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我が主人(フォーマ視点)
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読書をしていた私の腕を急に現れたマレスティーナが引っ張った。
「な、なに」
「ちょっとついてきてくれたまえ!」
いきなりそんなことを言われ、転移させられた。読書タイムを妨害されたことに憤りを感じつつ、目の前に広がる光景を見てどこか懐かしさを感じた。
「戦場?」
「そう!その通り!」
魔族領で引きこもっていたせいで人間領のことについては全く詳しくないが、とにかくここが戦場だということだけは読み取れた。
「ここを『掃除』すればいいの?」
毎日毎日私の家(シャルの家)に押し入ってきて私をボコボコにして帰るマレスティーナに急に連れてこられた私はこれしか理由が思いつかなかった。
本人は一応鍛えているつもりらしいが、私から言わせればストレス発散のためにボコボコにしているだけのようにしか感じない。
「いや、違うよ。君にもちょっと勉強が必要だと思ってね」
「勉強?やだ」
「そういう勉強じゃないよ。君はここ二年でだいぶ強くなった。けど、まだまだ私には届かない程度の実力でしかない」
眉が上がり、私の額に青筋が浮かぶのを感じた。
「ああ、バカにしているわけじゃないよ。ただ事実だからね……だが、そんな君でも世間一般で言えば化け物だ!元の実力はS級上位……目の力を使えば災害級に足を踏み入れる程度だったけど、二年間で君も立派な化け物になったわけだ」
馬鹿にしているのか褒めているのかよくわからないが、この二年間でベアトリスのために体を鍛えていたのは事実である。
(この程度じゃ、ベアトリスに敵対するあの協力者を倒すことはできない)
ベアトリスから家族を奪い去ったあの少女……その正体はどうやら高位の悪魔だったようだ。
あいつの力はバカげているほどで、私たちだけでは力不足だった。だからこそ、私が強くならなくてはいけない。
せめて、ベアトリスと協力すれば倒せるくらいに。
だから、まだ会う時ではない。会った時こそ、あの少女を倒す時なのだ。
「ま、そんなわけで。若い化け物君が増長しないようにね、私がここで暴れてくる。格の違いを知ってもっと精力的に鍛えたまえ!」
「格の違いは知っているから、いらない」
「そんなこと言わずに!ちょっとだけだから!」
そもそもこのマレスティーナ、数百年生きるくそばば……お姉さん、は、人生のほとんどを魔法に費やしてきた正真正銘の努力家だ。
たった二年の努力で抜けるなんて元から思ってもいなければ、そんな化け物に対抗できる人が現代に生きているとは思えない。裏社会で暗躍していた私だから断言できる。
大賢者マレスティーナに対抗できる人類はもう誰一人としていないのだ。
♦
そう思って、見学していた。案の定、昔の顔なじみこと『真獣』ですら何もできずにボコボコにされていた。
殺されない程度に手加減されているのにもかかわらず、まるで反撃することができずに……。
昔の顔なじみだからこそ少しは同情してあげる。昔の自分であれば勝てるとは毛頭思ってもいない相手だった。
私が未来を少し見ることが出来るから持久戦に持ち込めば何とか互角になることができる。そして、彼女は戦闘は好きだったが、自分と同格の相手と戦ったことがないため、攻撃は荒々しい。
その隙を突けばなんとか……と思っていたが、今ではそんな小細工必要ない。見てわかった、私の方が強いと。
そして、遠くの方から見学していると真獣はマレスティーナに背を向けて逃げていった。逃げ切れるわけないのだが、マレスティーナは何をあんなに楽しんでいるんだ?
そして、真獣が向かった先はまた別の戦場だった。戦闘の中に紛れこんで姿を隠すつもりなのだろうが、着いた時点では敵は一人も残っていなかった。
マレスティーナの魔法?獣人は魔法を使えないから、必然的にあの規模の魔法を使う人物は限られてくる。
そんなことを考えていると、一人逃げようとしない鎧の人物がいた。
(子供?いや、そんなことより……あの人は)
見覚えのある顔つきをしているその獣人は、真獣の攻撃をものともせずに優雅に回避する。
そして、その勝負は実にあっさりとついた。
「あの人は……」
そんなことを考えて、おもわず呟きとして漏れたころだった。途端に殺気と威圧がまじりあった圧が飛んでくる。
それは全方向に向けられた覇気で、私は威圧の発生源である場所から数百メートル離れているのにも関わらず空気が振動しビリビリと静電気が空中でパチパチと言っている。
(この威圧は!?)
それには身に覚えがあった。私のよく知る人物の威圧である。ただ、それは過去に戦った時とは比べ物にならない程の圧力だった。
自分に向けられたものではないにもかかわらず全身が凍り付くように冷えて、鳥肌が止まらなかった。強くなった今の私ですらだ。
そんなところにマレスティーナは降り立った。そして、何を言っているのかはよくわからないが、その人物……私の主人であるベアトリスとなぜだかわからないが戦い始めたのだ。
(これは……いったいどういう状況?)
「な、なに」
「ちょっとついてきてくれたまえ!」
いきなりそんなことを言われ、転移させられた。読書タイムを妨害されたことに憤りを感じつつ、目の前に広がる光景を見てどこか懐かしさを感じた。
「戦場?」
「そう!その通り!」
魔族領で引きこもっていたせいで人間領のことについては全く詳しくないが、とにかくここが戦場だということだけは読み取れた。
「ここを『掃除』すればいいの?」
毎日毎日私の家(シャルの家)に押し入ってきて私をボコボコにして帰るマレスティーナに急に連れてこられた私はこれしか理由が思いつかなかった。
本人は一応鍛えているつもりらしいが、私から言わせればストレス発散のためにボコボコにしているだけのようにしか感じない。
「いや、違うよ。君にもちょっと勉強が必要だと思ってね」
「勉強?やだ」
「そういう勉強じゃないよ。君はここ二年でだいぶ強くなった。けど、まだまだ私には届かない程度の実力でしかない」
眉が上がり、私の額に青筋が浮かぶのを感じた。
「ああ、バカにしているわけじゃないよ。ただ事実だからね……だが、そんな君でも世間一般で言えば化け物だ!元の実力はS級上位……目の力を使えば災害級に足を踏み入れる程度だったけど、二年間で君も立派な化け物になったわけだ」
馬鹿にしているのか褒めているのかよくわからないが、この二年間でベアトリスのために体を鍛えていたのは事実である。
(この程度じゃ、ベアトリスに敵対するあの協力者を倒すことはできない)
ベアトリスから家族を奪い去ったあの少女……その正体はどうやら高位の悪魔だったようだ。
あいつの力はバカげているほどで、私たちだけでは力不足だった。だからこそ、私が強くならなくてはいけない。
せめて、ベアトリスと協力すれば倒せるくらいに。
だから、まだ会う時ではない。会った時こそ、あの少女を倒す時なのだ。
「ま、そんなわけで。若い化け物君が増長しないようにね、私がここで暴れてくる。格の違いを知ってもっと精力的に鍛えたまえ!」
「格の違いは知っているから、いらない」
「そんなこと言わずに!ちょっとだけだから!」
そもそもこのマレスティーナ、数百年生きるくそばば……お姉さん、は、人生のほとんどを魔法に費やしてきた正真正銘の努力家だ。
たった二年の努力で抜けるなんて元から思ってもいなければ、そんな化け物に対抗できる人が現代に生きているとは思えない。裏社会で暗躍していた私だから断言できる。
大賢者マレスティーナに対抗できる人類はもう誰一人としていないのだ。
♦
そう思って、見学していた。案の定、昔の顔なじみこと『真獣』ですら何もできずにボコボコにされていた。
殺されない程度に手加減されているのにもかかわらず、まるで反撃することができずに……。
昔の顔なじみだからこそ少しは同情してあげる。昔の自分であれば勝てるとは毛頭思ってもいない相手だった。
私が未来を少し見ることが出来るから持久戦に持ち込めば何とか互角になることができる。そして、彼女は戦闘は好きだったが、自分と同格の相手と戦ったことがないため、攻撃は荒々しい。
その隙を突けばなんとか……と思っていたが、今ではそんな小細工必要ない。見てわかった、私の方が強いと。
そして、遠くの方から見学していると真獣はマレスティーナに背を向けて逃げていった。逃げ切れるわけないのだが、マレスティーナは何をあんなに楽しんでいるんだ?
そして、真獣が向かった先はまた別の戦場だった。戦闘の中に紛れこんで姿を隠すつもりなのだろうが、着いた時点では敵は一人も残っていなかった。
マレスティーナの魔法?獣人は魔法を使えないから、必然的にあの規模の魔法を使う人物は限られてくる。
そんなことを考えていると、一人逃げようとしない鎧の人物がいた。
(子供?いや、そんなことより……あの人は)
見覚えのある顔つきをしているその獣人は、真獣の攻撃をものともせずに優雅に回避する。
そして、その勝負は実にあっさりとついた。
「あの人は……」
そんなことを考えて、おもわず呟きとして漏れたころだった。途端に殺気と威圧がまじりあった圧が飛んでくる。
それは全方向に向けられた覇気で、私は威圧の発生源である場所から数百メートル離れているのにも関わらず空気が振動しビリビリと静電気が空中でパチパチと言っている。
(この威圧は!?)
それには身に覚えがあった。私のよく知る人物の威圧である。ただ、それは過去に戦った時とは比べ物にならない程の圧力だった。
自分に向けられたものではないにもかかわらず全身が凍り付くように冷えて、鳥肌が止まらなかった。強くなった今の私ですらだ。
そんなところにマレスティーナは降り立った。そして、何を言っているのかはよくわからないが、その人物……私の主人であるベアトリスとなぜだかわからないが戦い始めたのだ。
(これは……いったいどういう状況?)
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