恭介の受難と異世界の住人

第169話〈子育て奮闘記！〉

　最初のうちは弱かった視覚や聴覚も向上こうじょうし、二足歩行が可能となったリゼルは、シリルの助けを借りずに排泄もできるようになった。離乳期の兆きざしとして、シリルの乳房から母乳が生成されることもなくなり、日ごとに小さく薄い胸板へと戻ってゆく。　

「ゼニス……、ゼニスってば！」
「いいから、おれにも触さわらせろ。」
「や、やだぁ！　もう、ゼニスのエッチ！」

　リゼルは、洞窟の入口でひとり遊びをしている。地面に落ちている葉っぱを拾い集めたり、小石を手にとり、柵の向こう側へ投げたりしていた。奥の寝床では、裸身はだかのシリルに覆おおい被かぶさったゼニスが、平たいらな胸に吸いついている。下腹部へ舌を這わせ、股のあいだに顔を埋めると、シリルは「きゃあっ！」と叫び声をあげた。

「なんだよ。」　
「なにって……、だ、だって、そんなところ舐められたこと、ないもん！」
「当然だ。これからも、おれ以外の男ヤツに触らせるなよ。」
「あっ、んっ、ゼニスってばぁ……！」　

　最近のゼニスは、やけに積極的に性的な事柄ことがらに及ぶフシがあり、シリルは赤面しつつ困惑こんわくの表情を浮かべた。さすがに、リゼルの目前ではわきまえているゼニスだが、すきさえあればシリルの肌へ舌を使ってくるため、生理現象を煽られてしまう。

「ほらぁ、ゼニスがエッチなことするから硬かたくなっちゃったよぅ……、」　
「いいんだよ。これは、おまえの肉体がおれの手に反応してる証拠だ。無理にがまんせず、出せよ。」
「……うぅ、ぼく、恥ずかしい、」
「恥ずかしがる必要はない。おれたちの関係を忘れるな。」
「……関係って？」
「おれとおまえは夫婦で恋人だろう。ちがうのか。」　
「ち、ちがわないよ。……でも、それとこれ、、って、なんの関係があるの？」

　過度かどな発言より、互いの温もりを実感できる性交渉は相愛の契ちぎりである。ゼニスが下半身を露出させると、シリルはぎょっとなる。

「ゼニス？　交接する気？」
「ああ、挿いれたい。」
「な、内部なかに出されたら、ぼく、また妊娠しちゃうかもよ……？」
「その心配なら無用だ。」
　云いながら、ゼニスはシリルの体内へ男性器の先端を押し込んだ。グチュッと、卑猥な音がふたりの耳を刺激する。
「あぅっ、ゼニスぅ！」
　腰を突かれたシリルは身悶えたが、ゼニスは加減の程度を緩めることなく激しい上下運動をくり返した。
「……っ!!　あんっ、すご……っ、ゼニスぅ！　なにこれ、なに、これぇ!?」
「落ちつけ、シリル。……おれたちは今、性交セックスをしている。これは、子をつくることが目的じゃない。おれの欲求に、おまえが応こたえている状況なんだ。」
「ふわ～っ、ゼニスのが、ぼくの中でもっと大きくなってるよぅ！」
「ああ、おれは変態かもしれん。」

　ゼニスはシリルの頬へキスをすると、リゼルがこちらのようすに気づいて戻ってくる前に絶頂を遂げた。再び体内領域にゼニスの精液を受け入れたシリルは、「どうしよう、妊娠しちゃうよ～」と、焦あせってみせる。身装みなりを直なおすゼニスは、思わず吹きだしそうになる。
「ならば、あと十人は産んでもらおうか。」
　そんな冗談を述べると、本気にしたシリルが青ざめた。
「そ、そんなの絶対に無理だからね！　ぼく、あんなに痛いの、しばらく嫌だよ～！」
　と、素直な文句を返されたゼニスの気分は、爽快そうかいだった。

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