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第334話〈すべてを告げる〉
しおりを挟む性交渉のあとは、決まって眠りにつくジルヴァンだが、恭介は寝台の上でずっと云えなかった秘密を告白した。
「……疲れているところ悪いが、オレの話を聞いてくれるか?」
「……む、改まってなんだ突然、」
「どうしても、キミにだけ話しておきたいことがあるんだ」
「吾にだけ……?」
恭介は「ああ」と云って頷くと、上体を起こし、ふたつある枕のひとつを縦に置いて寄りかかった。ジルヴァンも起き上がろうとするため、「キミはそのままでいいよ」と、肩に手を添えて制した。ジルヴァンは「なにか大事な話のようだな」と云って、枕を引き寄せると腹這いになった。燭台に点る火が、恭介の穏やかな表情を照らしていた。熱を放ち汗ばんでいた肌は、少しずつ冷めてゆく。だが、心の奥にはいつまでも消えない情熱の火が燃えていた。
「まず、オレの生まれた国について報せておくけど、見てのとおり、オレはコスモポリテスの出身者じゃない。」
「うむ、そうであろうな。……貴様が何者であろうと、今更だがな。」
いくらか救われる言葉に、恭介は微笑した。ジルヴァンは最初から恭介の身分になど、こだわりを持っていなかった。私奴であった頃に、素性を調べもせず情人に選んだくらいである。恭介は前髪を指で掻きあげ、ふぅ、と息を吐いた。思えば、アッという間の1年が経過しようとしている。ジルヴァンは枕を胸もとに抱き、顔を横向けていた。少し上目遣いの表情に、つい、恭介は和んだ。
「……オレは、この世界の住人じゃなくて、日本という国から飛ばされて来たんだ。」
「にっぽん?」
「地球上にある小さな島国だ。」
「キョースケは、島国出身だったのか……。どおりで珍しい容姿なわけだ。しかし、そのような国名は初めて聞くぞ。コスモポリテスから、どれくらい離れているのだ?」
「それはオレが知りたいくらいだよ。」
「なぬ?」
「日本でのオレは、アパートっていうせまい部屋でひとり暮らしを送っていて、会計士として独立したばかりだった。……ちょうど今から1年くらい前の秋、疲れて帰ってきて、スーツ姿のまま寝ちまったら、コスモポリテスにある遺跡で目が覚めた。」
「キョースケよ、それは真の話か?」
「オレの身に起きた事実だ。」
「……それならば、なぜ貴様が、わざわざ日本から飛ばされる必要があったのだ?」
「……さあな。ジルヴァンとめぐり逢うためってこたえたら、気障か?」
「なっ、なに?」
「冗談のつもりはないぜ。今なら、本当にそう思えるんだ。キミとは、どんなことがあっても別れたくないって白状する。」
「いきなりなんなのだ。それは、なんの告白のつもりだ?」
「ひとことで云えば、このまま、オレだけがキミを独占したいって話かもな。図々しいにも程があるだろうけど、誰にも情人の資格を譲りたくないし、もっとそばにいたくて、文官になったんだ。」
「……キョースケ、」
「オレの考えは浅ましいと思うか? キミに対しての欲が深くなっていくばかりなんだ。」
恭介から本音を打ち明けられたジルヴァンは、開いた口が塞がらない。頬は微かに火照ったが、わなわなと肩がふるえた。あまりにもはっきりと愛情を告げる恭介は、満足そうに笑みを浮かべている。相手に気持ちを伝えることは、こんなにも清々しいのかと、ふしぎな爽快感に捉われた。
(……やっと云えた。ジルヴァン、あとはキミ次第だ。……オレの待遇をどうするか、よく考えてから決めてくれ)
拒絶か軽蔑か、これまでどおりの関係を続ける意思があるのかどうか、ジルヴァンの返答を待つ恭介の胸は、切なさを感じた。
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