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041 それはないな

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「この袋、今、開けてみますか?」

「いや、中身の確認は村に帰ってからにしよう。……水浴びは、どうする?」

「あっ、そうでした。あのきれいな川があったところまで戻りたいです。……宿屋のお風呂は、有料ですし」

「できるなら、手持ちを節約したいよな。ひとまず、先に女性を迎えに行こうか」

「わかりました。アイテムは、ぼくが預かっておきます」

 キルクスは戦利品をリュックサックへ詰めると、女性のところへ向かった。岩陰にうずくまっている姿を発見したが、スカートを履いていないため、俺は胸当てを外し、上着を脱いで彼女へ手渡した。そのままでは目のやり場に困るので、腰に巻いてもらった。タンクトップ姿になった俺は、今更ながら脇毛がないことに気づいた。

 ……自分でったおぼえはないが、これはゲーム仕様の[ブレイク]なのか? ただでさえ、見た目は四十路よそじのおっさんだ。体臭まで再現されても、逆に腹が立つ。……そういえば、きのうからずいぶん汗をかいているが、ほとんどにおわないのは、ゲームの中だからか?

『助けていただき、ありがとうございます。わたしは、カメレオンダンジョンで素材集めをしている宝石商です。この森には鉱石こうせきが発掘できるポイントがいくつかあって、戦士でもないのに、つい奥地まで進みすぎてしまいました……』

「そうでしたか。ここは密林ですから、肉食動物もたくさんいるはずです。女性ひとりで探索するなんて、おすすめできません」

 キルクス少年が説教をすると、NPCは『お礼にこれを』といって[仲間のきずな]を差しだした。

「あれ? これって、ブレイクさんが持っていた指輪と似ていますね」

 受けとったキルクスが、俺をふり向く。近づいて少年の手許てもとを確認した。

「ああ、同じに見えるな」と、俺。

『これは[仲間のきずなプラス]といって、装備してボス階級クラスの敵を5体以上倒すと、指輪は金色に変わり[永遠のきずな]に進化します』

「永遠のきずな?」と、キルクス。

『金の指輪を嵌めたプレイヤー同士は恋人と認定され、クリアまで行動を共にできます。ハッピーエンドの条件を満たせば、結婚式を挙げることもできる貴重品です』
 
 俺とキルクスが結婚?

 アイテムの発動基準に性別は問われないようだが、おっさんと少年が[永遠のきずな]で結ばれるエンディングとは、いくらなんでもマニアックすぎやしないか。


✓つづく
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