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愛 玩 人 体〔04〕
しおりを挟む医局によって商品(正確には試作品)にされたエイジ(個体登録名=AZ)は、6人目の利用客を通じて、生来の性質(受け身であること)を自覚した。
前戯のときから薄々感じていたが、肌へ触れてくる指づかいは心地よく、カラダの奥まった入口をひらかれても、達することのできる領域の深部にはいり込まれても、嫌悪感はなく、むしろ、鄙猥な声をもらした。こちら側に拒否権のない一方的な性交渉をされて、気持ちがいいと思ったのは、6人目の男が初めてだった。
医局とは、群惑が運営する医務機関の総称で、傘下には医薬品の開発会社や食品会社などがあり、組織に属する役職は多岐に及ぶ。職位を総括する事務局に在籍するバージルは、医師であり博士(最高難易度のランクSS資格保有者)である。
医局の敷地に専用の研究室を配備されるほど、当局の評価は高く信頼も厚い。そんな男に託された〈中心部愛玩人体計画〉は、着実に進行していた。将来的に公共事業として拡大するため、機能性と安全性を確かめる実験は不可欠だった。
6人目の客は、エイジとカラダを重ね合う最中、〈マレイン▪メドウス〉と名乗り、医局の関係者であると付け加えた。これまで、客が自らの個人情報を明かしたことはいちどもない。まして、名前を教えるなんて、あり得なかった。愛玩人体の利用予約は電子ツール限定につき、本名を入力する必要はなく、コードネームを使うことができた。
「……マレインさん?」
「レインでいいよ。『マ』は要らないんだ」
「……レインさん」
エイジは乱れる呼吸を整えながら、レインの顔を見つめた。事前に、バージルから渡されたファイルの情報をよく確かめずにいたことを、内心後悔した(投げやり状態を少し反省)。
レインは、20代前半くらいの若者で、肩まで無造作に垂れるペールトープ色の髪を、黒いゴムでゆるく結んでいる。前髪も長いので、左右にわけてピンで留めていた。
愛玩人体は、相手に許されない限り発言の自由はなく、利用客が満足するまで肉体を捧げるのが基本ルールだ。実際、ひとり前の客はエイジが萎えたあとも、勝手に興奮して男性器の抜き挿しを必要以上にくり返した。
レインは、まるで恋人を抱くような手つきをするため、エイジのカラダは何度でも素直な反応を示した。自分でも驚くほど快楽に悦がり、先に体力が尽きた。
「申し訳ございません。このような不始末を二度と起こさぬよう、厳しく指導します」
レインの呼出を受けたバージルは、開口一番に頭を下げた。利用客から、予定より1時間も早い引き渡し依頼につき、待機していた事務局から最短距離で駆けつけた。
レインに案内され、寝室に足を踏みいれた医師は、一瞬変な顔をした。あろうことか、愛玩人体が大の字で熟睡している。性交中に寝落ちなど、完全に失格である。
「起こさないであげてね。すごく、疲れているみたい。……ぼくの目的は果たしたから、返金は要求しないつもりだ」
「そういう訳にはいきません。お買い上げ時間内にAZが利用規約外の行動をした以上、我々には賠償責任が発生します。後日、指定の口座へ差額を振り込ませていただきますので、ご確認をお願いします」
レインは、医師の立場を心得て、それを承諾した。
「エイジくんは、素直で良い子です。……群惑Bでは深刻な食糧難が続き、群惑Yでは政治の混乱が絶えず、群惑Kは外部からの侵略に、頭を悩ませているという情報を聞いています。……先進医療を誇る我々の群惑では、皮肉にも人口の減少が止まりません。……愛玩人体にどんな未来があるのか、ぼくも興味があるので、このサービスを継続して利用するつもりです。……念のため質問しますが、性的な目的以外で予約は可能でしょうか?」
医師は、あらかじめ用意した愛玩人体用に作られた服をエイジに着せると、抱きあげて背後のレインを振り向いた。
「と云いますと、具体的にはどのような行動をお望みでしょうか」
「一緒にアイスキャンディーを食べたり、映画を観たり、森林域で散歩もいいね」
「外出許可の申請は可能事項ではありますが、そういった場合、対象の事故や逃走を防ぐため、事務局の人間が同伴することになります」
「あなたが付いてくるの? ぼくたちのデートに?」
「おそらくは」
医師は「それでは失礼します」と云って会話を打ち切ると、物音を立てずに退室した。エイジを車両まで運び、後部座席へ押し込むと、脈を測るため首筋に指を添える。呼吸は安定しており、寝顔も安らかだった。
研究室に帰還したバージルは、エイジを仮眠室の寝台へ横たえた後、軽く触れるだけの接吻をして電気を消した。
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