愛すべき人

第六章

変わらぬ毎日

  ｢あの、藤堂さん。ついに昭仁さんに子供が出来ました｣
  ｢え、そうか。ついに出来たんだなおめでとう。今何周目なんだ？｣
  ｢3週間って言ってましたよ。はぁー、父親になるんですね俺｣
  ｢鈴木が父親とかなんか似合わない｣
  ｢え、俺のイメージどうなってるんですか？｣
  ｢まぁ、それは自分で考えてみろ｣
  ｢えー、そんなぁ｣
  吉田さんに子供が出来たことを心から喜ぶことが出来て、俺はまともになったんだと嬉しく思ってしまった。こういう喜び方は良くないとは思うけど、その時の俺はそう思うくらい追い込まれていた。

  昼ごはんになり高橋さんは相変わらず普通にベンチに座って、俺が作った弁当を楽しそうに話しながら食べていた。
  ｢あ、吉田さん子供が出来たそうですよ｣
  ｢え！そうなんですか？おめでとうございます｣
  ｢何で俺におめでとうを言うんですか？｣
  俺が少し呆れたように言うと、高橋さんはすみませんと謝ってきた。別に怒った訳では無いので、そんな悲しそうな顔で謝られるとこっちが悪いことした気になった。
  ｢別に怒ってませんよ｣
  ｢はぁー良かった。子供かー･･･そう言えば藤堂さんは子供好きですか？｣
  ｢まぁ、子供は嫌いじゃないですよ｣
  ｢ですよねぇー俺も子供好きなんですよ。子供ってすごい可愛いですもんねぇー｣
  高橋さんは本当に子供が好きみたいで、楽しそうに親戚とかの子供の話をし始めた。俺もだんだん楽しくなってきてつい話が盛りあがってしまった。
  ｢え、てことは会社の上司が叔母さんなんですね。じゃー気持ち的に楽ですね知り合いが会社にいると｣
  ｢いいえ、逆にいるとやりずらいですよ｣
  ｢そうなんですか？俺は頼る人がいていいと思いますけどね｣
  ｢いやいやむしろ逆で面倒臭い仕事押し付けられますから｣
  ｢え、確かにそれは嫌ですね。あ、もうすぐでお昼休憩終わっちゃうので行きますね｣
  ｢あぁ、もうそんな時間ですか。｣
  ｢はい。あの、藤堂さん。今日は普通に俺と話してくれてありがとうございました。正直大丈夫かなって心配だったので｣
  ｢いや、俺もちゃんと喋れるか心配だったんですけど、以外にちゃんと喋れました｣
  ｢はぁ、良かったぁー。あの、また明日とかいますか？｣
  ｢ええ、会社を休まなければ｣
  ｢じゃーまた明日！｣
  高橋さんは俺に全力で手を振って来たので、俺も軽く手を降っておいた。

  ｢祐也。昼一緒にいたの彼氏？｣
  叔母が面白そうに俺に聞いてきた。
  ｢いいえ、違います｣
  ｢へぇーそうなんだ。幸せオーラ凄く出てたけどね｣
  俺は幸せに感じている事を実感している部分もあるので、｢べつに出てない｣と口ごもった。
  ｢ふーん･･･どうせまた変な意地でも張ってるんでしょ？｣
  ｢別に意地張ってない｣
  ｢でも中途半端にするんじゃないよ。逆に相手を傷つけるからね｣
  そう言って叔母は俺の肩を軽く叩いてその場を去って行った。
  ｢そんな事分かってるよ･･･｣
  そして俺は高橋さんに連絡をし今週の土曜日に、パソコンを一緒に買いに行く事にした。