっけぇな~」ふだんは花菱をされる側のヒョウエだが、今夜ばかりはタカムラの陰茎を好きなだけしゃぶる。
「んッ、はァッ、けっこう硬くなってきたね……。美味しそう……、」
ヒョウエは着物の裾をぴらッとめくり、タカムラの太腿にまたがると、向かい合って性交した。太くて硬い陰茎がヒョウエの体内を掻き乱す。
「あッ、あんッ! いいッ、気持ちいいッ! ダンナ、ダンナぁ!」
小さい頃から夜鷹坂で暮らすヒョウエにとってタカムラは、父親のような存在に近かったが、義理の息子として扱われた覚えはない。
ダンナ、
おれを男娼にしてくれよ
十八歳を迎えた日、ヒョウエは楼主の部屋を訪ね、自らの意志で男娼として働くことを願いでた。長椅子で、煙管をもつ芸者がお酌をする手をとめ、タカムラとヒョウエを交互に見つめた。
「あら、あなたは、ヒョウくん……だったかしら。どうしたの急に? あなたって、未成年じゃなくて?」
芸者は女のようなしゃべり方をするが、性別は男である。白塗りの顔で、くすッと笑う。
「おれ、きょうで成人したから! 姐さんみたいに器用じゃないから芸者には向かないけど、男娼なら、できるだろ。」
ヒョウエはずっと、タカムラに恩返しがしたいと思っていた。下働き(子どものうち)は稼ぎが少なかったが、男娼として肉体を売れば、夜鷹坂の収益にも貢献できる。楼主は、ハルチカを拾ったときもそうであったように、男娼になることを強制していない。本人の覚悟が決まり、名乗りでるまで、かけねなしで人助けをしていた。タカムラは丸テーブルにグラスを置き、芸者を退出させると、長い足を交叉して腕組みをした。
「ダンナ、おれは……、」
「おまえ、そんなに男娼になりたかったのか? まあ、いいだろう。その才能があるかどうか、適性値を調べてやる。……脱げ。」
いきなり初日のお披露目となったヒョウエだが、スーツの上着を脱ぐタカムラに身を捧げた。小さい頃は、男娼にもかわいがられていたヒョウエは、独自に入門書を手にいれ、交接部を開発していた。ゆえに、すんなり陰茎を挿入できたタカムラは、一瞬、眉を寄せた。
「ふうん? おまえ、準備がいいな。」
「ハァッハァッ……、だって、肛交は基本中の基本だろ。それくらい、わかってるから……、ひッ、あひッ!?」
強めに腰をふられ、頭の芯がクラクラするヒョウエだが、最後まで気を抜かず期待に応えてみせ、初日のお披露目を通過した。
✓つづく
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