青竜のたてがみ

み馬

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第34話

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 ジェイクとロンファが真夜中に逢引あいびきする頃、平静を取り戻したジョグンは、思考回路が迷走していた。

 ジョグンは、早くに両親を亡くし、現在はひとりで暮らしていた。低い屋根が立ちならぶ島民の住居の端に、板張いたばりの小さくて粗末な建物がある。ジョグンが13歳の時に造った持ち家である。あちこち老朽化が見てとれたが、ひとりで生活する分には、とくに問題なかった。

「……おれは、何をしてたんだ?」

 ロンファの生理活性物質を吸い込んで錯乱さくらんしたジョグンだが、反撃にっている。思いきり腹部に爪を立てられ、裂傷していた。流れる血は止まっていたが、痛みに顔をしかめた。ロンファの股のあいだが汚れていた原因は、ジョグンの返り血をあびたからである。とはいえ、押し倒されたロンファは、ジョグンから男根を開口部へ挿入されそうになり、恐怖すら覚えた。暴力的な性交を望まないロンファは、ジェイクが信用に足る人物かどうか慎重に見極める必要があり、なるべく穏やかな時間を過ごしている。ジェイクのほうで恋人を名乗りでた点は、青年にとって好都合だった。ロンファはどうしても、人間の男、、、、と性交をしなければならない。それは、ある条件を満たすためだが、ジェイクはまだ、その秘密を知らずにいた。

「おれは、たしか、ジェイクリッドのあとを追っていて……」

 ジョグンは、悩みながら自分の家まで帰ってきた。傷口を消毒し、ひとまず包帯ほうたいを巻いておく。化膿かのうしては厄介やっかいにつき、痛みをがまんして軟膏なんこうを塗り、救急箱のふたをとじる。ジェイクを尾行するため、クムザの病院を見張っていたところまでおぼえていたが、その後の出来事が思いだせなかった。つまり、ロンファと接触した記憶が消えて、、、いる。

「くそっ、どうなってんだ。おれのこの傷は、あいつにやられたのか!?」

 当然ながら、ジェイクは加害者の疑いをかけられる。実際、後頭部を打撃して気を失わせた張本人ちょうほんにんだが、腹部の裂傷は濡衣ぬれぎぬだった。しかし、納得のいかないジョグンは、ジェイクを問い詰める意向を固めた。

「またあした、こんどは直接、おまえの化けの皮を剥がしてやるから、待ってろよ!」


✓つづく
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