君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 授業が終わる10分前、それぞれの授業を受けているであろう3人に図書館で大人しくしているといいながらこっそりガゼボに行っていた事実を隠すため、僕は急いで図書館へと向かっていた。
 数十分いるつもりが持ってきた本が思いのほか面白く、つい読みふけってしまいこんなことになってしまったのだ。3人に黙ってガゼボに行っていたのがばれてしまったらどれだけ怒られるか想像しただけで鳥肌が立つ。


 近道をするために中庭を横切ろうとしたとき、お兄ちゃんの声が聞こえてきて僕は慌てて低木の茂みに隠れた。そっと様子をうかがうとお兄ちゃんはだれかとベンチに座って話しているようだった。え、あれって…。



 お兄ちゃんの隣に座っていたのはなんと、第2王子のカルロ殿下だった。学年は確かお兄ちゃんのほうが一個上なんだけど、それは殿下が一年留学に行ってたからで、年齢自体は同じなんだっけ…?昔から何かと面識はあったっぽいけど、それにしても珍しい組み合わせだよな…。

「あいつ、リリーシュがアルの顔を見たがっている。」
 僕!?リリーシュって第1王子じゃないか!!りリーシュ殿下と会ったことなんてあったっけ…?
「それは、無理ですね。」
「でも、どこかのタイミングで行ってやって方がいいかもしれん。じゃないとあいつ強行突破するぞ。」
「考えて、おきます…。」

 そう言ってしばらく沈黙が流れた。そぉーっと2人の様子を見てみるとどちらも苦虫を噛み潰したような顔をしていた。あ、カルロ殿下とリリーシュ殿下って仲があまりよくないんだっけ…?あんまり話したくないのかな?

「そういえば、ソフィア王女から何か連絡はありましたか。」
 ソフィア王女というのはカルロ殿下の双子のお姉さんで、とっても優しくて美人なんだ。昔はよく遊んでもらっていたんだけど、今は留学に行っていてなかなか会えていない。

「手紙で連絡を取っている。あっちの生活が楽しいみたいだ。」そう言ってカルロ殿下は胸ポケットから手紙を取り出した。それは前にここで見たものと同じものだった。そうか、あの手紙見覚えがあると思ったら、ソフィア王女からのものだったんだ…。

「まぁここでの生活よりは楽しいでしょうね…。」
「お前がそれを言うか。」
「すみません…。」
「まぁ、よい。ところで、そこに隠れてるやつ、盗み聞きとはいい度胸だな。今なら許してやるから顔を見せろ。」
 ば、ばれてる…。どうしようもしかして聞いちゃいけない内容だったのかな…。殿下、許してやるからとか言ってるけど、この声色絶対許す気ないよね…!でも、もうばれてるんならここでうじうじしてるより出ていったほうがいい気が…。

「あの、その…本当にごめんなさい。盗み聞きなんてするつもりじゃなくて、たまたま通りがかっただけで…。」
「アル!?どうしてここに?」
「なんだ、アルス君か。久しぶり。元気にしてたかな?驚かせちゃってごめんね。怒ってないから安心して。」
「殿下、お久しぶりです…。あの、本当にすみません。聞く気なんてなかったんです。」
「あはは、大丈夫だよ。聞かれて困るような話はしてないし、僕とアルス君の仲じゃないか!まぁ、アランのほうは話があるっぽいけど。」

 あぁ、怒られるかも...。






「アル、図書館にいるんじゃなかったのか?」
「ちょっと用事思い出しちゃって…。」
「用事?」
「うん、庭園のほうに…。」
「今回は無事だったからよかったものの、満月が近いんだ。気を付けろ。ただでさえ前は症状がひどかったんだ。今回も何が起こるかわからない。授業が終わるまで一緒にいる。」
「ありがとう…。」あれ、意外とすぐ終わった…。



 図書館までの道のり、僕は気になることをお兄ちゃんに聞いてみた。
「あ、お兄ちゃんって去年闘技会に出るつもりだったの?」
「あぁ、周りが出ろってうるさいから仕方なくな…。」
「今年はどうするの?」
「出るつもりはない。」
「そっかぁ…。」闘技会でのお兄ちゃんの姿ちょっと見てみたかったかも…。
「…出てほしかったか?」
「ううん!全然!でも、去年優勝候補だったんでしょ?」
「まぁ、ロストには負けるだろうけど、カルロ殿下にはどうだろう。戦ったことも、戦っているとこも見たことないから何とも言えないな…。」
「でも優勝候補になるくらいだから強いんでしょ?いいなぁ!優勝したら何かもらえたりするの?」
「賞金がもらえたりするけど、優勝しなくても強かったら騎士団から声がかかったりするな。まぁ表面上はただのイベントだけど、実際は将来魔術とか武術を使った職業に就きたい人にとってはアピールする場所になるな。」
「なるほど。」

 まぁ聞いたところで、なんだけど...。
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