愛すべき人

コスモス

文字の大きさ
上 下
23 / 35
第四章

未だに惹かれる心 ※鈴木 武臣目線になります。

しおりを挟む
  俺達2人は幼い頃からずっと一緒だった。俺の両親は仕事で忙しく、俺の相手をしてくれることは無かった。しかし隣に住んでいた、まーちゃんの両親は俺を本当の息子のようにいつも可愛がってくれた。そんなある日俺が中学1年になった頃、初めてまーちゃんの事が好きだと俺は気がついた。まーちゃんが他の人と仲良くしている事が許せなくて、よくまーちゃんに当たり散らしていた。俺はどうしていいか分からず、ずっと1人で悩んでいるとまーちゃんが「俺の事が嫌い?」と聞いてきたので、俺は思わずむしろ大好きだと言ってしまった。するとまーちゃんは「俺も好きだよ。」と、照れくさそうに笑いながら俺に言ってきた。俺はその好きは友達としてなのか、それも俺を男として好きなのか、気になって仕方がなかったのですぐにどっちなのかを聞いた。するとまーちゃんは「もちろん一人の男としてだよ。」と言ってきた。その時俺はつい嬉しさのあまりにまーちゃんに抱きついてしまった。
  それからの毎日は楽しくて仕方が無かった。たとえ学校が違えども、お隣同士だったのでいつでも会おうと思えば会えるし、必ず学校の行きと帰りは途中まで一緒に行ったりしていた。そしてまーちゃんの両親はとても察しがいい人達で、俺達2人が付き合っている事にすぐに気がついた。それでも俺達が付き合っていることに対して反対すること無く、むしろ応援までしてくれるほどだった。あの頃の俺はまーちゃんと結婚をして、普通の家庭を築けるものだと思っていた。
  しかしある日の夕方。いつも通り2人仲良く帰っていると、突然母が物凄い形相で家から出てきて俺の顔をビンタした。その時俺は何が起きているのか分からず、一瞬ボーッとしてしまった。俺をビンタした後母は、二度と俺に近づくなとまーちゃんに言って、母は父と協力して強制的にまーちゃんを家に返した。しかし俺は当然母と父に反抗して、毎日一緒に学校へ通った。すると今度は怒った父が俺を殴り、そしてまーちゃんの両親に息子に二度と近づかせないでくれと言い金を渡した。しかしまーちゃんの両親は、息子達はせっかく愛し合っているのにそんな勝手なことは出来ないと、父に金を返金した。それに怒こった父は近所にあらぬ噂を流したり、まーちゃんの両親が勤める会社に圧力をかけたり、色々な嫌がらせを行っていた。それに気がついたまーちゃんは、父に直接止めるようにお願いした。すると父は、やめて欲しいなら息子と二度と関わらない事を約束するようにと、要求してきた。まーちゃんはその条件をのみ俺と二度と関わらないことにした。

  「まーちゃんは、結婚してないのか?」
  「いいや、結婚してたけど昭仁が5歳の時に出ていかれちゃった。」
  「そうか。じゃー俺と同じだな。」
  するとまーちゃんは少し苦笑いをし、一言そうだねと応えた。
  「なぁ、もう一度寄りを戻さないか?」
  「・・・ダメだよ。こんな俺のためにたーちゃんの人生を棒に振るって欲しくないんだ。だからやり直すんだったらもっと若い子にしなよ。」
  「俺はあの時ちゃんとまーちゃんの変化に気がついて、そのまま連れ去れば良かったって未だに後悔してる。だからそんな悔しい思い俺は二度としたくない。」
  「そんなの勘違いしてるだけだよ。」
  「勘違いなんかしていない。勘違いなんかでわざわざお前に会いになんて来る訳が無いだろ。」
  「俺はもうたーちゃんの事なんて好きじゃない!」
  そう言ってまーちゃんはソファーから立ち上がり、その場を立ち去ろうとしたので俺はまーちゃんの肩を両手で掴んだ。
  「ならせいぜい俺の顔を見てから振れ。じゃないと俺は諦める気は全く無い。」
  まーちゃんはずっと下を向き軽く肩がプルプルと震えてきた。そしてまーちゃんは俺の顔を見て泣きながらこう言った。
  「そんなの・・・そんなの出来るわけがないだろ!たーちゃんの顔なんて見たら俺はまたたーちゃんの事を好きになっちゃうじゃないか!ずっとずっと忘れようと必死だったのに、どうしてもたーちゃんの事が忘れられなくて、それに気がついたのか妻には愛想をつかされて出ていかれてしまったし、息子にはすごい心配をかけてしまうし。俺は、俺は・・・ッ!」
  俺はまーちゃんをぎゅっと抱きしめたて言った。
  「俺の事まだ好きでいてくれてよかった。」
  「馬鹿じゃないの。こんな歳をとったΩなんて何の利益もないよ。」  
  そしてその言葉にイラッと来た俺は、まーちゃん目をじっと見て言った。
  「俺はΩだからとか歳をとってるとか関係ねぇ、利益がどうとかもどうだっていい。俺が本当に欲しいのはお前自身だ!」  
  するとまーちゃんは泣きながら俺に何回も謝り、俺にギュッと抱きついてきた。そして俺はただただ無言で頭を撫でながら、泣き止むのを待った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

記憶の欠片

藍白
BL
囚われたまま生きている。記憶の欠片が、夢か過去かわからない思いを運んでくるから、囚われてしまう。そんな啓介は、運命の番に出会う。 過去に縛られた自分を直視したくなくて目を背ける啓介だが、宗弥の想いが伝わるとき、忘れたい記憶の欠片が消えてく。希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。 輪廻転生。オメガバース。 フジョッシーさん、夏の絵師様アンソロに書いたお話です。 kindleに掲載していた短編になります。今まで掲載していた本文は削除し、kindleに掲載していたものを掲載し直しました。 残酷・暴力・オメガバース描写あります。苦手な方は注意して下さい。 フジョさんの、夏の絵師さんアンソロで書いたお話です。 表紙は 紅さん@xdkzw48

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

ベータのクセにこんな可愛いとか、嘘だ! 【オメガバース】

天災
BL
 ベータのクセにこんなに可愛いとか、嘘だ!

処理中です...