44 / 96
幕開け
41
しおりを挟む「ねぇ、アル。そういえばさ、あの子は?ほら、ピンク髪のふわふわした感じの子。」袖をくいくいと引っ張って聞いてくるソーン君。それ、あざといな…。
「ピンク…あぁ、テオ君のことかな?それが、授業終わった後どこかに行っちゃったんだよね…。」
「ん?テオ君って誰のことだ?」シンがいぶかしげに聞いてくる。そっか、シンとリーンは会ったことないのか。
「テオ=リーレン君だよ。さっき知り合ったんだ。ほんわかしてて小動物みたいな子なんだけど、
とっても頭がいい子なんだ。たしか、歴史学と古語学が満点だったんだけど、知らない?」
「俺は知らないな。その授業取ってないし。リーンは?」
「テオ=リーレン君ねぇ…。名前は聞いたことあるかな。親が商人だとかなんとか…。う~んよく分からないわ…。」そうか、顔が広いリーンでさえもあまり知らないのか…。
「僕も今までそんな子会ったことないな…。どこ出身の子なの?」
「僕もよく分からないんだけど、この国じゃないって言ってたかな。」
「言葉は?なまってなかったの?」
「うん。とっても流暢だったよ。だから始めはこの国の出身だと思ってた。」
「クラス一緒だったんだよね?今まで話したこととか見たことなかったの?」
「もともと人数が多い授業だったし、気づかなかったのかも。」
ソーン君が立て続けに質問をしてくる。すごい興味もってるな…。もしかして友達になりたんじゃ…!
ソーン君の止めどない質問に答えていたらいつの間にか学園の寮についていた。中に入ろうとした瞬間、ぐいっと襟をつかまれた。
「やっと来た。いつまで待たせるつもりだ。」
…なんとなく、そろそろ来るんだろうな、とは思ってたんだよ…。
「メルロス殿下、あの、苦しいです…。は、はなしてくださぃ…。」
「まったく。あちこち探したのにいないから、ここで待っていたというのに来るのが遅いぞ!」…え、なんで僕怒られてるの…?
「それより、メルロス殿下何か御用ですか?」
「あぁ、そうだ。お前明後日暇だろ?特訓してやるから、体育館に来い。試験が近くなるとなかなか時間が取れなくなるだろうから、配慮してやったんだぜ。絶対に来いよ。来なかったら今日みたいにあちこち探すし、待ち伏せるからな。いいな。」
去り際も見えなくなるまで「絶対に来いよー!」と叫びながらメルロス殿下は学園のほうに行ってしまった。いつにも増して念押しされたな…。またゲストとか来るのかな…。
寮の自室に戻り少し筋トレをする。筋トレはメルロス殿下に言われて毎日やっているが、筋肉はいっこうについてくれない。けれど心なしか姿勢はよくなったし、武術の授業でよろけたりすることが減った気がする。そのおかげか、前回の試験では二番目にいい成績の優をもらえた。もしかして、目に見えないだけで筋肉は少しずつついているのかもしれない。
とはいえ、依然、ほかの生徒との距離は物理的にも心理的にも遠く感じる。むしろ少し遠のいた気すらしてくる。メルロス殿下が横にずっといてアドバイスをすることが多いからか、見えないバリアみたいなのができているし、話しかけに行こうとしも同じ距離だけ離れて行ってしまう。最近は、あんなに話しかけていた先生すらも近づいてこなくなって、完全なるマンツーマンになってしまっている…。せめて、挨拶ができるようになりたいけど、何かいい方法はないものか…。
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
超絶美形な俺がBLゲームに転生した件
抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。
何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!!
別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。
この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる