恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
357 / 364
番外篇

アミィとレッド

しおりを挟む

 スガード=サキ=レスレット(通称レッド)は、真剣に考えていた。恭介きょうすけにより、事務内官という安定した職に就くことができたいっぽう、第6王子の側仕そばづかえで文官の、アミーユ=パラッシュ=フェニーハート(オネェ言葉をつかう男/通称アミィ)に、本気で心を奪われている。文官で上司にあたり、年齢としもアミィのほうがうえである。まずは恋人候補として意識されたいレッドだが、現在の立場は、あまりにも頼りない存在だった。

「……いやいや、冷静になれ自分。そう、冷静に考えろ。レイセイは大事だ。レイセイに……。ってか、いつからあんなひと、、、、、が気になってンだ? ん、あんな? ゴラァ!! 誰があんなだァ!! アミーユ様は、むっちり体形で三つ編みっていう、最強のいやし要素をもった可憐かれんな男だぞ! ん? 男? ……自分、同性じゃんかよー!」

 と、何やらひとり突っ込みをしながら執務室で作業をしていると、レッドの熱烈な想いを知らないアミィがやってくる。

「レッドくんったら、どうしたのぉ? 廊下の外まで大きな声が聞こえたけど、何かあった~?」

「お、おはようございます、アミーユ様! なんでもありません!」

 ガタガタッと席を立ち、あわてるようすのレッドにかまわず、空気の読めないアミィは、机越しに持参した紙袋を差し出した。

「はい、どうぞぉ。」
「なんすか、これ。」
「うふふ、お弁当よ。レッドくんの分。」
「え!? わざわざ自分のために作ってくれたンですか。」
「そんな大袈裟おおげさな話じゃないわよぅ。最近ね、ちょっと健康食品にハマって、買いすぎたものを詰めてきたの。これは、お裾分すそわけみたいなものね~。だから、遠慮せずに食べて頂戴ちょうだいな。……薄味だから、若い子の口には合わないかしら。」
「そんなことないです。ありがたくいただきます! ご馳走様でした!」

 アミィの手作りではないといえ、感動したレッドは、両手で紙袋を受け取った。好きな人からもらえるものは、なんだって嬉しいものである。時刻は昼前だが、早く食べたいと思った。

「相変わらず、まいにち伝票がたくさん届いてるわね~。これでも、キョウくんのお陰で、ずいぶん減ったほうだけれども……、」

「キョースケ様が事務内官のとき、不正が疑われるものは、本人に内訳を確認しに行ってたンですよね。相手が納得するまで説明するの、重労働だと思います……。」

「キョウくんは真面目まじめ一途いちずで努力家だものね~。うっふっふ、ジルさまが手離したくない気持ち、わかるわ~。あたしもいつか、あんな恋をしてみたいわねぇ。」

「それって……、つまり、アミーユ様は今、誰も好きじゃないってことっスか?」

「あたしは、みんな大好きよぅ。」

 時間軸を説明すると、現在は恭介が国家試験に合格し、文官の礼儀や役割を学ぶため、御室堂おむろどうへ引っ越したばかりである。高官こうかんとして出世街道を歩きだす恭介だが、権力を求めているわけではなく、王族ながら恋人である第6王子レ・ジルヴァンの側仕えとなり、一生をかけて守り抜くことが最大の目的だ。性処理をにな情人イロの立場では、隠れて寝室にかようしかないが、誰もが能力を認める高官になれば、堂々と会いに行ける。恭介の目標は、平和なコスモポリテス国で、ジルヴァンと近い距離を保つことだった。

「ねぇ、レッドくん。あたしたち、いつか幸せになれるかしら。」

 アミィ的には特別な意味もなく発した言葉だが、レッドは「必ず幸せにしてみせます」といって、力強く頷いた。

    * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...