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プロローグ:まずは首を落とします

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「では、膝を……」



 私はその言葉に一つ頷き、処刑場の真ん中に膝をつく……普段のドレスは血で汚れるので、着古した部屋着でここに来た。

 ここ数年使われなくなった魔王城の処刑場は綺麗に敷き詰められた石畳、正面には少し前に終わった戦争の慰霊碑が立てられていますが……生憎と両目を塞ぐ封印帯で見る事はかなわない。

 お父様の名もこの石碑に刻まれているのですけれども……ね。



「お嬢様……」

「セリ様……」



 心配そうな私のメイドがつぶやく声に、私は顔を向け……にこりと微笑みながら両手を祈りの形に組む。安心、できる状況ではないけど……せめて緊張だけでもほぐれる様に。



 ひゅるりと吹き込む風に髪の毛が舞う。



「後は……お願いね。ラズ、ヘリヤ」



 きっと、あの子達は泣きそうな顔をしているだろうな……。

 そう思うと心が痛む。



「よろしいですか。お嬢様……」



 跪いて、首を前に出す私に……冷静だけど震えている声がかけられた。

 

「はい、極力魔力を押さえます……一思いに」

「かしこまりました……まさか、もう首を落とす事などないと思ってましたが」



 そうよね、震えるわよね。私の首をこれから落とすのは魔王配下の首切り職人。私の執事でもあった老齢な魔族……私は、お爺ちゃんと呼んでいた人。

 でも、お爺ちゃんでないと……私の首は落とせない。



「これが、最後の首刈りだよ。お爺ちゃん」

「…………セリス……お嬢様」



 ごめんね……私が呆れるほどの魔力を持ってるせいで。

 絶対切断の特技を持つお爺ちゃんしか私の首を斬れないから……。



「お願い……します」

「息を止め、心御静かに」

「はい」



 

 ――シャラン





 お爺ちゃんの持つ大鎌が、あっけなく私の首を切断する。



「お嬢様!!」

「セリ様!!」



 あまりにも鋭いその刃で両断されて、ごつんと石畳に堕ちる私の頭。

 冷たい石畳に頬を打ち付け……そのまま転がっていく。



 きっと私の身体はゆっくりと崩れ落ちていくだろう、いや……お爺ちゃんが抱き留めてくれるかも。

 そんな事をのんびりと考えながら、私は体の生理反応? 生存本能に従って魔力を解き放ち……意識が薄れていった。





 ――これで、晴れて婚約できる。





 悠久の魔王と呼ばれた我が父、その娘である私……死の令嬢『セリス』はその名の通り死に体となったのだ。
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