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本祭! 格闘大会!! ⑦ メイド対メイドの裏で
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「ふ~み~か~!!」
怒髪天を衝く、正に今の弥生を表す言葉であった。
さすがに他の出場者のいる前でお説教なんかできないので医務室の隣にある休憩所をお借りしている。
「ごめんなさいぃ~!!」
仁王立ちして目を吊り上げる弥生の前に、ちょこんと正座をしてしおしおと頭を下げる文香。
怒られている原因は……
「ちゃんと手加減しないとアニキサスさん死んじゃうでしょうがっ!」
「はいぃぃ……」
「まあまあ、姉ちゃん。それくらいにしておきなよ、バッジがあるから即死は無いんだし」
のほほんと真司が厚紙を調達してきて山折り谷折り、折りたたんでいく。
もちろん遊んでいるのではない。文香の頭をすぱぁん! とひっぱたく為のハリセンを作っていたりする。
「まったく、ちゃんと強いなら強いとおねーちゃんとおにーちゃんに言っておきなさい。びっくりしたわよ……アニキサスさんがあんな、その。ピンボーぷふっ!!」
「ねえちゃん、お説教にならないから笑うのは後にして」
「うい! とにかく、今度からは変身する前に周りの人に確認する事! 守れる?」
「守ります!」
「じゃあ、真司のハリセンすぱぁんでお終い」
「ううう……ちょっと怖い」
――すぱぁん!!
容赦なく振り下ろされる出来立てのハリセン。
小気味いい音を立てて文香の銀髪に直撃するが、その音に反比例して文香にダメージは無い。
しかし、急に大きい音が鳴ったので文香の身体がびっくん! と反応する。
「おにいちゃん!? せめて合図!!」
「合図したら驚かないじゃん。ほら、なんていうの?」
「内緒にしててごめんなさぁい」
「よろしい」
基本的に日下部家では周りに迷惑が掛からないならば良し、のスタンスなので文香が変身できることを黙っていた事についてはそもそも不問である。
「で? いつからできるようになったの?」
ただし、知ってしまったからには確認だけはしておかなければならない。
破格の戦闘力を手に入れているっぽい妹が『ついうっかり』で誰かに怪我をさせてしまってはいけないからだ。
弥生がジト目で文香に確認すると、素直に文香は白状する。
「レンちゃんが来て、オルちゃんが『鱗や角なんてどう処理したらいいんですかー!?』って崩れ落ちた日」
「それ、だいぶ前じゃない……誰か知ってたの?」
「牡丹おねーちゃんとレンちゃん、後は洞爺おじーちゃん」
「牡丹姉とレンは処す……と、洞爺じーちゃんは事情を聴いてからっと」
真司がいつも持ち歩いている手帳に三人の名前と有罪、保留を書き留める。
洞爺だけは不可抗力の可能性があるので保留。
「文香、ちゃんと元に戻れるのよね? それ」
「うん、何回かこっそりとだけどね。れんしゅーしたの!」
「そっかそっか、じゃあ今日はお終い。今度おねーちゃんと真司にもじっくり見せてね?」
「わかった!」
実に素直に、しかもあっさりと変身を解いた文香はいつも通りの黒髪とぽやんとした顔つきだ。
ニコニコしながら姉に『これで変身できるの!』とレンの角のかけらを手渡してくる。
「何これ……」
「姉ちゃんこれって、あれじゃない? オル姉が言ってた宝物庫に眠らせるとか封印するとか言ってたレンの角の欠片」
真っ黒でなぜか光を反射しない、石とも金属とも違う謎の物体。
その先端は確かに、何かに斬られた様に滑らかな断面となっていた。それは銀か何かの金属で作られた石付きがついていて細く、しなやかな金属の鎖でペンダントとして使えるように加工されている。
「うん、レンちゃんが『御守り』だって! 文香が怪我しないように、って!」
「ふうん、レンは処さなくていいや。多分予想外だろうし、善意100%だろうし」
「じゃあ、確定有罪は牡丹さんだけだね~」
ちなみに真司も弥生も何の根拠もなく牡丹を有罪にはしていない、文香を連れていく際に牡丹が『ちゃんと出来てるわね。いい子よ文香』とげらげら笑いながら見送ったのを見ているからだ。
絶対に何かしら関与しているのは明白だった。
「ねえおねーちゃん」
「ん? どしたの?」
眉を八の字にして文香が正座したまま弥生を見上げる。
珍しい文香の行動に弥生がしゃがみ込んで問いかけた。
「あのね? 文香もおねーちゃんとお母さん達を行きたい」
「いいよ」
にっこりと弥生が即答する。
「文香、いくら強くてなんかもう……姉ちゃんがスライム感丸出しだけど。旅についていくのは無理だよ」
「ぶぅ!!」
「ほらほら、駄々をこねないで……待って。姉ちゃん今なんて?」
だめ、そう思っていた真司と文香がぴたりと止まった。
基本的に姉は、弥生は非常に頑固な職人気質である。それだけに一勝したら何でも言う事を聞く、と約束したとはいえ姉が決めた事を翻すとは思ってなかったのだ。
文香も真司も目を丸くして姉を見つめる。
文香は立ち上がって姉のほっぺを両手でさすりさすり、平熱っぽい。
真司はハリセンでぺしん、と力なく姉の頭を叩いてみる。なにすんじゃー! と姉が牙をむく。いつも通りの反応である。
「「(お)姉ちゃん!? なんか悪いもの食べた!?」」
わなわなと震える弟と妹を見て弥生がそこはかとなく寂しさを感じた。
いくらなんでもひどいんじゃなかろうかと。
しかし、それだけ弥生は普段一度決めた事を曲げないという証でもあった。
「おいこら愚弟、さりげなく私をスライム扱いしないでよ! 言ったじゃない、一回でも勝ったら言うこと聞くって」
そう言いながら弥生は真司の手からハリセンをひったくってぺしぺしと叩き、あきらめたように笑う。そして、文香の頭を空いている左手で優しくなでた。
「だってさ、こんだけ強ければ文香はきっとこっそりと……いや、なんだかんだでついて来ちゃうよ。だったらもう、文香込みで旅する算段を組む方がよっぽどイレギュラーは回避できそうだもん」
「やったぁ!! ありがとうおねーちゃん!!」
「……それもそうか。んじゃあ留守番は任されたよ、誰も残ってないんじゃ万が一入れ違いでウェイランドに来た時に困るだろうしね」
はあ、とため息をついて姉の意見に理解を示す真司。
内心ではついて行きたい所だけど、確かにウェイランドに残る人員も居ないと困ることもあるだろう。
「ありがとね、真司……さて、次の試合は牡丹さんだったよね? なんかすごい大騒ぎだし」
「そういえば歓声すごいね」
三人とも部屋の外から聞こえてくる歓声に耳をすませば、微かにどかん! と、響く音や地面が振動している気がする。
「行ってみようか、キズナも待たせちゃってるし」
弥生が促して三人そろって闘技場の観客席まで来ると、案の定二人のメイドが目にもとまらぬ早さで殴る蹴るの応酬をしていた。
生憎、弥生も真司も文香も格闘には明るくないので『ほへぇ』と間抜けな声を出して見つめることくらいしかできないでいたが。会場の熱気がなんかとてもすごい戦いだ! と主張してるのだけは分かる。
「おう、丁度いい所に居たなお前ら。今から会いに行こうと思ってたんだ」
そんな三人に、キズナが声をかける。
「あ、キズナ……待たせてごめん。その人だれ?」
キズナがニコニコしながら片手で拘束している桜花を見て、弥生が首を傾げた。
痛い痛い、とぼやいている桜花はどう見ても捕まっている。
「不審者、あの銀髪メイドの姉だってさ。これから尋問するつもりなんだが……」
「えと、危ない人?」
「わかんねぇ、多分俺らと似た境遇なだけかもしれねぇし。ちょんぱ野郎の仲間かもしれねぇ」
「ふうむ……」
――ずがんっ!!
ひときわ大きい打撃音が鳴り響き、思わず弥生と文香が闘技場に目をやると……ちょうど牡丹の下着が審判の目の前にひらり、はらりと落ちてきた所だった。
「あ、牡丹おねーちゃん失格だ」
文香の身長だと牡丹のバッジとパンツは丸見えだったので、それの正体がわかっている。
「……姉ちゃん、牡丹姉ほとんど裸になってる」
若干顔を赤らめて真司が目を逸らす。
確かにそれだけ激しい戦いだったのは認めるし、不可抗力だろうがいささか刺激的なのは間違いない。弥生は……。
「くっ! カメラが無い!!」
「安定の腐れっぷり!! 自重しろ馬鹿姉!?」
「おにーちゃん、文香知ってるの。遅すぎた、腐ってやがる……だよね!」
「一緒に旅立たせるのに不安しかない!!」
とはいえ、観客からはその試合内容についての賞賛の嵐が吹き荒れていて。そんな秘書官のハアハアは誰も気に留めていないのが救いと言えば救いだ。
――じゃあもう脱いで良いわね!
「げ」
「あ」
「んにゅ?」
なぜか嬉々として脱ごうとする牡丹の言葉に、キズナ、真司、文香が反応する。
さすがにそれは止めねばと弥生が反射的にキズナに指示を飛ばす。
「キズナ! 脱衣阻止!」
「合点!!」
桜花の拘束を解き、流れるような手つきで銃にゴム弾を装填し牡丹の脳天を狙撃!
見事に命中した瞬間、桜花がひざ掛けにしようと持ち歩いていた毛布を投げ入れ。カタリナに簀巻きにしろ!! と叫ぶ。
同時に弥生は髪の毛でのんびりしていたジェノサイド君をひっつかんで、君に決めたぁ!! と闘技場に投げ入れながら、毛布で包まれる牡丹を統括ギルドに運ぶようにお願いする。
良くわかんないながらもジェノサイド君、手際よく糸で牡丹だったものをぐるぐる巻きにしてぴょんぴょんと闘技場を後にした。
素晴らしい連携だった。
「おねえちゃん、牡丹おねえちゃんの扱い慣れてきたね! すっごい早さだった!!」
なぜか知らないけど、こんな連携がとっさにできる様になる位には……牡丹は問題を起こしているという証拠である。
「さて、その人の話も聞かないとね」
ぱんぱん、と手を叩いて一仕事終えた風な弥生がキズナの方を向くと……。
「わりぃ、見誤ってたわ」
あっさりと桜花の手によって首筋に注射針を刺されているキズナが、両手を上げて降参していた。
「油断大敵、場外乱闘は好みじゃないからおとなしくしてね? 猛獣ちゃん」
怒髪天を衝く、正に今の弥生を表す言葉であった。
さすがに他の出場者のいる前でお説教なんかできないので医務室の隣にある休憩所をお借りしている。
「ごめんなさいぃ~!!」
仁王立ちして目を吊り上げる弥生の前に、ちょこんと正座をしてしおしおと頭を下げる文香。
怒られている原因は……
「ちゃんと手加減しないとアニキサスさん死んじゃうでしょうがっ!」
「はいぃぃ……」
「まあまあ、姉ちゃん。それくらいにしておきなよ、バッジがあるから即死は無いんだし」
のほほんと真司が厚紙を調達してきて山折り谷折り、折りたたんでいく。
もちろん遊んでいるのではない。文香の頭をすぱぁん! とひっぱたく為のハリセンを作っていたりする。
「まったく、ちゃんと強いなら強いとおねーちゃんとおにーちゃんに言っておきなさい。びっくりしたわよ……アニキサスさんがあんな、その。ピンボーぷふっ!!」
「ねえちゃん、お説教にならないから笑うのは後にして」
「うい! とにかく、今度からは変身する前に周りの人に確認する事! 守れる?」
「守ります!」
「じゃあ、真司のハリセンすぱぁんでお終い」
「ううう……ちょっと怖い」
――すぱぁん!!
容赦なく振り下ろされる出来立てのハリセン。
小気味いい音を立てて文香の銀髪に直撃するが、その音に反比例して文香にダメージは無い。
しかし、急に大きい音が鳴ったので文香の身体がびっくん! と反応する。
「おにいちゃん!? せめて合図!!」
「合図したら驚かないじゃん。ほら、なんていうの?」
「内緒にしててごめんなさぁい」
「よろしい」
基本的に日下部家では周りに迷惑が掛からないならば良し、のスタンスなので文香が変身できることを黙っていた事についてはそもそも不問である。
「で? いつからできるようになったの?」
ただし、知ってしまったからには確認だけはしておかなければならない。
破格の戦闘力を手に入れているっぽい妹が『ついうっかり』で誰かに怪我をさせてしまってはいけないからだ。
弥生がジト目で文香に確認すると、素直に文香は白状する。
「レンちゃんが来て、オルちゃんが『鱗や角なんてどう処理したらいいんですかー!?』って崩れ落ちた日」
「それ、だいぶ前じゃない……誰か知ってたの?」
「牡丹おねーちゃんとレンちゃん、後は洞爺おじーちゃん」
「牡丹姉とレンは処す……と、洞爺じーちゃんは事情を聴いてからっと」
真司がいつも持ち歩いている手帳に三人の名前と有罪、保留を書き留める。
洞爺だけは不可抗力の可能性があるので保留。
「文香、ちゃんと元に戻れるのよね? それ」
「うん、何回かこっそりとだけどね。れんしゅーしたの!」
「そっかそっか、じゃあ今日はお終い。今度おねーちゃんと真司にもじっくり見せてね?」
「わかった!」
実に素直に、しかもあっさりと変身を解いた文香はいつも通りの黒髪とぽやんとした顔つきだ。
ニコニコしながら姉に『これで変身できるの!』とレンの角のかけらを手渡してくる。
「何これ……」
「姉ちゃんこれって、あれじゃない? オル姉が言ってた宝物庫に眠らせるとか封印するとか言ってたレンの角の欠片」
真っ黒でなぜか光を反射しない、石とも金属とも違う謎の物体。
その先端は確かに、何かに斬られた様に滑らかな断面となっていた。それは銀か何かの金属で作られた石付きがついていて細く、しなやかな金属の鎖でペンダントとして使えるように加工されている。
「うん、レンちゃんが『御守り』だって! 文香が怪我しないように、って!」
「ふうん、レンは処さなくていいや。多分予想外だろうし、善意100%だろうし」
「じゃあ、確定有罪は牡丹さんだけだね~」
ちなみに真司も弥生も何の根拠もなく牡丹を有罪にはしていない、文香を連れていく際に牡丹が『ちゃんと出来てるわね。いい子よ文香』とげらげら笑いながら見送ったのを見ているからだ。
絶対に何かしら関与しているのは明白だった。
「ねえおねーちゃん」
「ん? どしたの?」
眉を八の字にして文香が正座したまま弥生を見上げる。
珍しい文香の行動に弥生がしゃがみ込んで問いかけた。
「あのね? 文香もおねーちゃんとお母さん達を行きたい」
「いいよ」
にっこりと弥生が即答する。
「文香、いくら強くてなんかもう……姉ちゃんがスライム感丸出しだけど。旅についていくのは無理だよ」
「ぶぅ!!」
「ほらほら、駄々をこねないで……待って。姉ちゃん今なんて?」
だめ、そう思っていた真司と文香がぴたりと止まった。
基本的に姉は、弥生は非常に頑固な職人気質である。それだけに一勝したら何でも言う事を聞く、と約束したとはいえ姉が決めた事を翻すとは思ってなかったのだ。
文香も真司も目を丸くして姉を見つめる。
文香は立ち上がって姉のほっぺを両手でさすりさすり、平熱っぽい。
真司はハリセンでぺしん、と力なく姉の頭を叩いてみる。なにすんじゃー! と姉が牙をむく。いつも通りの反応である。
「「(お)姉ちゃん!? なんか悪いもの食べた!?」」
わなわなと震える弟と妹を見て弥生がそこはかとなく寂しさを感じた。
いくらなんでもひどいんじゃなかろうかと。
しかし、それだけ弥生は普段一度決めた事を曲げないという証でもあった。
「おいこら愚弟、さりげなく私をスライム扱いしないでよ! 言ったじゃない、一回でも勝ったら言うこと聞くって」
そう言いながら弥生は真司の手からハリセンをひったくってぺしぺしと叩き、あきらめたように笑う。そして、文香の頭を空いている左手で優しくなでた。
「だってさ、こんだけ強ければ文香はきっとこっそりと……いや、なんだかんだでついて来ちゃうよ。だったらもう、文香込みで旅する算段を組む方がよっぽどイレギュラーは回避できそうだもん」
「やったぁ!! ありがとうおねーちゃん!!」
「……それもそうか。んじゃあ留守番は任されたよ、誰も残ってないんじゃ万が一入れ違いでウェイランドに来た時に困るだろうしね」
はあ、とため息をついて姉の意見に理解を示す真司。
内心ではついて行きたい所だけど、確かにウェイランドに残る人員も居ないと困ることもあるだろう。
「ありがとね、真司……さて、次の試合は牡丹さんだったよね? なんかすごい大騒ぎだし」
「そういえば歓声すごいね」
三人とも部屋の外から聞こえてくる歓声に耳をすませば、微かにどかん! と、響く音や地面が振動している気がする。
「行ってみようか、キズナも待たせちゃってるし」
弥生が促して三人そろって闘技場の観客席まで来ると、案の定二人のメイドが目にもとまらぬ早さで殴る蹴るの応酬をしていた。
生憎、弥生も真司も文香も格闘には明るくないので『ほへぇ』と間抜けな声を出して見つめることくらいしかできないでいたが。会場の熱気がなんかとてもすごい戦いだ! と主張してるのだけは分かる。
「おう、丁度いい所に居たなお前ら。今から会いに行こうと思ってたんだ」
そんな三人に、キズナが声をかける。
「あ、キズナ……待たせてごめん。その人だれ?」
キズナがニコニコしながら片手で拘束している桜花を見て、弥生が首を傾げた。
痛い痛い、とぼやいている桜花はどう見ても捕まっている。
「不審者、あの銀髪メイドの姉だってさ。これから尋問するつもりなんだが……」
「えと、危ない人?」
「わかんねぇ、多分俺らと似た境遇なだけかもしれねぇし。ちょんぱ野郎の仲間かもしれねぇ」
「ふうむ……」
――ずがんっ!!
ひときわ大きい打撃音が鳴り響き、思わず弥生と文香が闘技場に目をやると……ちょうど牡丹の下着が審判の目の前にひらり、はらりと落ちてきた所だった。
「あ、牡丹おねーちゃん失格だ」
文香の身長だと牡丹のバッジとパンツは丸見えだったので、それの正体がわかっている。
「……姉ちゃん、牡丹姉ほとんど裸になってる」
若干顔を赤らめて真司が目を逸らす。
確かにそれだけ激しい戦いだったのは認めるし、不可抗力だろうがいささか刺激的なのは間違いない。弥生は……。
「くっ! カメラが無い!!」
「安定の腐れっぷり!! 自重しろ馬鹿姉!?」
「おにーちゃん、文香知ってるの。遅すぎた、腐ってやがる……だよね!」
「一緒に旅立たせるのに不安しかない!!」
とはいえ、観客からはその試合内容についての賞賛の嵐が吹き荒れていて。そんな秘書官のハアハアは誰も気に留めていないのが救いと言えば救いだ。
――じゃあもう脱いで良いわね!
「げ」
「あ」
「んにゅ?」
なぜか嬉々として脱ごうとする牡丹の言葉に、キズナ、真司、文香が反応する。
さすがにそれは止めねばと弥生が反射的にキズナに指示を飛ばす。
「キズナ! 脱衣阻止!」
「合点!!」
桜花の拘束を解き、流れるような手つきで銃にゴム弾を装填し牡丹の脳天を狙撃!
見事に命中した瞬間、桜花がひざ掛けにしようと持ち歩いていた毛布を投げ入れ。カタリナに簀巻きにしろ!! と叫ぶ。
同時に弥生は髪の毛でのんびりしていたジェノサイド君をひっつかんで、君に決めたぁ!! と闘技場に投げ入れながら、毛布で包まれる牡丹を統括ギルドに運ぶようにお願いする。
良くわかんないながらもジェノサイド君、手際よく糸で牡丹だったものをぐるぐる巻きにしてぴょんぴょんと闘技場を後にした。
素晴らしい連携だった。
「おねえちゃん、牡丹おねえちゃんの扱い慣れてきたね! すっごい早さだった!!」
なぜか知らないけど、こんな連携がとっさにできる様になる位には……牡丹は問題を起こしているという証拠である。
「さて、その人の話も聞かないとね」
ぱんぱん、と手を叩いて一仕事終えた風な弥生がキズナの方を向くと……。
「わりぃ、見誤ってたわ」
あっさりと桜花の手によって首筋に注射針を刺されているキズナが、両手を上げて降参していた。
「油断大敵、場外乱闘は好みじゃないからおとなしくしてね? 猛獣ちゃん」
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