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最終決戦 ⑦ 再会(桜花とその家族)
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「あのままじゃパンデモニウムにぶつかるね……」
「そうね……」
すさまじい速さでパンデモニウムに向かう娘となぜか娘の角を持ったメイド。
随分と破天荒な再会だが、そのままお別れになるかもしれなかった。
「響子……すまないけど助けてあげてくれないかな。僕は……」
間宮零士の狙いは眼下にいるアークただ一人……魔力の残滓を追ってピンポイントで次元に穴を力づくで開けている。
本来であれば出会い頭に一発ぶん殴るつもりなのだが……その感情の出所がたった今ニアミスしてしまった。
「あの子が生きててくれてうれしいけど、再会を祝う前にあの鼻持ちならない阿呆を消し飛ばしに行こうかなと思う」
どうせ害悪以外の何物でもないのだ。
この場所がいつでどこかは知らないが見る限りアークと対立しているのは間違いない。
なら、やる事は決まっている。
そんな零士の考えなど夫婦である響子はすぐに理解できた。
何せ響子から見てわかる零士の表情はピクリとも動かない無表情、激怒とかいう問題じゃない。
「良いわよ。私も一発殴りたいから活かしといてね?」
「もちろん、今回は準備もしっかり整えてますから……不覚はありませんよ」
「じゃあお願い……おうかちゃーん!? そのままだと死んじゃうわよ!!」
響子はくるりと身を回し、大急ぎで桜花とカタリナを追いかける。
いくら距離があるとはいえあの速度でぶつかれば最悪死んでしまう、それくらいあの二人の勢いは良かった。
まるで人間大砲みたいだが、響子はふと気づいた……なんか二人の後を追う紐のようなものが伸びている……響子は知らぬことだがジェノサイドも何の考えも無くぶん投げたわけではない。
激突の直前にちゃんと少しづつ勢いを殺せるために糸を伸ばし続けている。
「これ引っ張れば止まりそうね」
え?
「よいしょ」
むんずとつかんで無造作に引っ張った。
ちなみに間宮響子夫人、魔法の才に長けた夫と違い……まともな魔法が使えません。
その代わりに……。
――ビィィィン!!
数トン程度の岩をお手玉できるくらい身体を魔力で強化されてたりする肉弾戦派です。
みしみしと糸が伸びきって張られる糸、その先にいる桜花とカタリナが急停止。
「「うおぇっ!!」」
おなかがぎゅう、と締め付けられて二人の胃が圧迫される。
虚空で二人の視界は涙でにじみ(断じて再開を嬉しがってとかではない、そもそも両親にも同僚にも気づいていない)骨が折れそうなほど嫌な音が響いた。
「お、止まった。こっちよー! 桜花ちゃん」
そのまま響子は手元に引っ張る。
――ぎゅん!!
今度は息つく暇も無く今飛んできた軌道をそのまま高速で戻る二人。
響子の呑気な声とは裏腹に水ヨーヨーの気分を体感している。
「おーらいー」
良い勢いで戻ってくる二人の前に両手を広げて笑顔で出迎える母。
優れた聴覚と視力でそれを見守るジェノサイドからは絵面だけは微笑ましい。
しかし、勢い良すぎてぱぁんと弾ける水風船の光景が浮かぶ。液体の色? 真っ赤ですが何か?
「大丈夫なのかあの二人……」
なんかあの巨大なクジラから現れた8人はどうやら敵ではない。
それだけは何となく理解したが今にも死にそうな目にあっている。
「「はきそ、う……」」
胃の中がシェイクされ、ウエストが搾り上げられる二人は……うん、今にも死にそうである。(乙女の尊厳的に)
「……そういえばどうやってキャッチしたらいいのかしら?」
まさかの考えなくひっぱった響子さん、可愛く首を傾げて思案して……結局。
「足かどっか掴めばいっか!」
満面の笑みで一番二人にとって選択してほしくない事を思いつく。
さすがにジェノサイドが冷や汗を流し、地上から追加の糸を射出した。
ちょうど響子の手前で減速するようにふんわりと固めた糸の球である。
そんな気遣いの甲斐があってか響子のそばを糸の球が通過し、ぽふん、とその中に二人が飛び込んだ。
「きゅう……」
「今までのどんな訓練よりもきつい負荷でした……」
ようやく急加速、急停止の連続不可から解放される二人。
その糸の球をひょい、と響子は掴んで声をかける。
「やっほう、桜花ちゃん。その黒髪どうしたの? 染めた?」
その声に、桜花の眼が点になった。
たっぷりと一分……ずれた眼鏡を直して、目の前で死んだ時の光景を思い出す。
「お化け!?」
「お母様、妹のカタリナです認知してください」
ブレないカタリナの申し出に、快活に笑いながら響子は応えた。
「良いわよ~。こっちは銀髪なのね~」
なでなでとカタリナの頭を撫でて微笑む。
すでに実子である桜花さんが蚊帳の外なのですが……
「順応性!! これ良く見て!! お母様を対戦車ライフルで撃った本人!!」
むにぃ! とカタリナのほっぺたを引っ張り目じりを吊り上げる。
確かに響子の心臓をゼロ距離射撃でぶち抜いたのがカタリナだ。
「え? でも、角は桜花ちゃんのだし……銀髪で可愛いじゃない」
なのに響子は覚えてなかった……と言うか気にも留めてなかった。
「オムライス、綺麗に作れます」
「えええ! 食べたい~! カタリナちゃん!! ようこそ魔王一家に!!」
「話がまとまらない!! 弥生ちゃん! 反省するからこの二人にミサイルぶち込んで黙らせてぇぇ!?」
母が豪快崩落だったと記憶している桜花でももう手が付けられない。
そうだった、細かい事は苦手でご飯を作らせても大概焦がすか、生焼けか、謎の出来上がりになっていた。
性格も大雑把に拍車をかける呑気さも相まって娘である桜花の方がお母さんなのでは? と周りから笑われている記憶がよみがえる。
「でも、今はちょっと待っててね~。あの金髪のショタを磨り潰しに行かなきゃいけないの、桜花ちゃんを殺した報いを受けさせないと」
「後半のセリフがおかしい事に気づいてお母様!? 私生きてます!! 一度も死んで無いから!?」
「むしろ私が死にました!」
「ややこしくなるから黙ってろ愚妹!!」
カオスすぎる状況を見上げて零士とレヴィヤタンが顔を見合わせる。
そこに浮かぶのは先ほどまでの使命感とか、復讐心とかをすべてご破算にしてしまう苦笑だった。
そんな彼らにジェノサイドは見かねて声をかける。
「騒がしくて済まないが、戦の最中でな……もし腕に覚えがあるのであれば向こうの手伝いを願いたい」
実に微笑ましい光景だが近衛騎士や楓、牡丹はまだ戦っている。
ジェノサイドが行ってもいいが、そうするとせっかく凍らせて黙らせているアークが復活してしまうかもしれない。
「ああ、これはこれはご丁寧に……私怨のためにここに来たんだが……確かにそうも言ってられない状況だし……レヴィヤタンのみんな、頼めるかな?」
答えは是、即座にガルーダのバーニアを全開に吹かして戦場へ飛び込む。
「我が友も飛ぶ事には定評があるが……貴君らの道具もなかなかだな」
「まあ、娘が作ったものだしね。ところで……君の足元で凍っている奴って金髪で腹の立つ子供だったりするかな?」
零士がジェノサイドの足元を見て尋ねた。
「うむ、今から煮るか焼くか凍らせるか粗大ごみとして破棄するか……主と相談するつもりだ」
「それは好都合、僕も便乗して良いかな? 積年の恨みがあってねぇ」
「構わぬ、主もグーパンすると意気込んで向かってきている」
「じゃあ、少し魔力を集めておこうか……な?」
そんな零士が少し離れた地面にある物を見つける。
ずいぶんと硬い材質で作られた一本の杖、それは規則的な模様が刻まれていて……。
「ふむ、ずいぶんと腕のいい開発者がいるみたいだねぇ」
暇だからと魔法を使い、零士はその杖に手を加える。
魔王の付与がどんなことになるかを本人が一番理解していないままで……。
「そうね……」
すさまじい速さでパンデモニウムに向かう娘となぜか娘の角を持ったメイド。
随分と破天荒な再会だが、そのままお別れになるかもしれなかった。
「響子……すまないけど助けてあげてくれないかな。僕は……」
間宮零士の狙いは眼下にいるアークただ一人……魔力の残滓を追ってピンポイントで次元に穴を力づくで開けている。
本来であれば出会い頭に一発ぶん殴るつもりなのだが……その感情の出所がたった今ニアミスしてしまった。
「あの子が生きててくれてうれしいけど、再会を祝う前にあの鼻持ちならない阿呆を消し飛ばしに行こうかなと思う」
どうせ害悪以外の何物でもないのだ。
この場所がいつでどこかは知らないが見る限りアークと対立しているのは間違いない。
なら、やる事は決まっている。
そんな零士の考えなど夫婦である響子はすぐに理解できた。
何せ響子から見てわかる零士の表情はピクリとも動かない無表情、激怒とかいう問題じゃない。
「良いわよ。私も一発殴りたいから活かしといてね?」
「もちろん、今回は準備もしっかり整えてますから……不覚はありませんよ」
「じゃあお願い……おうかちゃーん!? そのままだと死んじゃうわよ!!」
響子はくるりと身を回し、大急ぎで桜花とカタリナを追いかける。
いくら距離があるとはいえあの速度でぶつかれば最悪死んでしまう、それくらいあの二人の勢いは良かった。
まるで人間大砲みたいだが、響子はふと気づいた……なんか二人の後を追う紐のようなものが伸びている……響子は知らぬことだがジェノサイドも何の考えも無くぶん投げたわけではない。
激突の直前にちゃんと少しづつ勢いを殺せるために糸を伸ばし続けている。
「これ引っ張れば止まりそうね」
え?
「よいしょ」
むんずとつかんで無造作に引っ張った。
ちなみに間宮響子夫人、魔法の才に長けた夫と違い……まともな魔法が使えません。
その代わりに……。
――ビィィィン!!
数トン程度の岩をお手玉できるくらい身体を魔力で強化されてたりする肉弾戦派です。
みしみしと糸が伸びきって張られる糸、その先にいる桜花とカタリナが急停止。
「「うおぇっ!!」」
おなかがぎゅう、と締め付けられて二人の胃が圧迫される。
虚空で二人の視界は涙でにじみ(断じて再開を嬉しがってとかではない、そもそも両親にも同僚にも気づいていない)骨が折れそうなほど嫌な音が響いた。
「お、止まった。こっちよー! 桜花ちゃん」
そのまま響子は手元に引っ張る。
――ぎゅん!!
今度は息つく暇も無く今飛んできた軌道をそのまま高速で戻る二人。
響子の呑気な声とは裏腹に水ヨーヨーの気分を体感している。
「おーらいー」
良い勢いで戻ってくる二人の前に両手を広げて笑顔で出迎える母。
優れた聴覚と視力でそれを見守るジェノサイドからは絵面だけは微笑ましい。
しかし、勢い良すぎてぱぁんと弾ける水風船の光景が浮かぶ。液体の色? 真っ赤ですが何か?
「大丈夫なのかあの二人……」
なんかあの巨大なクジラから現れた8人はどうやら敵ではない。
それだけは何となく理解したが今にも死にそうな目にあっている。
「「はきそ、う……」」
胃の中がシェイクされ、ウエストが搾り上げられる二人は……うん、今にも死にそうである。(乙女の尊厳的に)
「……そういえばどうやってキャッチしたらいいのかしら?」
まさかの考えなくひっぱった響子さん、可愛く首を傾げて思案して……結局。
「足かどっか掴めばいっか!」
満面の笑みで一番二人にとって選択してほしくない事を思いつく。
さすがにジェノサイドが冷や汗を流し、地上から追加の糸を射出した。
ちょうど響子の手前で減速するようにふんわりと固めた糸の球である。
そんな気遣いの甲斐があってか響子のそばを糸の球が通過し、ぽふん、とその中に二人が飛び込んだ。
「きゅう……」
「今までのどんな訓練よりもきつい負荷でした……」
ようやく急加速、急停止の連続不可から解放される二人。
その糸の球をひょい、と響子は掴んで声をかける。
「やっほう、桜花ちゃん。その黒髪どうしたの? 染めた?」
その声に、桜花の眼が点になった。
たっぷりと一分……ずれた眼鏡を直して、目の前で死んだ時の光景を思い出す。
「お化け!?」
「お母様、妹のカタリナです認知してください」
ブレないカタリナの申し出に、快活に笑いながら響子は応えた。
「良いわよ~。こっちは銀髪なのね~」
なでなでとカタリナの頭を撫でて微笑む。
すでに実子である桜花さんが蚊帳の外なのですが……
「順応性!! これ良く見て!! お母様を対戦車ライフルで撃った本人!!」
むにぃ! とカタリナのほっぺたを引っ張り目じりを吊り上げる。
確かに響子の心臓をゼロ距離射撃でぶち抜いたのがカタリナだ。
「え? でも、角は桜花ちゃんのだし……銀髪で可愛いじゃない」
なのに響子は覚えてなかった……と言うか気にも留めてなかった。
「オムライス、綺麗に作れます」
「えええ! 食べたい~! カタリナちゃん!! ようこそ魔王一家に!!」
「話がまとまらない!! 弥生ちゃん! 反省するからこの二人にミサイルぶち込んで黙らせてぇぇ!?」
母が豪快崩落だったと記憶している桜花でももう手が付けられない。
そうだった、細かい事は苦手でご飯を作らせても大概焦がすか、生焼けか、謎の出来上がりになっていた。
性格も大雑把に拍車をかける呑気さも相まって娘である桜花の方がお母さんなのでは? と周りから笑われている記憶がよみがえる。
「でも、今はちょっと待っててね~。あの金髪のショタを磨り潰しに行かなきゃいけないの、桜花ちゃんを殺した報いを受けさせないと」
「後半のセリフがおかしい事に気づいてお母様!? 私生きてます!! 一度も死んで無いから!?」
「むしろ私が死にました!」
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カオスすぎる状況を見上げて零士とレヴィヤタンが顔を見合わせる。
そこに浮かぶのは先ほどまでの使命感とか、復讐心とかをすべてご破算にしてしまう苦笑だった。
そんな彼らにジェノサイドは見かねて声をかける。
「騒がしくて済まないが、戦の最中でな……もし腕に覚えがあるのであれば向こうの手伝いを願いたい」
実に微笑ましい光景だが近衛騎士や楓、牡丹はまだ戦っている。
ジェノサイドが行ってもいいが、そうするとせっかく凍らせて黙らせているアークが復活してしまうかもしれない。
「ああ、これはこれはご丁寧に……私怨のためにここに来たんだが……確かにそうも言ってられない状況だし……レヴィヤタンのみんな、頼めるかな?」
答えは是、即座にガルーダのバーニアを全開に吹かして戦場へ飛び込む。
「我が友も飛ぶ事には定評があるが……貴君らの道具もなかなかだな」
「まあ、娘が作ったものだしね。ところで……君の足元で凍っている奴って金髪で腹の立つ子供だったりするかな?」
零士がジェノサイドの足元を見て尋ねた。
「うむ、今から煮るか焼くか凍らせるか粗大ごみとして破棄するか……主と相談するつもりだ」
「それは好都合、僕も便乗して良いかな? 積年の恨みがあってねぇ」
「構わぬ、主もグーパンすると意気込んで向かってきている」
「じゃあ、少し魔力を集めておこうか……な?」
そんな零士が少し離れた地面にある物を見つける。
ずいぶんと硬い材質で作られた一本の杖、それは規則的な模様が刻まれていて……。
「ふむ、ずいぶんと腕のいい開発者がいるみたいだねぇ」
暇だからと魔法を使い、零士はその杖に手を加える。
魔王の付与がどんなことになるかを本人が一番理解していないままで……。
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