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町内婦人会に欠席連絡に行った夫が帰ってこない
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未だに婦人会がある商店街に引っ越す人生になるとは思わなかった。
三ヶ月に一度、夫婦ばかり住んでいて、子供がいる家庭の少ないご近所の奥様方と混じって私は二十代にして婦人会に出席するのだ。
もちろん、婦人会では一番若い。でも、そんなことはどうでもいい。
私の悩みはただひとつ。
「……あーあ」
あの人たちは三十代。なかなか美人揃いだ。
「…………」
そして、私は二十代。かなり可愛い部類に入ると思う。
「…………うわぁ」
でも十年後の美貌を保てる自信はない。
結婚したばかりの夫に、愛し続けてもらえる自信が。
だから求めてしまう。
「あぁぁんっ!あっ!」
夫が私を抱き寄せるたびに、私は激しく喘ぐ。
夫の背に爪を立て、その唇から洩れる吐息を飲み込むようにキスをする。
夫はいつものように優しく微笑みながら、それでもしっかりと私を求めてくれる。
「あんっ! だめぇっ!もっとぉっ!!」
私がどんな声を出しても、どんな風に乱れても、夫は変わらずにいてくれた。
こんなにも美しい肉体の夫が、なぜ私なんかを選んでくれたのかわからないけど。
「ああぁっ!! いいよぉっ!!」
私は夫を愛し続けた。私たちはアツアツ夫婦というわけだ。
ある日のことだった。
その日は婦人会だったが、仕事の用事が入ってしまい、夫に欠席連絡を頼むことになった。
「会場隣でしょ?俺行ってくるよ。」
「ありがとう~!」
夫はとても優しい人なのだ。
しかし、その日、夫が帰ってこなかった。
『用事が出来て、今日は帰れない。』
そういうメッセージが残されていた。
「仕方がないなぁ。お風呂入って寝ようっと」
私は特に気にせず、一人寂しく眠りについた。
でも、隣の家からかすかに聴こえてきた。
「…ぁんっ!はげしいぃっ!」
女の声だった。
「あぁんっ! いくぅっ!」
でも、なんとなく気になって耳を傾けていたら、聞こえた言葉はそれだけじゃなかった。
「あぁっ!大本さんっ!」
え?家の苗字?
「大本さぁんっ!」
聞き間違いじゃない。確かにそう言っていた。
私は慌てて起き上がり、玄関に向かった。
ドアの向こうには二組の男女がいた。
一組は夫婦らしき二人。もう一人は……私の夫だった。
「何…してるの…?」
思考が追いつかない。頭が真っ白になるってこういうことなんだね……。
二人は驚いた顔でこちらを見ている。
「ど、どうしてここにいるの!?」
夫の声で我に帰った。
「それはこっちのセリフだよ!」
思わず怒鳴ってしまった。
「あなたこそここで何をしているの!?」
半裸の夫は慌てふためく。
「違うんだ!これは……」
「何が違うっていうの!?」
私は泣きそうな気持ちになりながらも、怒りをぶつけ続ける。
「言い訳なんて聞きたくない!」
もう止まらなかった。
「この浮気者!!」そして、私は何も言わず家を飛び出した。
「待ってくれ!」
後ろから聞こえる夫の叫び声を振り切って、ひたすら走った。
どこに向かって走っているのか、自分でもわかっていなかった。
ただ走り続けた。涙が頬を伝う。
しばらくすると、雨が降り出した。土砂降りの中、私は立ち止まった。
思い上がりだった。
夫には愛されていると思っていた。信じて疑わなかった。だけど違ったのだ。夫は私のことを好きではなかった。
私だけだった。夫と一緒になれると信じていたのは。
「ふ……ふふっ……あははは」
笑えてきてしまった。バカみたいだ。
「あーあ、終わっちゃったなぁ」
ずっと独り身でいればよかった。そしたら、あんなことにはならなかった。
「帰ろうかな……」
どこに? 家に帰る場所などあるのだろうか。
その時だった。
――ドンッ! 誰かにぶつかった。
「大丈夫ですか?」
見上げると、そこには綺麗な女性が立っていた。
「……」
無言のまま、私は彼女を見た。彼女は私に手を差し伸べてくる。
「風邪ひいちゃいますよ?」
その手を握ることなく、私は言った。
「ねぇ、浮気されたことありますか?」
「え? ないですよ」
「へぇ、羨ましいです。きついですよ」
口が勝手に動く。まるで自分の身体ではないような感覚だ。
「彼氏さんいらっしゃいます?もしかしたらご結婚されてます?」
「し、してませんからっ!」
女性は逃げてしまった。そりゃそうか。いきなりこんな質問されたら困るよね。
後ろから足音がした。夫だ。他人と肉体的に関係があるくせに…!
「なんで!?」
私は振り向いて、夫に問うた。
「なんで浮気した?どうして普通に私とヤった翌日に他の女とヤってんの?」
夫は黙っている。
「答えろよ!!」
私は夫の胸ぐらを掴んだ。
「……ごめん」
夫は謝ってきた。
「そんな言葉が聞きたいんじゃなくて!」
私はさらに詰め寄る。
「……本当にごめん」
夫は涙を流していた。
「え?ちょっ……」
夫は走っていなくなってしまった。
雨は強くなっている。私は全身びしょ濡れになっていた。
「あれ? こんなところに公園なんてあったっけ?」
目の前には遊具のない小さな広場があった。
「あんなクズ男だったとはなぁ…」
私はベンチに座っていた。
「はぁ……どうしよう」
離婚届を書こうにも、夫が居なければ意味がない。
「まぁ、そのうち帰ってくるだろうけどね」
そうして家に帰るが、夫はいなかった。どうせ浮気相手のところだろう。
びしょびしょで風邪でも引きそうな状態で椅子に座った。
夫は帰ってこない。
三ヶ月に一度、夫婦ばかり住んでいて、子供がいる家庭の少ないご近所の奥様方と混じって私は二十代にして婦人会に出席するのだ。
もちろん、婦人会では一番若い。でも、そんなことはどうでもいい。
私の悩みはただひとつ。
「……あーあ」
あの人たちは三十代。なかなか美人揃いだ。
「…………」
そして、私は二十代。かなり可愛い部類に入ると思う。
「…………うわぁ」
でも十年後の美貌を保てる自信はない。
結婚したばかりの夫に、愛し続けてもらえる自信が。
だから求めてしまう。
「あぁぁんっ!あっ!」
夫が私を抱き寄せるたびに、私は激しく喘ぐ。
夫の背に爪を立て、その唇から洩れる吐息を飲み込むようにキスをする。
夫はいつものように優しく微笑みながら、それでもしっかりと私を求めてくれる。
「あんっ! だめぇっ!もっとぉっ!!」
私がどんな声を出しても、どんな風に乱れても、夫は変わらずにいてくれた。
こんなにも美しい肉体の夫が、なぜ私なんかを選んでくれたのかわからないけど。
「ああぁっ!! いいよぉっ!!」
私は夫を愛し続けた。私たちはアツアツ夫婦というわけだ。
ある日のことだった。
その日は婦人会だったが、仕事の用事が入ってしまい、夫に欠席連絡を頼むことになった。
「会場隣でしょ?俺行ってくるよ。」
「ありがとう~!」
夫はとても優しい人なのだ。
しかし、その日、夫が帰ってこなかった。
『用事が出来て、今日は帰れない。』
そういうメッセージが残されていた。
「仕方がないなぁ。お風呂入って寝ようっと」
私は特に気にせず、一人寂しく眠りについた。
でも、隣の家からかすかに聴こえてきた。
「…ぁんっ!はげしいぃっ!」
女の声だった。
「あぁんっ! いくぅっ!」
でも、なんとなく気になって耳を傾けていたら、聞こえた言葉はそれだけじゃなかった。
「あぁっ!大本さんっ!」
え?家の苗字?
「大本さぁんっ!」
聞き間違いじゃない。確かにそう言っていた。
私は慌てて起き上がり、玄関に向かった。
ドアの向こうには二組の男女がいた。
一組は夫婦らしき二人。もう一人は……私の夫だった。
「何…してるの…?」
思考が追いつかない。頭が真っ白になるってこういうことなんだね……。
二人は驚いた顔でこちらを見ている。
「ど、どうしてここにいるの!?」
夫の声で我に帰った。
「それはこっちのセリフだよ!」
思わず怒鳴ってしまった。
「あなたこそここで何をしているの!?」
半裸の夫は慌てふためく。
「違うんだ!これは……」
「何が違うっていうの!?」
私は泣きそうな気持ちになりながらも、怒りをぶつけ続ける。
「言い訳なんて聞きたくない!」
もう止まらなかった。
「この浮気者!!」そして、私は何も言わず家を飛び出した。
「待ってくれ!」
後ろから聞こえる夫の叫び声を振り切って、ひたすら走った。
どこに向かって走っているのか、自分でもわかっていなかった。
ただ走り続けた。涙が頬を伝う。
しばらくすると、雨が降り出した。土砂降りの中、私は立ち止まった。
思い上がりだった。
夫には愛されていると思っていた。信じて疑わなかった。だけど違ったのだ。夫は私のことを好きではなかった。
私だけだった。夫と一緒になれると信じていたのは。
「ふ……ふふっ……あははは」
笑えてきてしまった。バカみたいだ。
「あーあ、終わっちゃったなぁ」
ずっと独り身でいればよかった。そしたら、あんなことにはならなかった。
「帰ろうかな……」
どこに? 家に帰る場所などあるのだろうか。
その時だった。
――ドンッ! 誰かにぶつかった。
「大丈夫ですか?」
見上げると、そこには綺麗な女性が立っていた。
「……」
無言のまま、私は彼女を見た。彼女は私に手を差し伸べてくる。
「風邪ひいちゃいますよ?」
その手を握ることなく、私は言った。
「ねぇ、浮気されたことありますか?」
「え? ないですよ」
「へぇ、羨ましいです。きついですよ」
口が勝手に動く。まるで自分の身体ではないような感覚だ。
「彼氏さんいらっしゃいます?もしかしたらご結婚されてます?」
「し、してませんからっ!」
女性は逃げてしまった。そりゃそうか。いきなりこんな質問されたら困るよね。
後ろから足音がした。夫だ。他人と肉体的に関係があるくせに…!
「なんで!?」
私は振り向いて、夫に問うた。
「なんで浮気した?どうして普通に私とヤった翌日に他の女とヤってんの?」
夫は黙っている。
「答えろよ!!」
私は夫の胸ぐらを掴んだ。
「……ごめん」
夫は謝ってきた。
「そんな言葉が聞きたいんじゃなくて!」
私はさらに詰め寄る。
「……本当にごめん」
夫は涙を流していた。
「え?ちょっ……」
夫は走っていなくなってしまった。
雨は強くなっている。私は全身びしょ濡れになっていた。
「あれ? こんなところに公園なんてあったっけ?」
目の前には遊具のない小さな広場があった。
「あんなクズ男だったとはなぁ…」
私はベンチに座っていた。
「はぁ……どうしよう」
離婚届を書こうにも、夫が居なければ意味がない。
「まぁ、そのうち帰ってくるだろうけどね」
そうして家に帰るが、夫はいなかった。どうせ浮気相手のところだろう。
びしょびしょで風邪でも引きそうな状態で椅子に座った。
夫は帰ってこない。
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