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謁見の前に
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おおよそ二ヶ月の時間が経った。馬車揺れが気にならないほど慣れてしまうほど長時間乗り続けた。
そんな長い間を乗り切りついに、
「着いたー!」
「着いたな」
「テンション低くないですか?もう馬車の中でずっと座らなくていいんですよ!」
久しぶりに見た都の景色!思い出もない割には懐かしく感じるのはやはり馬車生活に飽きていたからだろう。
「早く泊まる宿に行きましょうよ。今日は拝謁しないんでしょ?」
「ああ、そうだ」
いやぁ、宿はどこに泊まるのかな?やっと安心して眠れる……。
「確か……一番人気の宿だとか」
「え……?」
♦️
「ご予約のお客さま……ですね?今日からお泊まりになる期間まで貸切となっていますので、ご自由にお使いください。兵士方には我が宿の2号店3号店を使っていただきます」
そこには見覚えのある顔があったではないか。お兄様の後ろに隠れてどうにかバレないようにする。
(もう!なんで憤怒……ラグが接待担当してるのよ!あんた向いてないでしょ!?店長さんに変わってもらいなよせめて!)
そんなことをお兄様の後ろで考えていると、こちらに強い怒りの視線が向いている気がした。
(ああ!心の声聞こえるの忘れてたぁー!?)
こっち見ないでくれ……。
「ん、どうしたんだ?いつもと様子が違うが……」
「あ……何でもないです……」
「そうか、疲れたのか?なら、ドリンクでもオーダーしよう」
「あ、ちょっと待って!?」
お兄様がドリンクをオーダーすると中から予想通りの人が出てくる。
「オーダーお願いします……あれ?後ろにいるの……」
(こっち見ないでくれネルネ!)
ネルネが不思議そうにこちらを見つめている。
「オレンジジュースでもあるか?」
「……はい!承りました!」
そう言って去っていくネルネ。
よかった……ギリギリバレてなかった……。そう思ってい時期が私にもありました。
「あ、ベア……トリスさんのお兄さん?は何かお飲みになりますかー?」
「っ?なぜ妹のことを知ってるんだ?」
ばかあぁ!どうして戻ってきたんだよ!
ラグが横で笑いを堪えてピクピクと震えている……後で覚えてなさい!
「ま、まあいいじゃないですかお兄様。ささ、何か注文を!」
「いや、私は……」
「注・文・を!」
「あ、ああわかった」
どうにかお兄様を勢いで誤魔化してその場はことなきを得たのだった……。
♦️
「ちょっとラグ?何笑ってんのよ」
「ハハハハハっ!最高だよその顔!いつものあの態度がどこへやら!ハハ!」
「んもう!」
お兄様に飲み物を飲ませて貸してもらった部屋へと押し込んだ後、私とラグ、そしてネルネはこの間の部屋に集まっていた。
「まさかお前が領主の妹とはな」
「そんなの別にいいでしょ?それより、ネルネ?あれ絶対わざとでしょ?」
「な……何のことかな~?」
絶対わざとだと思われる顔をしている。
「まあいいわ。……それとネルネたちには言っておきたいことがちょうどあったからむしろよかったかも」
「言っておきたいこと?」
「この間集めたあの資料、偽物だったんだよね」
「え……そんなぁせっかく見つけたのに!」
「これは私がしっかり確認しなかった私のミスだわ」
でもそれ以上に重要なのは、
「ネルネとラグには次も協力してもらいたいなと思ってたのよ」
「おいおい、私もか?」
「ええ、ラグもお願い。将軍様を探ろうとする奴は全員消されるって言われてるくらいだし、油断せずやりたいの」
一人だと背負うものが多すぎる。ネルネとラグはそんじょそこらの人より信用できるのはもちろん、能力も十分だからね。
「わかった!次は役に立てるようにネルネ頑張る!」
「じゃあちょっと明日から早速動いてもらいたいのだけど……」
明日は領主全員が城内に集められ、謁見の準備をする日だ。明日やるのは都に持ち込んだ武具や暗器のチェック。
前日に確認した持ち物以外を持ち込めばその場で処刑されるかもしれないらしい。そして、明日は領主にお供する者たちも着いていかなければいけない。
「二人には将軍とお兄様たち領主……そして私が謁見している間に、将軍が過ごす別邸に侵入してほしいの。そこでおそらく厳重に保管されてる資料をできる限り盗んできて欲しいのよ」
「なるほど?だが、そんなのネルネの力があれば余裕だろう?私がいる意味ないんじゃないか?」
そのセリフにネルネは嬉しそうにしている。
「確かにそうだけど……なんか嫌な予感がするのよね」
私の嫌な予感はかなりの確率で当たる。勘を信じて……というわけではないが、念には念を。
「資料の情報が手に入れば、それを公表することができる。もちろん幕府側は捏造だっていうはずだけど、不満を持っている田舎の民たちは私たちに賛同するはず。そこで、幕府の代わりに反乱軍を倒してあげたという情報をでっち上げれば幕府の信用は落ちる」
ただし、これは将軍が本当に悪事を働いていた場合の話だ。もし、将軍ではなく官僚たちが将軍の管轄外でそのような行動をとっていたのであれば、将軍は何も悪くない。
責任問題といえばそうだろうが、私は何も悪くない人を罰したいとは思わないのでね。お兄様だってきっとそれは同じはず。
領民たちが苦しい思いをしているのだ……それに、表に出さないが洗脳されて操られていたことを非常に重く受け止めているはずだ。蘭丸さんよりも。
だから、私に反乱軍のリーダーだということを打ち明けたのだろう。打ち明けないと重荷に耐えられなかったから。
「だから二人ともお願い!」
「もちろんやります!ネルネはお客さま……ベアちゃんに随分とお世話になったので!ベアちゃんのおかげでお母さんについても知れたし……」
「無論私もやるぞ?ベアトリスのおかげで私は封印された亜空間から抜け出せたんだ。ま、なあなあに頑張るさ」
「……二人とも、ありがとう!」
そんな長い間を乗り切りついに、
「着いたー!」
「着いたな」
「テンション低くないですか?もう馬車の中でずっと座らなくていいんですよ!」
久しぶりに見た都の景色!思い出もない割には懐かしく感じるのはやはり馬車生活に飽きていたからだろう。
「早く泊まる宿に行きましょうよ。今日は拝謁しないんでしょ?」
「ああ、そうだ」
いやぁ、宿はどこに泊まるのかな?やっと安心して眠れる……。
「確か……一番人気の宿だとか」
「え……?」
♦️
「ご予約のお客さま……ですね?今日からお泊まりになる期間まで貸切となっていますので、ご自由にお使いください。兵士方には我が宿の2号店3号店を使っていただきます」
そこには見覚えのある顔があったではないか。お兄様の後ろに隠れてどうにかバレないようにする。
(もう!なんで憤怒……ラグが接待担当してるのよ!あんた向いてないでしょ!?店長さんに変わってもらいなよせめて!)
そんなことをお兄様の後ろで考えていると、こちらに強い怒りの視線が向いている気がした。
(ああ!心の声聞こえるの忘れてたぁー!?)
こっち見ないでくれ……。
「ん、どうしたんだ?いつもと様子が違うが……」
「あ……何でもないです……」
「そうか、疲れたのか?なら、ドリンクでもオーダーしよう」
「あ、ちょっと待って!?」
お兄様がドリンクをオーダーすると中から予想通りの人が出てくる。
「オーダーお願いします……あれ?後ろにいるの……」
(こっち見ないでくれネルネ!)
ネルネが不思議そうにこちらを見つめている。
「オレンジジュースでもあるか?」
「……はい!承りました!」
そう言って去っていくネルネ。
よかった……ギリギリバレてなかった……。そう思ってい時期が私にもありました。
「あ、ベア……トリスさんのお兄さん?は何かお飲みになりますかー?」
「っ?なぜ妹のことを知ってるんだ?」
ばかあぁ!どうして戻ってきたんだよ!
ラグが横で笑いを堪えてピクピクと震えている……後で覚えてなさい!
「ま、まあいいじゃないですかお兄様。ささ、何か注文を!」
「いや、私は……」
「注・文・を!」
「あ、ああわかった」
どうにかお兄様を勢いで誤魔化してその場はことなきを得たのだった……。
♦️
「ちょっとラグ?何笑ってんのよ」
「ハハハハハっ!最高だよその顔!いつものあの態度がどこへやら!ハハ!」
「んもう!」
お兄様に飲み物を飲ませて貸してもらった部屋へと押し込んだ後、私とラグ、そしてネルネはこの間の部屋に集まっていた。
「まさかお前が領主の妹とはな」
「そんなの別にいいでしょ?それより、ネルネ?あれ絶対わざとでしょ?」
「な……何のことかな~?」
絶対わざとだと思われる顔をしている。
「まあいいわ。……それとネルネたちには言っておきたいことがちょうどあったからむしろよかったかも」
「言っておきたいこと?」
「この間集めたあの資料、偽物だったんだよね」
「え……そんなぁせっかく見つけたのに!」
「これは私がしっかり確認しなかった私のミスだわ」
でもそれ以上に重要なのは、
「ネルネとラグには次も協力してもらいたいなと思ってたのよ」
「おいおい、私もか?」
「ええ、ラグもお願い。将軍様を探ろうとする奴は全員消されるって言われてるくらいだし、油断せずやりたいの」
一人だと背負うものが多すぎる。ネルネとラグはそんじょそこらの人より信用できるのはもちろん、能力も十分だからね。
「わかった!次は役に立てるようにネルネ頑張る!」
「じゃあちょっと明日から早速動いてもらいたいのだけど……」
明日は領主全員が城内に集められ、謁見の準備をする日だ。明日やるのは都に持ち込んだ武具や暗器のチェック。
前日に確認した持ち物以外を持ち込めばその場で処刑されるかもしれないらしい。そして、明日は領主にお供する者たちも着いていかなければいけない。
「二人には将軍とお兄様たち領主……そして私が謁見している間に、将軍が過ごす別邸に侵入してほしいの。そこでおそらく厳重に保管されてる資料をできる限り盗んできて欲しいのよ」
「なるほど?だが、そんなのネルネの力があれば余裕だろう?私がいる意味ないんじゃないか?」
そのセリフにネルネは嬉しそうにしている。
「確かにそうだけど……なんか嫌な予感がするのよね」
私の嫌な予感はかなりの確率で当たる。勘を信じて……というわけではないが、念には念を。
「資料の情報が手に入れば、それを公表することができる。もちろん幕府側は捏造だっていうはずだけど、不満を持っている田舎の民たちは私たちに賛同するはず。そこで、幕府の代わりに反乱軍を倒してあげたという情報をでっち上げれば幕府の信用は落ちる」
ただし、これは将軍が本当に悪事を働いていた場合の話だ。もし、将軍ではなく官僚たちが将軍の管轄外でそのような行動をとっていたのであれば、将軍は何も悪くない。
責任問題といえばそうだろうが、私は何も悪くない人を罰したいとは思わないのでね。お兄様だってきっとそれは同じはず。
領民たちが苦しい思いをしているのだ……それに、表に出さないが洗脳されて操られていたことを非常に重く受け止めているはずだ。蘭丸さんよりも。
だから、私に反乱軍のリーダーだということを打ち明けたのだろう。打ち明けないと重荷に耐えられなかったから。
「だから二人ともお願い!」
「もちろんやります!ネルネはお客さま……ベアちゃんに随分とお世話になったので!ベアちゃんのおかげでお母さんについても知れたし……」
「無論私もやるぞ?ベアトリスのおかげで私は封印された亜空間から抜け出せたんだ。ま、なあなあに頑張るさ」
「……二人とも、ありがとう!」
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