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あふたーあふたー
閑話:洞爺の刀 中編 ~ その刀は呪われている ~
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「ぎゃああああああああ!!」
オルトリンデが普段は絶対上げないような絶叫を統括ギルド内に響き渡らせる。
その声に数名の戦闘畑のギルド員や、航空巡回中の空挺騎士が何事かと集合した。
「今のオルトリンデ監理官の声だよな?」
二階の臨時執務室の扉の前でベテラン書記官が周りの人員に確認する。
いずれも長年聴き慣れた上司の声に間違いないと頷く。
「何があった?」
二階、渡り廊下の窓の外で待機してる飛竜から飛び込んだ騎士も合流した。
「分からないが……あんな悲鳴聞いたことないぞ……慎重に入ろう」
「万が一もあるしな」
そこは阿吽の呼吸で騎士とベテラン書記官がそれぞれ武器を構える。
「ディーヴァとかの生き残りじゃなきゃいいんだが……」
全員身構えて、扉の左右に位置をとった。
ベテラン書記官が周りに目配せをして合図を送る……そっと、ドアノブに手をかけると軽くひねり鍵がかかってないことを確認した。
「やってくれ」
一番防具が優秀な騎士が突入役となり、肘で叩きつけるように扉をあけ放つ。
けたたましい打撃音と共に臨時執務室に全員がなだれ込むと……ぺたんとしりもちをついたオルトリンデが天を仰いでいる。
「オルトリンデ監理官! 何があったんですか!?」
その様子にただ事ではないとベテラン書記官が駆け寄ると、オルトリンデが涙目でその右腕を天井の奥に向けた……。
そして、その場にいた者は全員……目撃してしまう。
「洞爺……殿?」
顔を合わせる機会が多い騎士がその姿を見て困惑した声を上げた。
だって……
天井の建材に指を突き立てさかさまの状態で四つん這い、なのに首はぐるりと半回転し両目は赤く光っており……その口元には真っ黒な刀身をした刀を加えてフコーッ、フコーッ! と荒い息を吐いているのだ。
「に、逃げてください!! 飲まれました!!」
あまりにもインパクトの強い洞爺の姿の下に、眼鏡がずれた灰斗が慌てた様子で皆に下がる様にと警告を発している。
「な、何があった!? なんか今までで一番危機を感じる瞬間なんだが!?」
「か……刀に魅入られちゃったみたいです。言葉が通じなくて」
「はあっ!?」
――フコーーーーーッ!!!!
ずだん! と四肢を立てて床に降り立った洞爺はまるで獣の様に……と言うか獣そのまんまに全員を見渡した後……ガラスをぶち破って逃走した。
「逃げたぞ!!」
砕けたガラスの破片をまき散らし、そのまま洞爺は四足獣のように建物の壁や屋根を疾走して……どこかへ消える。
「い、一体何が?」
「か、灰斗さんが洞爺に刀を見せた時……なんか虚ろな目で『ヒトツウッテハカタキノタメ……』とかなんとかつぶやいたと思ったらいきなり」
あまりの変わり様にオルトリンデが悲鳴を上げた、そう言う事だったらしい。
「み、皆さん……国内の北って……もしかしてドワーフがいっぱい住んでたりします?」
眼鏡の位置を直して灰斗が洞爺(闇の波動に目覚めた)の逃げた先を追うと……北に向かっている。
ぴょんぴょんと明らかに運動能力が上がっている様子だ。
「そりゃあ、職人が多く住んでるからな……なんでだ?」
ベテラン書記官がなぜ今? と首を傾げる。
「……あの刀、ボルドックさんが呪いを込めて打った妖刀と言うか……魔刀でして」
「え……ぼ、ボルドックが!?」
その言葉に反応したのはオルトリンデ。
旧友と言うか死んだと思ってたら30年ぶりに戻ってきた仲間の名をここで聞くのかと素っ頓狂な声が上がってしまった。
「ええ……もしかしたら。危ないかも」
何がなんてここまで来たら、誰でも推測できる。
「ひ、非常事態! 秘書部がやらかしたぞ!! 誰でもいい!! 騎士の出動要請と他の秘書部を呼んで来い!」
サァ……と血の気が引いた全員が慌てて非常事態に対応するため蜘蛛の子を散らすように駆け出した。
すでに風通しの良くなった窓からは悲鳴も流れ込んできていて、一刻の猶予も無い。
「灰斗さん! ボルドックは今どこに!?」
「多分お城かと……僕も追いますね。そんな危ない事にはならないと思うんですが……あの姿では」
「…………なまじ秘書部でトップクラスですからね。一体何がどうすればあんな事に」
頭を抱えるオルトリンデに灰斗が暴露する。
「なんでも不死族になって里帰りしたら奥さんが新しい旦那さんとイチャイチャしてる場面に出くわして、挙句に幼馴染が自分の嫌いな職人と子供を授かってる上に……」
「……実は娘に嫌われていた。じゃないですか?」
「当たりです、良く分かりましたね」
「葬儀の時、いろいろあって……」
遠い目をしてその時の事を回顧するオルトリンデの眼がしらにちょびっとだけ涙が溜まっていった。
しかし、それはそれ、これはこれである。
「まあ、そんなこんなであの刀ができてしまったので……お強いですよね? 洞爺さん」
「よりにもよって近接戦だったら一、二を争います。世界単位で」
「……この間の魔物大発生より、ピンチですねぇ」
「やよいぃぃ!! ふみかぁぁ!! しんじぃぃ!! もどってきてくださぁぁぁぁい!」
ウェイランドのとんでもない最終攻防戦が……今始まった。
オルトリンデが普段は絶対上げないような絶叫を統括ギルド内に響き渡らせる。
その声に数名の戦闘畑のギルド員や、航空巡回中の空挺騎士が何事かと集合した。
「今のオルトリンデ監理官の声だよな?」
二階の臨時執務室の扉の前でベテラン書記官が周りの人員に確認する。
いずれも長年聴き慣れた上司の声に間違いないと頷く。
「何があった?」
二階、渡り廊下の窓の外で待機してる飛竜から飛び込んだ騎士も合流した。
「分からないが……あんな悲鳴聞いたことないぞ……慎重に入ろう」
「万が一もあるしな」
そこは阿吽の呼吸で騎士とベテラン書記官がそれぞれ武器を構える。
「ディーヴァとかの生き残りじゃなきゃいいんだが……」
全員身構えて、扉の左右に位置をとった。
ベテラン書記官が周りに目配せをして合図を送る……そっと、ドアノブに手をかけると軽くひねり鍵がかかってないことを確認した。
「やってくれ」
一番防具が優秀な騎士が突入役となり、肘で叩きつけるように扉をあけ放つ。
けたたましい打撃音と共に臨時執務室に全員がなだれ込むと……ぺたんとしりもちをついたオルトリンデが天を仰いでいる。
「オルトリンデ監理官! 何があったんですか!?」
その様子にただ事ではないとベテラン書記官が駆け寄ると、オルトリンデが涙目でその右腕を天井の奥に向けた……。
そして、その場にいた者は全員……目撃してしまう。
「洞爺……殿?」
顔を合わせる機会が多い騎士がその姿を見て困惑した声を上げた。
だって……
天井の建材に指を突き立てさかさまの状態で四つん這い、なのに首はぐるりと半回転し両目は赤く光っており……その口元には真っ黒な刀身をした刀を加えてフコーッ、フコーッ! と荒い息を吐いているのだ。
「に、逃げてください!! 飲まれました!!」
あまりにもインパクトの強い洞爺の姿の下に、眼鏡がずれた灰斗が慌てた様子で皆に下がる様にと警告を発している。
「な、何があった!? なんか今までで一番危機を感じる瞬間なんだが!?」
「か……刀に魅入られちゃったみたいです。言葉が通じなくて」
「はあっ!?」
――フコーーーーーッ!!!!
ずだん! と四肢を立てて床に降り立った洞爺はまるで獣の様に……と言うか獣そのまんまに全員を見渡した後……ガラスをぶち破って逃走した。
「逃げたぞ!!」
砕けたガラスの破片をまき散らし、そのまま洞爺は四足獣のように建物の壁や屋根を疾走して……どこかへ消える。
「い、一体何が?」
「か、灰斗さんが洞爺に刀を見せた時……なんか虚ろな目で『ヒトツウッテハカタキノタメ……』とかなんとかつぶやいたと思ったらいきなり」
あまりの変わり様にオルトリンデが悲鳴を上げた、そう言う事だったらしい。
「み、皆さん……国内の北って……もしかしてドワーフがいっぱい住んでたりします?」
眼鏡の位置を直して灰斗が洞爺(闇の波動に目覚めた)の逃げた先を追うと……北に向かっている。
ぴょんぴょんと明らかに運動能力が上がっている様子だ。
「そりゃあ、職人が多く住んでるからな……なんでだ?」
ベテラン書記官がなぜ今? と首を傾げる。
「……あの刀、ボルドックさんが呪いを込めて打った妖刀と言うか……魔刀でして」
「え……ぼ、ボルドックが!?」
その言葉に反応したのはオルトリンデ。
旧友と言うか死んだと思ってたら30年ぶりに戻ってきた仲間の名をここで聞くのかと素っ頓狂な声が上がってしまった。
「ええ……もしかしたら。危ないかも」
何がなんてここまで来たら、誰でも推測できる。
「ひ、非常事態! 秘書部がやらかしたぞ!! 誰でもいい!! 騎士の出動要請と他の秘書部を呼んで来い!」
サァ……と血の気が引いた全員が慌てて非常事態に対応するため蜘蛛の子を散らすように駆け出した。
すでに風通しの良くなった窓からは悲鳴も流れ込んできていて、一刻の猶予も無い。
「灰斗さん! ボルドックは今どこに!?」
「多分お城かと……僕も追いますね。そんな危ない事にはならないと思うんですが……あの姿では」
「…………なまじ秘書部でトップクラスですからね。一体何がどうすればあんな事に」
頭を抱えるオルトリンデに灰斗が暴露する。
「なんでも不死族になって里帰りしたら奥さんが新しい旦那さんとイチャイチャしてる場面に出くわして、挙句に幼馴染が自分の嫌いな職人と子供を授かってる上に……」
「……実は娘に嫌われていた。じゃないですか?」
「当たりです、良く分かりましたね」
「葬儀の時、いろいろあって……」
遠い目をしてその時の事を回顧するオルトリンデの眼がしらにちょびっとだけ涙が溜まっていった。
しかし、それはそれ、これはこれである。
「まあ、そんなこんなであの刀ができてしまったので……お強いですよね? 洞爺さん」
「よりにもよって近接戦だったら一、二を争います。世界単位で」
「……この間の魔物大発生より、ピンチですねぇ」
「やよいぃぃ!! ふみかぁぁ!! しんじぃぃ!! もどってきてくださぁぁぁぁい!」
ウェイランドのとんでもない最終攻防戦が……今始まった。
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