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第328話〈打ち明ける覚悟〉
しおりを挟むランカとの関係が微妙に変化しつつある恭介だが、午後の講義を終えて3番館に戻るなり、ガクッと肩の力が抜けた。
「よう、キョースケ。おまえが男色だったとは意外だったぜ。」
恭介とランカが講義室の床に転倒した時、ふたりが抱き合っているように見えたシュイは、にやにや笑みを浮かべながら、ちらっ、と文官布の前をひらいた。あきらかに、恭介を挑発する態度だが、さいわい、ジルヴァンとの共寝を控える身につき、シュイに手を出すほど愚かではない。
「あのな、オレをどう思おうとキミの自由だが、ランカは無実だからな。」
「そうやって庇うってことは、あいつが好きだから?」
「ちがうよ。まったくな。」
「うわ、全力で否定かよ。ってことは、あっちの片想いだったりして? キョースケって、案外、抜け目ないな。」
「なんの抜け目だよ。」
「褒め言葉だけど、そう聞こえなかった?」
「それより、そんなにじっくり見られてると、着替えにくいンだが……。」
文官布の詰衿に指を差し込んで留め具を外す恭介を、シュイは真顔で凝視する。
「いいじゃん、減るもんじゃないしさ。あんただって、試着の時、こっちの裸身を見てるだろ。……念のため訊くけど、キョースケって攻め側?」
「オレが受け身に見えるのか?」
「全然見えない。けっこう存在感があるから、男役のほうが似合ってると思う。云っておくけど、じぶんは“無性愛者”だから、惚れたりすんなよ?」
文官布の腰紐を解く手を止めた恭介は、クルッと、背後のシュイを振り向いた。コスモポリテスでは唯一の黒い眼で注視されたシュイは、「な、なんだよ?」と、やや怖気づく。恭介が一歩進むと、シュイは二、三歩後退し、すぐ壁際へ追い込まれた。生唾をゴクッと呑むシュイの目の高さへ、恭介は利き腕の左手を持ちあげて見せた。
「キョースケ……?」
「キミは、この輪具の意味を知ってるか?」
「なにさ、突然……、」
「いいからこたえろ。」
「し、知らない。」
博識なランカと異なり、シュイはごく一般人に近い。恭介は小さくため息を吐くと、自分が第6王子の情人であることを丁寧に説明した。シュイは「マ、マジで?」と云って、唖然となる。
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