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あなたは意外と冷めていた
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初めてのデートで、彼氏が冷めていたらどう感じるだろうか。
「あー……」
とにかくこのままではいけない気がする。
まずは彼の気持ちを探ってみよう。
「ねえ、真也くん」
「ん?」
「あのさ、その……私たちって付き合ってるんだよね?」
「ああ、そうだよ」
「そっか……。じゃあさ……手、繋がないの?」
真也はきょとんとした顔になり、「えっ!?」と驚きの声を上げた。
「いや、だってほら! 付き合ってたら手を繋ぐものでしょ? 私、そう聞いたんだけど!」
「えっと……そうなのか?」
「うん、多分だけどね」
「でもなぁ……いいのかなぁ……」
彼は煮え切らない態度だった。もしかして手を繋ぎたくないのかとも思ったが、それは違うらしい。
「まあいいか。俺から行くよ」
そう言って真也は私の手を握った。
温かい手だ。そして、少し汗ばんでいるような気もした。
「これでいい?」
「う、うん……。なんかちょっと恥ずかしいな……」
ちょっと冷めてない?とは聞けなかった。彼の表情からはそんな様子は全く感じられないし、何よりせっかくの初デートなのだ。
それに、もし彼が冷めた男ならわざわざこんなことをしてこないだろう。だからきっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。
少し前***
『今日、初デートに行かない?』
朝起きてからすぐにスマホを開き、私はメッセージを送った。昨日の時点で約束をしていたわけではないけれど、それでもなんとなく連絡をしたかったのだ。
すると、すぐに既読マークが付いた。
『いいけど、どこに?』
やっぱり、デートに行くなんて急すぎたかもしれない。
私は返信を打ち込む前に、慌てて行き先を考えた。
『どこでもいいんだけど……』
『無計画かよ(笑)』
笑いながら、真也はメッセージを返してきた。
むぅ……。確かに、行きたいところがあったわけじゃない。ただ、彼とどこかに行きたかっただけなんだ。
『じゃあ、遊園地とか?』
『おっけー!』
遊園地かぁ……。小さい頃に家族で行ったきりだなぁ……。
そんなことを考えているうちに、待ち合わせの時間になった。***
「お待たせ~」
「おう」
真也はいつものように片手を挙げて挨拶をする。今日の服装は黒のジャケットに白シャツというシンプルなものだ。とてもよく似合っていると思う。
「それじゃ、行こうぜ」
私たちは電車に乗り込んだ。休日ということもあり、車内はかなり混んでいた。
「すごい人だね……」
「ああ……。これじゃ座れないかもな」
私はドア付近に立ち、真也はその隣に立った。
「ごめんね、こんなことになって……」
「いやいや、気にすんなって」
今日は少し楽しそうだ。なんでだろう。
「ねぇ、どうして今日は機嫌が良いの?」
「別に普通だよ」
「本当~?」
「本当だって」
そう言う割には声が弾んでいるように聞こえた。
でも理由がわかった。随分と不純なものだ。私の格好が前よりセクシーだからだ。
「なんだよその目は……。俺はそんなつもりで言ったんじゃねえぞ」
「私のどういうとこがいいんですかー?」「いや、お前のそういうところ嫌いだけど……」
「えぇ!?」
酷い言われようだ。私が一体何をしたというんだろう。
「冗談だよ。でも、本当に可愛いと思ってるから安心しろって」
「……」
そう言われると何も言えないじゃないか……。いやまて。
「だからどこ?肩?それとも太もも?」
「ふ、太ももです…」顔を赤くしながら真也は答えた。
どうしようもない変態さんだ。私を辱めるためだけにそんなことを言うなんて。
「もう!このドスケベ!」
「はいはい……」
「……まあ、許してあげよう」
***
電車を降り、駅を出ると、そこは人で溢れかえっていた。
「うわぁ……。これは予想外だね……」
「だな……。こんなに混んでると思わなかったよ」
さすがの私も驚いた。まさかここまでとは……。
「とりあえず、移動できる場所を探さないと……」
「ああ。ちょっと待ってくれ」真也はスマホを取り出し、調べ始めた。こういう時は頼りになる男だ。
「よし、ここから歩いて10分くらいのところに公園があるみたいだ。そこなら空いてるかも」
「へぇー。そんなところにあるんだね」
「ああ。そこにするか」私たちは歩き出した。目的地に向かっている間も、人の波に流されないように注意しなければならない。
「……大丈夫か?」
不意に真也が心配そうな声で尋ねてきた。
「うん。なんとかね……」
「なんか、疲れてるように見えるけど……」
そんなことはないはずだ。ちゃんと元気だ。でも、もし彼が私のことを本気で心配してくれているのならば……。
「ちょっと……手、握ってほしい……」
私は小さな声で呟く。
「え?今なんて……」
「なんでもない!早くしてよ!」
「あ、ああ……」真也は恐る恐るという様子で私の手を握りしめた。
「これでいいか?」
「うん……」
温かい。そして、汗ばんでいる。
「ごめんな、汗かいちゃって……」
「ううん……。大丈夫」
彼の体温を感じながら、私は思った。
冷めてないじゃん……。
やっぱり彼は優しい人だったのだ。
私たちは何とか目的の場所までたどり着くことができた。
「ここなら座れるな」
「そうだね。よかった……」
私はベンチに腰掛けた。しかし、彼は立ったままである。
「あれ、真也くんも座らないの?」
「ああ。なんかちょっと喉乾いてきてな……。飲み物買ってくるよ」
「そっか……。ありがとう」
彼は自動販売機の方へと向かっていった。
私はふぅっと息をつく。
今日の彼の態度、冷めた時もあれば随分と優しい時もあった。冷めた態度のときは浮気してんじゃないかと思ったこともあったが、それは違った。
ただ単に私のことを好きだという感情を隠すためにわざと冷たい態度をとっていただけだったのだ。
「はぁ……。まったく……」
私は彼に聞こえないよう、小さく溜息をついた。
でも、嬉しかった。あんなに愛されていたことに気づけなかった自分が情けない。「おまたせ」
しばらくして、真也が帰ってきた。手に持っていたのは2本の缶ジュースだった。
「はい、これ」
そう言って、1本を私に差し出してきた。
「ありがとう……。お金はいくらだったっけ?」
私は財布を取り出す。
「いや、俺からの奢りだよ」
真也はそう言うと、隣に座ってきた。
「それじゃ、いただきます……」
プルタブを開けると、プシュッという音がした。そのまま口に流し込むと、爽やかな甘みが口の中に広がった。
「美味しい……」
「だろ?俺も好きなんだ」
「ふーん……」
「なんだよその反応……。せっかく買ってきたのに……」
「ううん。違うの。嬉しいなって思って」
「そうなのか?」
「だって、私の好みに合わせてくれたんでしょ?そんなの、凄く嬉しい……」
「……」
真也は何も言わず、黙ってこちらを見つめていた。
「何?」
「いや、なんでも……」
そう言う割には顔が赤い気がする。
私のもみあげをすっと上げて、唇を…
「えっ?ちょっとっ?んんっ…」突然キスされた。しかも舌を入れられる濃厚なヤツだ。
「はむ……。ちゅぱ……」
「ぷはぁ……」やっと口を離してくれた。
「いきなりどうしたの!?」
私は顔を真っ赤にして言った。
「いや、つい……」「ついじゃないよ!全くもう……」
「悪かったって……」
「まあ、いいけどさ……」
***
「今日はありがとね」
私たちは電車に乗って帰ることにした。
「別に気にすることないだろ。俺も楽しかったし」「うん……」
2人の間に沈黙が流れる。
「あの……」
「ねえ……」
同時に声を出してしまった。恥ずかしい……。
「真也くんから話していいよ」
「やっぱり好きだなぁって。」
「え?」
急に言われてびっくりしてしまった。「好きって、どういうこと?」
聞き返す。
「そのままの意味だよ」彼は私をまっすぐに見据えた。
「真也くんは……本当に私のことが好きなの?」
「ああ。もちろんだ」
私はこらえきれず彼に飛び込んだ。
「わぁ!」
「大好き!大好き!」彼の胸に顔を埋め、私は叫ぶ。
「おいおい、落ち着けよ……」
「無理!こんなの我慢できないよぉ……」私は子供のように泣きじゃくる。
「しょうがない奴だなぁ……」真也は優しく頭を撫でてくれた。
「ぐすっ……うぅ……」
「落ち着いたか?」
「うん……」私は涙を拭きながら答える。
「これからはずっと一緒にいてやる。だから安心しろ」
「うん……」私はもう一度彼の胸の中で泣いた。
この人は私のものなんだ。誰にも渡さない。
私は心の底でそう誓った。
「あー……」
とにかくこのままではいけない気がする。
まずは彼の気持ちを探ってみよう。
「ねえ、真也くん」
「ん?」
「あのさ、その……私たちって付き合ってるんだよね?」
「ああ、そうだよ」
「そっか……。じゃあさ……手、繋がないの?」
真也はきょとんとした顔になり、「えっ!?」と驚きの声を上げた。
「いや、だってほら! 付き合ってたら手を繋ぐものでしょ? 私、そう聞いたんだけど!」
「えっと……そうなのか?」
「うん、多分だけどね」
「でもなぁ……いいのかなぁ……」
彼は煮え切らない態度だった。もしかして手を繋ぎたくないのかとも思ったが、それは違うらしい。
「まあいいか。俺から行くよ」
そう言って真也は私の手を握った。
温かい手だ。そして、少し汗ばんでいるような気もした。
「これでいい?」
「う、うん……。なんかちょっと恥ずかしいな……」
ちょっと冷めてない?とは聞けなかった。彼の表情からはそんな様子は全く感じられないし、何よりせっかくの初デートなのだ。
それに、もし彼が冷めた男ならわざわざこんなことをしてこないだろう。だからきっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。
少し前***
『今日、初デートに行かない?』
朝起きてからすぐにスマホを開き、私はメッセージを送った。昨日の時点で約束をしていたわけではないけれど、それでもなんとなく連絡をしたかったのだ。
すると、すぐに既読マークが付いた。
『いいけど、どこに?』
やっぱり、デートに行くなんて急すぎたかもしれない。
私は返信を打ち込む前に、慌てて行き先を考えた。
『どこでもいいんだけど……』
『無計画かよ(笑)』
笑いながら、真也はメッセージを返してきた。
むぅ……。確かに、行きたいところがあったわけじゃない。ただ、彼とどこかに行きたかっただけなんだ。
『じゃあ、遊園地とか?』
『おっけー!』
遊園地かぁ……。小さい頃に家族で行ったきりだなぁ……。
そんなことを考えているうちに、待ち合わせの時間になった。***
「お待たせ~」
「おう」
真也はいつものように片手を挙げて挨拶をする。今日の服装は黒のジャケットに白シャツというシンプルなものだ。とてもよく似合っていると思う。
「それじゃ、行こうぜ」
私たちは電車に乗り込んだ。休日ということもあり、車内はかなり混んでいた。
「すごい人だね……」
「ああ……。これじゃ座れないかもな」
私はドア付近に立ち、真也はその隣に立った。
「ごめんね、こんなことになって……」
「いやいや、気にすんなって」
今日は少し楽しそうだ。なんでだろう。
「ねぇ、どうして今日は機嫌が良いの?」
「別に普通だよ」
「本当~?」
「本当だって」
そう言う割には声が弾んでいるように聞こえた。
でも理由がわかった。随分と不純なものだ。私の格好が前よりセクシーだからだ。
「なんだよその目は……。俺はそんなつもりで言ったんじゃねえぞ」
「私のどういうとこがいいんですかー?」「いや、お前のそういうところ嫌いだけど……」
「えぇ!?」
酷い言われようだ。私が一体何をしたというんだろう。
「冗談だよ。でも、本当に可愛いと思ってるから安心しろって」
「……」
そう言われると何も言えないじゃないか……。いやまて。
「だからどこ?肩?それとも太もも?」
「ふ、太ももです…」顔を赤くしながら真也は答えた。
どうしようもない変態さんだ。私を辱めるためだけにそんなことを言うなんて。
「もう!このドスケベ!」
「はいはい……」
「……まあ、許してあげよう」
***
電車を降り、駅を出ると、そこは人で溢れかえっていた。
「うわぁ……。これは予想外だね……」
「だな……。こんなに混んでると思わなかったよ」
さすがの私も驚いた。まさかここまでとは……。
「とりあえず、移動できる場所を探さないと……」
「ああ。ちょっと待ってくれ」真也はスマホを取り出し、調べ始めた。こういう時は頼りになる男だ。
「よし、ここから歩いて10分くらいのところに公園があるみたいだ。そこなら空いてるかも」
「へぇー。そんなところにあるんだね」
「ああ。そこにするか」私たちは歩き出した。目的地に向かっている間も、人の波に流されないように注意しなければならない。
「……大丈夫か?」
不意に真也が心配そうな声で尋ねてきた。
「うん。なんとかね……」
「なんか、疲れてるように見えるけど……」
そんなことはないはずだ。ちゃんと元気だ。でも、もし彼が私のことを本気で心配してくれているのならば……。
「ちょっと……手、握ってほしい……」
私は小さな声で呟く。
「え?今なんて……」
「なんでもない!早くしてよ!」
「あ、ああ……」真也は恐る恐るという様子で私の手を握りしめた。
「これでいいか?」
「うん……」
温かい。そして、汗ばんでいる。
「ごめんな、汗かいちゃって……」
「ううん……。大丈夫」
彼の体温を感じながら、私は思った。
冷めてないじゃん……。
やっぱり彼は優しい人だったのだ。
私たちは何とか目的の場所までたどり着くことができた。
「ここなら座れるな」
「そうだね。よかった……」
私はベンチに腰掛けた。しかし、彼は立ったままである。
「あれ、真也くんも座らないの?」
「ああ。なんかちょっと喉乾いてきてな……。飲み物買ってくるよ」
「そっか……。ありがとう」
彼は自動販売機の方へと向かっていった。
私はふぅっと息をつく。
今日の彼の態度、冷めた時もあれば随分と優しい時もあった。冷めた態度のときは浮気してんじゃないかと思ったこともあったが、それは違った。
ただ単に私のことを好きだという感情を隠すためにわざと冷たい態度をとっていただけだったのだ。
「はぁ……。まったく……」
私は彼に聞こえないよう、小さく溜息をついた。
でも、嬉しかった。あんなに愛されていたことに気づけなかった自分が情けない。「おまたせ」
しばらくして、真也が帰ってきた。手に持っていたのは2本の缶ジュースだった。
「はい、これ」
そう言って、1本を私に差し出してきた。
「ありがとう……。お金はいくらだったっけ?」
私は財布を取り出す。
「いや、俺からの奢りだよ」
真也はそう言うと、隣に座ってきた。
「それじゃ、いただきます……」
プルタブを開けると、プシュッという音がした。そのまま口に流し込むと、爽やかな甘みが口の中に広がった。
「美味しい……」
「だろ?俺も好きなんだ」
「ふーん……」
「なんだよその反応……。せっかく買ってきたのに……」
「ううん。違うの。嬉しいなって思って」
「そうなのか?」
「だって、私の好みに合わせてくれたんでしょ?そんなの、凄く嬉しい……」
「……」
真也は何も言わず、黙ってこちらを見つめていた。
「何?」
「いや、なんでも……」
そう言う割には顔が赤い気がする。
私のもみあげをすっと上げて、唇を…
「えっ?ちょっとっ?んんっ…」突然キスされた。しかも舌を入れられる濃厚なヤツだ。
「はむ……。ちゅぱ……」
「ぷはぁ……」やっと口を離してくれた。
「いきなりどうしたの!?」
私は顔を真っ赤にして言った。
「いや、つい……」「ついじゃないよ!全くもう……」
「悪かったって……」
「まあ、いいけどさ……」
***
「今日はありがとね」
私たちは電車に乗って帰ることにした。
「別に気にすることないだろ。俺も楽しかったし」「うん……」
2人の間に沈黙が流れる。
「あの……」
「ねえ……」
同時に声を出してしまった。恥ずかしい……。
「真也くんから話していいよ」
「やっぱり好きだなぁって。」
「え?」
急に言われてびっくりしてしまった。「好きって、どういうこと?」
聞き返す。
「そのままの意味だよ」彼は私をまっすぐに見据えた。
「真也くんは……本当に私のことが好きなの?」
「ああ。もちろんだ」
私はこらえきれず彼に飛び込んだ。
「わぁ!」
「大好き!大好き!」彼の胸に顔を埋め、私は叫ぶ。
「おいおい、落ち着けよ……」
「無理!こんなの我慢できないよぉ……」私は子供のように泣きじゃくる。
「しょうがない奴だなぁ……」真也は優しく頭を撫でてくれた。
「ぐすっ……うぅ……」
「落ち着いたか?」
「うん……」私は涙を拭きながら答える。
「これからはずっと一緒にいてやる。だから安心しろ」
「うん……」私はもう一度彼の胸の中で泣いた。
この人は私のものなんだ。誰にも渡さない。
私は心の底でそう誓った。
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