君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「…うーん、駆け落ちって言っても、そんなみんなが想像しているようなものじゃなくて…。貴族だったおばあちゃんのところにおじいちゃんが教師としてやってきていて、温室育ちで外の世界のことを何も知らなかったおばあちゃんは小さいころから色々なことを経験してたおじいちゃんに惹かれて、そのまま…。って感じかな…?当時、おばあちゃんには親が決めた結婚相手がいたらしくて、二人が結ばれるには駆け落ちしかないって考えたらしいんだよね…。」
「…めちゃくちゃロマンチックじゃないか…!!」
「僕、物語の話してるのかと思った…。それだけ、愛し合ってたってことだよね…?」
「うん、だと思うけど…。」
「けど…?」さっきまでと打って変わり急に部屋の雰囲気が変わったのを感じる。

「…たまに、考えるんだよね…。駆け落ちして本当に幸せだったのかな、って…。後悔してないのかな。」
「ど、どうしたの…?」テオ君が今まで見たことないような暗い顔をしてる…。どうしたんだろう…。


「……二人とも駆け落ちした後生計をたてるために商売を始めたんだけど、そのあとすぐに世界的な不景気になっちゃって…かなり大変な時期を過ごしたらしんだよね…。食べるものがなかったり、住めるところがなかったり…。それで、慣れない生活をしていたのもあって、もともと体の弱かったおばあちゃん、僕のお父さんを生んでしばらくして死んじゃったんだよね…。それ聞くとさおばあちゃん、おじいちゃんなんかと駆け落ちせずに貴族のままの方が幸せだったんじゃないかって考えちゃうんだよね…。」テオ君…。今にも死にそうな顔してる…。
「…。」ソーン君もテオ君を見つめたまま何も言えないでいるようだった。



「…うーん。どう、なのかな…。全然関係ない僕が言うのもなんだけど…けど、幸せだったんじゃないかな…?…あ~これは、僕のお父さんとお母さんがよく言ってるんだけど…、『アランとアルスは私たちの幸せの象徴、私たちの宝。私たちが幸せだったから二人が生まれて、二人が生まれたからもっと幸せになった。』って…。だから、きっと幸せだったんじゃないかな?だからこそ、テオ君のお父さんが生まれて、今のテオ君がいるんだと思う。」そう言ってテオ君の表情を恐る恐る伺う。

「幸せ…。……宝…。」テオ君はそう言ったきり、何かを考えこんでいるようだった。

 僕、何かまずいことも言っちゃったのかな…。テオ君の悲愴な表情に思わず声をかけてしまったけど、余計だったのかも…。
 
「だ、だいじょ…

 ガタ!!

『大丈夫?』と言葉を続けようとしたその時、唐突にテオ君が立ち上がる。

「…ぁ。僕、行かないと…!」

 そう言い残し、テオ君は慌ただしく僕の部屋から出て行ってしまった。

 残された僕たちはテオ君を追いかけることもできず、ただ呆然と立っているしかできなかった。


 …どうしちゃったんだろう、テオ君…。
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