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第234話
しおりを挟むアレントは、ルシオンと同じく国王の血を引く庶子であり、その正体は易師でもあった。人間の将来や運命を手相などから判断し、物事の成りゆきを易経に基づいた方法で予想する占い業で各地をめぐっている。此度、三十路を前にして城へ帰還した理由は、王国への忠誠義務を果たすためであった。
アレントは恭介がまとう独特な雰囲気を観察した後、左手の輪具を凝視した。王族公認の情人が利き手の人差し指に嵌めるものであり、本物の易師であれば、恭介の人相から立場を見抜くことは容易い。
(……なんだよ、この微妙な空気は。いちいち変な間が生じるのは、なんなンだろうな……)
アレントが沈黙するたび、恭介に緊張が走る。何かを試されている気分になるが、これといって自分にできることはない。ただ、相手の発言を待つばかりの状況だが、次第に気まずくなってきた。そもそも、アレントは強面につき、ルシオンや第4王子のように、王族だけが放てる威圧感は顕在だ。
「……其方は、命理学を知っているか。」
「命理ですか? いえ、知りません……。」
(其方って、オレのことだよな? そんな呼び方されるとは、まるで時代劇の世界みたいだ……)
「宿命の理を研究する学問のことで、真義を探求し続ける学術である。」
「はあ、そうなんですか。」
(おいおい。長引きそうな予感がしてきたぞ……)
恭介は内心で突っ込みながら、アレントの立ち話に付き合った。
「第一に、其方は真面目で忍耐強く努力家であろうな。第二に、計画的で管理能力に優れている。第三に、内発的な意欲が高いとみた。」
(オレを占っているのか? ……真面目ぶってるつもりはないけど、管理能力については会計士の職柄だろうし、内発的な意欲なら、当たってるな。……オレの目標は、文官試験に受かることだしよ……。うん? 待てよ。これ以上はマズくねーか? オレが別世界の人間だって、バレたりして……)
恭介は、ぎこちなく視線を逸らした。アレントの分析力は、確固たるものである。
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