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スーツの下の化けの皮/二幕
第77話
しおりを挟む男として、それなりに性欲はある。行為の対象は人それぞれだが、幸田は、姫季の誘惑に負けたことになる。いちど萎えたはずの部位が再び硬くなると、合意の上で挿入した。ところが、抱き合っている最中に腕や足が痺れ、ふくら脛が痙攣を起こした。年齢による体力の差ではなく、原因として考えられる理由は、ふだん使わない部分の筋肉がフル活動しているからだろう。
「……幸田さん、疲れてる?」
「いや、そんなことは……」
「ねぇ、ちょっと起こして」
「今か?」
「そう、今。あ、抜かなくていいんだ。そのままゆっくりで……」
肉体をつなげたまま上半身を起こした姫季は、幸田の太腿にすわり、腰を軽く揺らしはじめた。
「あっ、……んっ!」
「姫季くん、そんな無理をしなくていい」
「べつに無理してないよ。ちゃんと気持ちいいから、だいじょうぶ……。それより、背中を支えてて……」
「こ、こうか?」
「おれが動くから、幸田さんはじっとしててくれよ」
幸田は少し当惑したが、「わかった」と返事をすると、姫季の背中に腕をまわした。しばらく好きなように動かせたが、腰を上げたり下げたりするたび必死な表情に見えるため、つい、下から突きあげると、姫季は「うわっ!?」と驚いて、大きくのけ反った。
「すまん、いきなりだったか?」
「び、びっくりしたけど……、なんとか平気……。幸田さんの、さっきより大きくない? おれの気のせいかな……」
「それだけ興奮しているんだよ。……こんなふうに姫季くんを乗せるのは、なんというか気分がいいものだが、自重がかかり、きつい体位のはずだ。……そろそろ、おしまいにしよう」
「う、うん……。じゃあ、あとはよろしく……」
幸田はベッドを軋ませて姫季の躰に覆いかぶさると、最後の仕上げとばかり、激しく腰を突く。姫季と共に二度目の絶頂を越えてゆき、心の底から愛し合った。姫季の愛情表現は独特で大胆だが、若気の至りを重荷に感じるほど、幸田は薄情者ではない。恋人の存在に依存する姫季は、幸田とセックスせずにはいられないため、温もりを求め合う行為は、信頼と安心につながっていく。
「……幸田さん、……幸田さんっ」
感極まったようすで恋人の名を呼ぶ姫季だが、快楽の根源を初めて肉体に与えてくれた男は、石津につき、頭の片隅に記憶が蘇ってしまった。
✰つづく
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