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愛 玩 人 体〔125〕
しおりを挟む三船の葛藤をよそに、2時間が経過した。時刻は深夜をまわっていたが、高層住宅の窓に点る灯りは、殆ど消えていない。だが、物音はひとつも聞こえてこず、ロビーは、しん、と鎮まり返っていた。エレベーターに乗り込んだ三船は、最上階のボタンを押す指が、微かに慄えた。どんな顔をして、ユンクを迎えに行くべきか、本気で悩む。いちど引き受けた責任は、あまりにも大きく、愛玩人体の管理者として複雑な心境だった。とはいえ、性行為の最中に、緊急事態を報せる受信機に赤ランプが点灯することはなく、少なくとも、ユンクのほうで不測の事態に陥らなかった結果に、「ふう」と息を吐いて胸を撫でおろした。
インターホンを鳴らすと、すぐに返事があり、ガチャッと、ドアが開いた。
「ミフネーッ!! 終わったよー!!」
と云って、いきなり飛びついてきたユンクの髪は、しっとり濡れている。躰からも石鹸の匂いがした。どうやらシャワーを浴びたようだ。三船は利用客の中年男に挨拶をして、ユンクと車両へ引き返した。助手席の座席を倒して横になるユンクは、思いのほか元気そうで内心ホッとしたが、第2研究室へ戻ってからやるべき作業は多く、管理者の仕事は山積みだ。提出書類の項目の多くは、ユンク本人が経験した事柄を子細に記す必要がある。ただでさえ遅い時刻につき、移動時間を有効利用すべきだと考えた三船は、安全運転を心がけながら、ユンクに質問した。
「……お疲れさん。初仕事を無事に終えた気分はどうだ?」
「う……う~ん……、ネムイ……」
見るからに体力の低そうな小柄な少年につき、今にも眠ってしまいそうな声で答えた。
「おい、ユンク。寝るなよ? まだ、資料の制作があるんだ。研究室に着いたら、色々と聞かせてくれ」
「え~、なにを聞くってのさぁ。あしたじゃダメなの?」
「疲れているところ、すまんな。最初のうちはキツくても、おまえが経験したことは、実験結果として事務局が何十年と保管する貴重な資料になる。思い出したくないことをされたとしても、しっかり報告してくれよ。いちばん困るのは、嘘をつくことだ。今の気持ちを正直にぶつけていいからな」
三船の言葉に、返答はない。赤信号で停車すると、助手席へ視線を向けた。ユンクは瞼をとじて、「スゥスゥ」と寝息を立てている。医局の駐車場に到着した三船は、ユンクを抱きあげて第2研究室へ帰還した。服を脱がせて気密容器の底へ寝かしつけた時、ユンクの首筋や細い手脚の至る箇所に鬱血の痕を見つけ、眉をひそめた。エイジと変わらない歳頃でありながら、見知らぬ男に性通されても平然とするユンクは、果たして有能なのか。環境的要因を受け入れた人間の末路は、ふたつにひとつである。
「……おれは、ユンクを守れるだろうか」
すでに、いくつもの苦痛を乗り越えて実績豊富な1号と比べ、ユンクの扱いは難儀する気配を見せた。なぜなら、少年の陰茎に歯形がある。もっとも敏感な部位を傷つけられたユンクが、まったく抵抗せず、ただ受け入れたとは思えない。気密容器の蓋を閉めた三船は、作業デスクにつくと、利用客に事実確認をすべきか頭を悩ませた。愛玩人体の肉体は商売道具である。初日から、こうも簡単に傷痕を残されては、翌日の仕事に影響した。
「……クソが!」
通信ツールを手にした三船は、ギリッと口唇を噛みしめた。
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