上 下
43 / 71
村づくり 初級編

初めての発芽とスライム実験の報告

しおりを挟む
 魚を持って現れたカワセミ君。

 名前もズバリ『カワセミ』と命名され、本人は大層喜んでいたそうだが、余りの手抜きに私は一人心の中で謝っておいた。

 まあ、そんな訳で我が家には定期的に新鮮な川魚が届くようになり、日本にいても中々食べる機会の少ない鮎や岩魚が食卓が並ぶようになった。

 川魚は独特の苦味もあり、年少組を始めエルフの若い子達はちょっと苦手そうにしている。そんな中以外にもダンゴは酒のツマミにちょうど良いと喜び、鮎の塩焼きを頭から丸かじりで骨ごとバリバリ食べていたりしている。

 因みに、カワセミ君よると、寒くなると大きな魚が川を上って来るとの事なので、鮭の遡上が期待できる。

 うんうん。段々と異世界の食材が増えてきて何よりである。

 そんな感じで少しづつ食生活が変わっていく中、私達が植えた野菜にも変化が現れ、トウモロコシの芽が出てきたり、ジャガイモも種芋からしっかり根ずいてきたりと、夏に向けて収穫が大変楽しみなのである。




 「あなた、このペットボトル捨ててきて」

 優希から、ペットボトルの入ったゴミ袋を手渡され、へいへいと勝手口からスライム池へ向かう。

 そう、スライム池である。

 数日前に実験的にコメのとぎ汁を入れていたスライム池だが、何だかとんでも無いことになってしまっているのだ。

 「おーい、スラ吉、ご飯だよ~」

 私がスライム池の前で声を掛けると、池の中央にある巨大な半透明の塊がピョンと飛び跳ねながら私に近ずいて来る。

 そうなのだ、私が実験的に米の研ぎ汁を中心にビニールやらペットボトル、残飯などを与えていたら、最初は掌サイズが徐々に大きくなり、その内お互いを吸収してさらに巨大化、最終的には私の腰辺りまである巨大なスライムになってしまったのだ。

 更に驚いたことに、巨大化したからなのか不明だが、どうやら知性も発達したらしく人に懐くようになってしまったのである。

 「よーしよしよし」

 私はスライムの頭?を撫でるとスライムはブルブルと震えて私にすり寄って来る。

 「今日はペットボトルを頼むな」

 私は池の中にペットボトルをぽんぽんと放り込むと、スライムはブルンとひと揺れした後、ピョンとペットボトルの上へジャンプしてそのまま体内にペットボトルを吸収する。

 スライムの中ではペットボトルの表面に気泡が出来始め、しばらくすると細かい泡がシュワと湧き出てきて溶け始める。

 うーん、いつ見ても不思議な光景だなぁ。

 私はしばらくスライムを見詰めていたが、ルルに呼ばれたので家の中へ戻っていった。




 空が夕焼けに染まる頃、雄介達を筆頭にエルフ娘達やマシュー達が食事のために戻ってきた。

 今日の晩ご飯は、イノシシ肉を使った生姜焼き定食だ。

 私もキャベツの千切り隊長として頑張った逸品である。

 「このお肉はねー、パパが獲ってきたんだよー」

 ミミズク娘こと、ミミーがムフーと胸をはって自慢げにみんなに話している。

 みんなは「おー!」とか「すごいね!」などミミーを撫でながら褒め、ミミーも嬉しそうに目を細めている。

 「ところでオヤジ、そこにスラ吉が居るんだけど、どうしたの?」

 雄介が味噌汁を啜りながら私の足元を見る。

 「うーん、わからん。今日は特に懐かれてる感じでずっと付いて来るんだよ」

 私は自分の足元にいるスラ吉を見ながら首をかしげる。

 「何だか犬みたいね」

 優希も気になるらしく、生姜焼き食べながらスラ吉を見ている。

 「スラ吉おいでー」

 ルル達年少組がスラ吉を呼ぶとスラ吉はプルンと小さく揺れ、何となくだが私を方をジッと見つめている気がしたので、

 「行ってよし!」

 私がスラ吉に命令するとブルブルと震えたあと、ピョンピョンと飛び跳ねながらルル達の方へ向かっていった。

 「ますます犬みたいね」

 優希はルル達元へ向かって行ったスラ吉を見てしみじみと呟いた。

 私は千切り隊長自慢の千切りを自画自賛しながら食べつつ、何となしにスラ吉を観察していると、ルル達はスラ吉に生姜焼きの切れ端を食べさせようとして切れ端をスラ吉の頭の上に置く。

 すると、生姜焼きの切れ端がズブズブとスラ吉の中に入っていき、シュワッと泡が立ったと思ったらすぐに吸収されてしまった。

 年少組が「おお!」と驚いていると、よほど美味しかったのかスラ吉はグニグニと左右に揺れて喜んでいた。




 夕食も終わり、年少組と子供達は家に戻り、大人達は食後のコーヒーを楽しみつつ各作業の報告を行う。

 「今日で池の砂利を敷き終わったから、明日水を流してみようと思うんだ」

 雄介の報告に私たちは「おぉ」と驚き、それじゃ全員で見にいこうかとの話になった。

 「ため池が完成したら用水路を掘って、そのまま下流へ戻すか。やっぱり結構な大工事だよなぁ」

 「確かに、ショベルカーや軽トラなんて凄い道具があっても結局は人だからな」

 ラルフが頷きながら雄介のぼやきに答える。

 「俺らのところも二人だと思ったように仕事が進まねぇな」
 
 「予定よりも工事が多くれておるな」

 マシューとダンゴがそれぞれの感想を話す。

 「まぁ、人手不足は初めからなので、のんびりやりましょう。私も雄介もテント生活に慣れましたしね」

 私は肩を竦めながらマシューとダンゴに気にしないようにお願いする。

 「洋一さん、私達のために申し訳ありません」

 ラナがしょぼんと頭を下げる。

 「ラナ、気にしなくて良いのよ。娘たちを外に出すぐらいなら自分達が外で寝るって、当の本人が言ってるんだから」

 優希がラナを慰めながら、私の方を向いてウインクする。

 「そうだぞ、ラナ達が気にする必要は全くないぞ」

 私は努めて明るく伝え、ラナはお礼を言って頭を下げる。

 何となく話が途切れた感じになったので、今日はこれでお開きにとなりかけたところで、ラルフさんから人繰りに関してアイデアがあると言ってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...