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042 合流

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 カメレオンから救出したNPCの女性には、執事のような付き人がいた。俺たちが川へ向かうとちゅう、彼女を探しにジャングルをさ迷っていたという彼に遭遇する。

『お嬢様! あれほど単独行動はやめてくださいと申しあげたのに、また、ひとりで鉱石を見つけに行くとは、なんたること! しかも、その汚い腰巻こしまきはなんですか!? 不潔な!』

 俺のコットンシャツが
 ひどい言われようだ。
 ……お嬢様?

 女性キャラクターの見た目は、20代前半といったところだ。茶色の髪に、ごく標準的な体型をしている。宝石商の娘=金持ち=お嬢様ってパターンか。探しにきた男は、執事というよりサラリーマンっぽい顔立ちで、七三分けの黒髪くろかみに、スーツ姿である(ジャングルにスーツって、動きにくいだろうに……)。

『そんなに大きな声をださないで頂戴ちょうだい。この人たちが助けてくれたから、見てのとおり無事よ。さあ、お金を渡してあげて』

 すでに貴重品を入手していたが、女性の厚意こういにより、俺たちは謝礼金をゲットした。手持ちのゴールドコインが倍になるほどで、これだけあれば、しばらく衣食住いしょくじゅうの心配はなさそうだ。女性キャラクターは、探しにきた執事とふたりでジャングルから脱出した(シャツは返却されなかった)。彼らの背中を見送った直後、地面が盛りあがって出現したドロニュル第2形態を、キルクスと協力して倒した。

「……ふう。考えてみれば、大金が手に入ったわけだし、宿屋の風呂代くらい、払ってもよくないか?」

 ふと、思ったことを口走った俺に、キルクスも小さく頷いた。ジャングルの最奥地は不明だが、貴重品をゲットした今、長居は無用だ。他にアイテムが存在したとしても、時間的にそろそろ引き返したほうが無難である。夜行性のモンスターが活動を始めると、ダンジョンの危険度が増す。木々の隙間から西陽にしびが射すうちに、俺たちはジャングルをあとにした。村へ移動すると、石板の前でそれぞれのレベルを再チェックし、宿屋に泊まる。

「やれやれ、けっこう疲れたな」

 ベッドに腰をおろした俺は、急に手足がだるくなり、少し休むことにした。合鍵をもって部屋をでたキルクスは、ひとりで風呂場へ向かった。すると、脱衣所に先客がいた。ふんどし姿の男は、少年と目が合うなり、笑顔で名乗った。

「よう、オレは[ファーレン]ってんだ。よろしくな!」


✓つづく
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