君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 結局、あの後テオ君は見つからず、僕は授業が終わって待っている3人と合流するためにお兄ちゃんと一緒に移動しているが…やっぱり空気が重いな…。なんだかお兄ちゃん顔が険しいし…。絶対これカルロ殿下と話していたことが原因だよね。夏休む、何かあるのかな?それに、最後殿下は謝っていたような…?お兄ちゃんなら何か知ってそうだけど…。この空気感、聞けないよな…。

「…アル。」そんなことを考えていると、お兄ちゃんに話しかけられた。
「ん、なに?」
「その、リリーシュ殿下に会ったことあるの覚えてるか?」
「リリーシュ殿下に…?あぁ~小さい頃に会ったことあったんだっけ?う~ん、小さい頃すぎてあんまり覚えてないけど、なんか…怖かった?ような気がする。」
「怖かった、か…。そうか、そうだよな…。その後殿下に会ったことは?」
「ない、ね。そんな機会もなかったし。どうして?」
「いや、会ってないんならいいんだ…。気にするな。」そう言ってお兄ちゃんはまた険しい顔をしてなにか考え事を始めた。



『気にするな。』と言われると余計に気になってしまうな…。それになんで急にリリーシュ殿下のことを聞いてきたんだろう?もしかしてカルロ殿下の話と何か関係あるのかも…?そういえば、前に顔を見たがっているっていう話を聞いたような?その…ことか?その、ことなのか…!?…どうしよう、どうしよう。もしかして僕何かしちゃったのかな…?もしかしてメルロ殿下と武術の練習をしていることとか…?『一介の貴族が王族を独占するな!』みたいな…。それとも、前にフェリシテでパフェを5個食べた挙句、スコーンを全種10個ずつ買ったこととか…?でもあれは閉店間近で捨てちゃうからって買ったものなのに…。でもやっぱり買いすぎちゃったかな…?『甘いものを食べすぎだ!!節制をしろ!!』とか言われちゃうのかな?節制は、ちょっとやだな…。

 どうしよう…。心あたりがありすぎる…。それにリリーシュ殿下直々に言われるんだとしたら今度こそ牢獄行きだ…。



 暗い気持ちを抱え、僕は3人の待つ教室へとついた。

「じゃあ、俺はカルロ殿下に少し用事があるから。」
「え…?用事…?」

「あ、アランさん!アルを連れてきてくれてありがとうございます。」教室の中にいたのであろうシンが走ってこちらに来る。続いてリーンやアルス君も出てきた。
「いや、大丈夫だ。それより、このあと少し用事があるんだ。すまないが、こいつを頼むな。」
「もちろんです。私たちにお任せください。」とウインクと決めポーズをとるリーン。
「すまないな…。アル、いいか。絶対に一人でどこかに行くんじゃないぞ。」
「うん、わかった。」
「それじゃ、よろしくな。」
「「「はい。」」」お兄ちゃんの言葉に返事をする三人。軍隊みたいだな…。


「いや~アランさんから連絡来たときはびっくりしたぜ。アル、お前カルロ殿下に話しかけられたんだって?大変だったな~。」バンバンと肩をたたいてくるシン。これは、慰められているの、か…?
「大変…でもなかったよ。『夏休み暇か?』って聞かれただけだし。」
「なんであるにそんなこと聞いたんだろう?なにかパーティーがあるとか?」こて、と首をかしげるソーン君。似合うな…。
「それが僕にもよくわからないんだよね。」ここで、もしかしてリリーシュ殿下と…なんて話したら、きっと大惨事だ…。

「カルロ殿下ってさ、いつも笑顔だけど目が笑ってないのよね…。なんか、こう…闇を抱えている感じっていうか…。ま、そこがいいのだけれど。」
「リリーシュ殿下も少し怖くねぇか?オーラというかさ、ザ・王族みたいな感じで。いつも会うとき圧倒されるんだよな。」
「あぁ、分かるかも。完璧人間って感じよね。隙がないっていうか。」
「気に入ったものへの執着がすごいよね。」虚ろな目でつぶやくソーン君。あれ?

「え、ソーンお前、第1殿下に会ったことあるの?」
「あ…あぁ!いや!!遠くから!遠くから見たことあるんだ!やっぱりさ、威厳というかなんというか、すごいよね!!」

 そうか、僕は小さいころの記憶しかないけど、「怖い」っていう印象はあながち間違っていなかったのかも…。
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