恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第124話〈ザイールと武官〉

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 関係者住居に帰宅した恭介は、まず食堂に向かった。すると、ちょうど腹拵はらごしらえをすませたボルグと行き合った。

「ボルグさん、こんばんは。」
「おっ? キョースケか。どうした、その頭は?」
「これは、……自損じそんです。」
「ふうん? 派手にすっころんだみてぇだな。」
「ええ。まぁ、そんなところです。」

 恭介は苦笑にがわらいをしてみせ、共用の食材をいくつか手にした。包帯の理由は、適当にごまかしておく。恭介は内官布ないかんふ姿につき、ボルグは仕事帰りだろうと思い込んでくれた。

「そんなけがをしてまで出勤かい? おまえさんは仕事の鬼だな~。」
「誰かさんのおかげで、伝票処理が山積やまづみなンですよ。」
「がはははっ、そうかそうか!」

 ボルグは納得したようすで立ち去るため、こんどは恭介のほうで引き止めた。

「ボルグさん。あとでお願いしたいことがあるンですが、お時間いただけますか?」
「おう、いいぞ。なんだ?」
「オレにもできそうな体術があったら教えてほしいンですけど……、」
「体術? 組み手とかでよければいつでも教えてやるぞ。」
「ありがとうございます。頭の傷が治り次第、また声をかけさせていただきます。」
「ああ、承知した。お大事にな。」
「はい。」

 ボルグとそんなやりとりをしたあと、恭介はひとりで夕食をすませてから部屋に戻った。ザイールは帰宅しており、チンチン人形ドールのアルトゥルを胸に抱きながら出迎えた。

「キョースケさま、おかえりなさい。……っ!? そのお姿は、いったい、どうなされたのですか!?」
「ただいま。けがのことなら心配いらねーよ。ちょっと転んだだけなんだ。」
「で、ですが……、」
「大丈夫だから、そんな顔するなって。ほら、見てのとおりピンピンしてるだろ。メシも腹いっぱいってきたところだし。」

 恭介は明るい表情でふるまい、ザイールをはぐらかす。神殿プロメッサに従事するザイールは「あぁ、神のご加護を」と、つぶやいた。ようやく定位置の長椅子ソファへたどり着いた恭介は、「ふぅっ」と息をいて前髪を掻きあげた。肩がけのサックを足許あしもとに置くと、ザイールが近づいてくる。

「あの、キョースケさま。少しお話したいことが……、」

 なにかを云いかけて、床に放置してあった私物に足をすくわれたザイールを見た恭介は、反射的に腕をのばして転倒を防いだ。ザイールの手頸てくびをグイッと引き寄せると、思いのほか勢いがついてしまい、正面からドサッと恭介のカラダにおおかぶさった。カシャンッとザイール愛用の丸眼鏡まるめがねが落下する。ついでにアルトゥルも床へころがった。ザイールにとっては大事な相棒につき、すぐに助け起こしに行くと思ったが、恭介を下敷したじきにしたまま静止する。

「ザイール?」

 金縛かなしばりにでもあったかのように硬直こうちょくしているため、恭介も身動きが取れない。

(なんだ? どこかいためたのか……?)

 恭介は無理に押し返さず、ザイールが離れるまで待つことにした。数十秒後、なぜかザイールは「すみません」と小声で詫びた。恭介に対し、ほのかな恋心をいだくザイールは、いよいよ、おさえきれない感情をあらわにする。内官布の裾をめくると、外衣ズボンに手をかけた。

「うん? おっと!? ザイール? 何やってンだ?」
「ですから、先にすみませんと云ったではありませんか。……わ、わたしは、キョースケさまの、り、立派な男性器アソコが見たいのですっ!」
「は!? おい、なに云ってんだ?」

 やけに興奮したザイールから外衣ズボンを脱がされた恭介は内心(マジか!?)と、突っ込んだ。陰毛を処理した下半身をばっちり見られて、こんどは恭介が硬直する。

(やっぱり、ザイールは悪趣味だ……)

     * * * * * *
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