恭介の受難と異世界の住人

第264話

「なんだよ、テメェは。レッドの知り合いだろうがなんだろうが、こいつの友人づきあい、、、、、、に口を出すんじゃねーよ。」
「悪縁の間違いだろ。」
「はぁ!?　ふざけんな!!」

　胸倉を掴まれた恭介だが、ボルグから教わった護身術が備わっているため、なるべく焦あせらず冷静に、相手の動きに注意をはらった。不良のひとりが恭介の肩をドンッと、強く押すと、内官布ないかんふの胸もとから勲章の留め具が外れ、カツーンッと落下する。大事なものにつき、すぐに拾おうと腕を伸ばすと、後頭部を目がけて蹴りをくり出されたので、咄嗟とっさに身を引いた。

「チッ、こいつ、意外と落ちついてやがる！」
「なぁ、この勲章バッヂ、売ったら金カネになりそうじゃね？」
「ああ、確かに。貴金属は重さで買い取り額がハネ上がるはずだ。どれどれ。へぇ、けっこう重量感あるな。」

　不良のひとりが勲章を拾いあげるなり、換金手段を口にする。そんなことは絶対に許せない恭介は、「返してくれ」と云って、不良に手のひらを見せた。
「返してほしけりゃ、レッドの件に二度と首を突っ込むんじゃねーぞ！」
「うん？　それとこれとは別の話だろ。キミたちこそ、レッドにタカる、、、理由はなんだ？　仮にも役人やくにんが、こんな非行に走ったらダメだろう。」
「は？　なんだよ、ネチネチうるせぇ野郎だな。こっちは６人だぞ！　ヤル気か!?」

（……う～ん、まいったな。これじゃ、オレが何か云うたび火に油を注そそいでるようなモンか？　こいつらには、話が通じそうもない。改心かいしんの期待はできねぇな……）

　見れば、レッドの口唇くちびるが微かすかに慄ふるえている。最初から、言葉で論破ろんぱできる連中ではなかったらしい。こんな時、武官のように力技ちからわざで悪人を成敗せいばいできたら、どんなに気分がスカッとしたか。

　恭介が対処に悩んでいると、再び肩を押され、着替えがバサッと落ちた。すると、ムダ毛の処理用に持参した小刀ナイフが、カランッと、不良の足許あしもとへ転がった。
「ん？　なんだこれ？　あっ、小刀ナイフじゃん！　おい、みんな!!　こいつ、刃物はものを隠し持ってたぞ!!」
「なにィ？　見せてみろ!!」
　よりにもよって、小刀が不良の手に渡ってしまう。

（……やれやれ。埒らちが明あかなけりゃ、強制終了するしかねぇな。いっちょ、こっちから仕掛けてみるか？）

　思い切って対戦する姿勢ファイティングポーズを構えると、レッドが「キョースケ様？」と目を丸くした。この場に彼を残してはいけない。なにより、不良の手から勲章を取り戻す必要があるため、恭介は戦う意志を示した。

　　　　＊　＊　＊　＊　＊　＊