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番外篇
アミィとレッド
しおりを挟むスガード=サキ=レスレット(通称レッド)は、真剣に考えていた。恭介により、事務内官という安定した職に就くことができたいっぽう、第6王子の側仕えで文官の、アミーユ=パラッシュ=フェニーハート(オネェ言葉をつかう男/通称アミィ)に、本気で心を奪われている。文官で上司にあたり、年齢もアミィのほうがうえである。まずは恋人候補として意識されたいレッドだが、現在の立場は、あまりにも頼りない存在だった。
「……いやいや、冷静になれ自分。そう、冷静に考えろ。レイセイは大事だ。レイセイに……。ってか、いつからあんなひとが気になってンだ? ん、あんな? ゴラァ!! 誰があんなだァ!! アミーユ様は、むっちり体形で三つ編みっていう、最強の癒し要素をもった可憐な男だぞ! ん? 男? ……自分、同性じゃんかよー!」
と、何やらひとり突っ込みをしながら執務室で作業をしていると、レッドの熱烈な想いを知らないアミィがやってくる。
「レッドくんったら、どうしたのぉ? 廊下の外まで大きな声が聞こえたけど、何かあった~?」
「お、おはようございます、アミーユ様! なんでもありません!」
ガタガタッと席を立ち、慌てるようすのレッドにかまわず、空気の読めないアミィは、机越しに持参した紙袋を差し出した。
「はい、どうぞぉ。」
「なんすか、これ。」
「うふふ、お弁当よ。レッドくんの分。」
「え!? わざわざ自分のために作ってくれたンですか。」
「そんな大袈裟な話じゃないわよぅ。最近ね、ちょっと健康食品にハマって、買いすぎたものを詰めてきたの。これは、お裾分けみたいなものね~。だから、遠慮せずに食べて頂戴な。……薄味だから、若い子の口には合わないかしら。」
「そんなことないです。ありがたくいただきます! ご馳走様でした!」
アミィの手作りではないといえ、感動したレッドは、両手で紙袋を受け取った。好きな人からもらえるものは、なんだって嬉しいものである。時刻は昼前だが、早く食べたいと思った。
「相変わらず、まいにち伝票がたくさん届いてるわね~。これでも、キョウくんのお陰で、ずいぶん減ったほうだけれども……、」
「キョースケ様が事務内官のとき、不正が疑われるものは、本人に内訳を確認しに行ってたンですよね。相手が納得するまで説明するの、重労働だと思います……。」
「キョウくんは真面目で一途で努力家だものね~。うっふっふ、ジルさまが手離したくない気持ち、わかるわ~。あたしもいつか、あんな恋をしてみたいわねぇ。」
「それって……、つまり、アミーユ様は今、誰も好きじゃないってことっスか?」
「あたしは、みんな大好きよぅ。」
時間軸を説明すると、現在は恭介が国家試験に合格し、文官の礼儀や役割を学ぶため、御室堂へ引っ越したばかりである。高官として出世街道を歩きだす恭介だが、権力を求めているわけではなく、王族ながら恋人である第6王子の側仕えとなり、一生をかけて守り抜くことが最大の目的だ。性処理を担う情人の立場では、隠れて寝室に通うしかないが、誰もが能力を認める高官になれば、堂々と会いに行ける。恭介の目標は、平和なコスモポリテス国で、ジルヴァンと近い距離を保つことだった。
「ねぇ、レッドくん。あたしたち、いつか幸せになれるかしら。」
アミィ的には特別な意味もなく発した言葉だが、レッドは「必ず幸せにしてみせます」といって、力強く頷いた。
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