恭介の受難と異世界の住人

幕 開 け ※イラストあり

「神官殿しんかんどの!!　それは為なりません!!　絶対にダメですからねっ!!」
「ああっ!?　武官様ぶかんさまっ、これはイケません!!　……って、いつも云いってるだろーがァ!!」
　きょうも、キョースケ、、、、、の声が城内じょうないに響く。ここは異世界、“コスモポリテス”と呼ばれる壮大な王国である。

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　秋の夜長よなが、石川恭介いしかわきょうすけは、アパートの自室じしつで、持ち帰った資料を整理していた。会計士として事務所を構かまえたばかりにつき、残業の日々が続く。恭介は齢よわい27にして、開業を果たした成人男性である。大学卒業後は叔父おじの会社で実務経験を積み、修了考査に合格した後のち、銀行からお金を借りて、こじんまりとしたプレハブの事務所を建てるまでに至いたる。
　これからが本格始動だという時に、日頃ひごろの疲れが蓄積ちくせきしていた恭介は、リビングの絨毯カーペットへ倒れ込むと、そのまま居眠いねむりをした。そして、目が醒さめたら“世界”が変わっていた。

「……あれ？」

　恭介の全身は、大量の白い羽根はねに埋もれていた。やわらかくて温あたたかいため、寝そべっていると瞼まぶたが重くなる。このまま眠っても、朝になれば目覚まし時計のアラームで起きるだろうと思った瞬間、頬ほおをバチッと平手打ちされた。

「な、なんだっ!?」

「それはこっちのセリフだ！　おまえこそ、なんだ!?」
　
　見れば、小さな子どもに囲まれていた。数十人はいる。つい先程までの静寂せいじゃくは消え去り、にわかに騒さわがしくなった。

「オ、オレは、あやしい者モンじゃないっ。キミたちこそ誰なんだ？」
　
　これは夢かと思いつつ言葉を発したが、ビンタされた痛みがある。けっこう痺しびれていた。何が起きたのか、まずは状況を判断する必要があった。しかも、自分を取り囲む子どもたちは、なぜか裸身はだかで、誰も気にしていない。恭介はというと、仕事用のごく一般的な黒いスーツを着ていたが、奮発して買った高価なネクタイは消えていた。

　ゆっくりと立ちあがってみると、視界に広がる景色けしきに息を呑のんだ。濃緑こみどりの葉を繁しげらせた樹木が迷路のように蔓延はびこり、見たことない草花が群生している。どこかの温室おんしつかと思えたが、そんな場所に足を運んだ憶おぼえはない。

「どうなってるんだ、これ……、」
　
　恭介は唖然あぜんとしたが、頭上ずじょうを見あげると、太陽のまぶしさに目が眩くらんだ。いつの間にか、離れた位置に誰かが佇たたずんでいる。遠すぎて、表情は確認できない。人影は、ゆっくりこちらへ向かってきた。肩がけにした絹衣きぬで肌を隠していたが、裸足はだしで歩くようすを見るかぎり、それ、、以外は何も身につけていないと思われた。

「すみません、ここは何処どこですか？　オレ、わけがわからなくて……、」
　
　先に声をかけると、目の前で足をとめた人物は、コーラルレッドの双瞳ひとみで恭介の顔を見つめた。

（こいつ、男だよな？　目が赤い、それに肌の色も少し茶色いか……）
　
　恭介は、自分より背の低い相手を見おろした。きれいな容貌かおをしていたので、女とまちがえそうになるが、よく見ると喉仏のどぼとけがあった。ゆえに、性別は男だと判明する。年齢としは二十歳はたちくらいである。初対面の青年に現状を訊たずねたが、なぜか返事を得られない。無言で凝視ぎょうしされ、妙に気まずかった。

「そんなに見つめるなよ。オレの顔に、なにかついてるのか？」
　
　つい軽口かるくちを述のべると、青年は首を横にふった。恭介を指で示しめし、子どもたちへと視線を移うつす。

「みんな、この人間ひとは“侵入者”だから好きにして、、、、、いいよ。このぼくが、赦ゆるしてあげる。」

　と云いって、ようやく口を破わる。物騒ぶっそうな発言を耳にした恭介は、瞬時しゅんじに青ざめた後のち、「おい!?」と短く叫んだ。
　
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↑受け身の王子ふたりです。参考までにどうぞ（汗）
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